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はじまり

プロローグ


 人類が宇宙に進出してから百数十年。人類は宇宙にその進化の手を伸ばして尚、歩みを進めずにいた。宇宙空間に住むためのコロニー、莫大な数の人間が飢餓しないように培養された食物、宇宙空間で戦闘が行えるよう開発された人型機動兵器、長距離軌道ミサイルを防ぐためのジャミング装置、宇宙空間を亜光速で運航する宇宙船。手に入れた技術(もの)もあれば、手に入れられなかった夢(もの)もある。人類は太陽系から外に出ることはできなかった。原子力に替わるクリーンエネルギーはまだ見つけられていない。技術の進歩は頭打ちとなり、現状の技術を少しでも改善するための努力に身を費やしている。それは何故か? それは人類がヒト同士で争い続けているからである。遥か先を見据えていると言いながら隣人との争いを止めない人類に進化の道はない。その罰を、人類は受けることになる。

 今より20年ほど前、人類が宇宙進出してから100周年という記念すべき年に悲劇は起きた。記念式典の真っ最中に発射された一発の核兵器によって数千万人の命が喪われた。その事件を引き金に、月軌道を境界線(Border Line)として地球側に住む人々――『アースサイド(Earth Side)』――と月の向こう側に住む人々――『アウタームーンサイド(Outer Moon Side)』――が宇宙規模の大戦『アウタームーンウォー(Outer Moon War)』を引き起こしてしまったのである。科学の極限まで発達した人類による戦争は凄まじい被害をもたらし、この戦争によって多くの生命が傷つき、血を流し、命を落とした。その結果、地球の神秘の力『マナ(Mana)』のバランスが崩れ、地上に非科学的な力を持つ生命体『魔の物』が出現する事態になった。魔の物は人々を襲い、文明を破壊し、人類に制裁を与えた。まるで地球そのものが怒りを持っているかのように。それに対し人類は一旦ヒト同士の争いを止め、魔の物に抗うべく立ち上がった。人類はまず国や勢力ごとにバラバラになっていた軍事力を一つに集め、統率し管理する組織を創った。
 世界中から人員、軍備、予算を集結させ設立されたそれが『地球防衛国際連合軍(Earth Defense United Nations Forces)』である。『国連軍』は未知の存在である魔の物に対して持てる軍事力をすべて投入して立ち向かった。『人類』対『魔の物』の新たなる戦争の始まりである。魔の物の持つ超常的な力は古の文献に倣い『魔力』と呼ばれ、人類の新たなる技術の可能性として解析研究開発がされ『魔法(Magear)』となった。そして人類側にも開発された魔法を扱える人間が現れた。その一人が宇宙大戦時『白き英雄』と称された男である。彼の率いる部隊の活躍によって地球に氾濫した魔の物の80%を殲滅することができた。その結果国連軍は、魔の物の減少が確認され脅威がなくなったと判断されたことで軍備縮小を国際連合委員会から言い渡される。しかし魔の物の脅威はまだ完全に去ったわけではなく、前線で戦う人間たちは存続を訴えた。だが委員会に聞き入れてもらえず軍縮は決行されてしまう。そこで白き英雄率いる一部の構成員によって規模を縮小し独立した民間軍事会社として再結成された。それが軍事組織『フリーダム・ソード(Freedom Sword)』である。


これは魔法(Magear)によって世界を救い人類を進化に導く若者達の英雄譚(Heroic Tale)である。

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