Humble Pie 「Rockin' The Fillmore」 (1971)
今回はハンブル・パイの熱いライヴアルバムです。1971年発表。
本作が収録されたフィルモアとは、サンフランシスコにあったライブハウスのこと。60年代の音楽シーンでは、たびたび登場してきた有名なライブハウスですね。プロモーターのビル・グラハムが、自身がプロモートするバンドを登場させたことに端を発し、その後相次いで有名ミュージシャンがここでライヴを行います。
ここで収録されたライヴ・アルバムも実は結構あったりします。オールマン・ブラザーズ・バンド、クリーム、マイク・ブルームフィールド&アル・クーパー、ジェファーソン・エアプレイ、ジミ・ヘンドリックス…。このライヴハウスは1972年6月に閉館となるのですが、本作はその1か月前に収録されたもの。
当時はLP2枚組で発表されましたが、収録曲はたったの7曲。以下収録曲を列挙しますと…。
A面 ①Four Day Creep ~ アイダ・ソックスのカバー
②I'm Ready ~ アルバム「Humble Pie」より
③Stone Cold Fever ~ アルバム「Rock On」より
B面 ④I Walk on Gilded Splinters ~ ドクター・ジョンのカバー
C面 ⑤Rollin' Stone ~ マディ・ウォーターズのカバー
D面 ⑥Hallelujah I Love Her So ~ レイ・チャールズのカバー
⑦I Don't Need No Doctor ~ レイ・チャールズのカバー
オリジナル作品は2曲のみなんです。他はブルース、R&Bのカバーソング。やりたい曲を演奏していたハンブル・パイ。それがオリジナルだろうがカバーだろうが、関係ないってことなんでしょうね。
また本作ではピーター・フランプトンがギターで参加してますが、本作発表時点では、既に彼は脱退しておりました。本作の通り、よりブルースに傾倒していくスティーヴ・マリオットに対して、ピーターはアコースティックでポップなサウンドを志向。結局ピーターは音楽的な相違により、円満に脱退。その後のピーターの商業的なヒットはご存じの通り。
アルバムトップは強力なブルースナンバーの①「Four Day Creep」。スティーヴとピーターのツイン・ギターがヘビーであることがよくわかる1曲。
②「I'm Ready」、出だしのスティーヴ・マリオットのシャウト唱法…。ロバート・プラントがスティーヴの追っかけをしていたことは有名な話ですが、コレを聴くと、その理由がよく分かります。ヘビーなドラムから、うねりのあるギター、これこそレッド・ツェッペリンが追い求めていた音かもしれません。
長尺な2曲、④「I Walk on Gilded Splinters」と⑤「Rollin' Stone」は本作のハイライトかもしれませんが、ブルースがそれほど好みでなければツラいかもしれません。こうした楽曲から緊張感ある演奏が堪能出来るんですけどね。
本作の演奏ではありませんが、別のスタジオ演奏シーンをアップしておきます。
本作中、一番ポップな仕上がりの⑥「Hallelujah I Love Her So」。
コレ、レイ・チャールズが1956年に発表した作品ですが、原曲はもっとテンポアップしたブギウギ・スタイルの楽曲。これをハードなギターとソウルフルなヴォーカルで、見事に自分達のオリジナリティを発揮してます。
⑦「I Don't Need No Doctor」は本作からの唯一のシングルカット曲。
これもまたレイ・チャールズがオリジナル。むむ…、このハードな楽曲がレイ・チャールズ⁇ 原曲を全く知らないので、これをレイ・チャールズが歌っているって全く想像が出来ません。で…、原曲チェックしてみました。女性コーラスを加えたモータウン系のR&Bですね。いや、これは前曲と同様に完全にハンブル・パイのオリジナル作品といってもいいくらいの見事なアレンジ。カッコいいです。
ハンブル・パイは本作発表後、ピーターの後釜にクレム・クレムソンを据え、1972年に名作「Smokin'」を発表します。ハンブル・パイ、やっぱりいいですね。