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冷え切った夜の底、闇に沈んだ街の中を歩く。
自分の足音だけが聞こえる。

ふと空を見上げれば一つ星が灯っている。

そういえば、人間が閉所で上を見上げるときは逃避場所を探しているんだったか、
なら、夜空の下で空を見上げる僕は何から逃げているのだろうか

その星に、名前があったことは記憶している。
はるか昔の人間がつけた、素晴らしき勘違いの果ての神話につながる呼び名、
教科書明朝で打ち込まれた、#ffffffの点と同じ名前には思いたくなくて、星とだけ認識した。

それは揺らがない。
何万光年も前、そこに在ったという事実だけを、毎日毎晩、うつしつづける光だ。

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