2018/10/20 平成30年度秋季近畿大会1回戦「天理-龍谷大平安」試合レポート
こんばんは、遊撃です。
今日から来年の選抜の出場権をかけた秋季近畿大会が開幕しました。大会1日目の今日は1回戦3試合が行われ、龍谷大平安・市立和歌山・履正社がそれぞれ勝利し、ベスト8にコマを進めました。
今回はその中でも、第一試合の「天理-龍谷大平安」の試合レポートを書いていこうと思います。
奈良県大会を圧倒的な強さで制した天理。対する龍谷大平安は京都大会を3位で通過。戦前は龍谷大平安の投手陣に不安があることもあり、打力に勝る天理が有利だと予想していたが、龍谷大平安の試合前ノックを見たときに、その仕上がりに驚かされた。たった2週間しか間はなかったが、その短い期間でもチームを成熟させてくるあたり、さすが平安、といったところ。
さて、試合は平安の①豊田と天理の①桂田という、制球力のある両左腕の投げ合いとなった。その制球力の良さゆえに、両校とも「早いカウントからの仕掛け」が目立った。それが明暗を分ける結果に。
平成30年度秋季近畿大会1回戦(ほっともっとフィールド神戸)
天理(奈良①)3-4龍谷大平安(京都③)
天理 000 010 002 計3 H5 E2
平安 200 101 000 計4 H12 E1
天理スタメン
1中 吉田⑧
2二 下林④△
3捕 北野②
4左 川端⑦
5三 川崎⑮
6右 岩本⑨△
7一 河西③△
8遊 江口⑥
9投 桂田①△
龍谷大平安スタメン
1中 中島⑧△
2二 北村④
3捕 多田②
4右 水谷⑨
5三 奥村⑤
6一 三尾③△
7遊 羽切⑥
8左 半保⑦
9投 豊田①△
(〇数字は背番号、△は左打者)
天理の先発は左腕①桂田。右足を上げたあとに、一度左手を下に落としてから投球動作に入る。基本的にプレートの一塁側に立って投球していた。ややクロス気味にステップしてくるため、左打者の外角はかなり遠く見えそう。ストレートは大体130キロ前後くらいだと思われる(第一試合は球速表示が出なかった)。変化球はスライダー、カーブ、チェンジアップか。カーブは左右問わず投げていたが、チェンジアップはやはり右打者に数多く使っていた。
龍谷大平安は、近畿大会からエースナンバーを背負うことになった①豊田が先発。府大会ではチーム1の安定感を誇っており、その投球が認められた形となった。今日はボールが走っていた。その上スローカーブを混ぜてうまく緩急をつけ、内外の投げ分けも出来ており、ほとんど文句のつけようがなかった。3回まではヒットを許さず、8回までは散発の3安打で1失点。9回こそ天理の川端に2点本塁打を浴び⑪野澤の救援を仰いだが、強力天理打線を9回途中3失点に抑え、チームのベスト8進出に大きく貢献した。
【試合の振り返り】
1回裏、平安は1死後、2番北村が外から入ってくるカーブをとらえて右前安打を放ち出塁。続く3番多田は初球を中前へ運び、1死1,2塁とする。ここで打席には府大会では不調だった4番の水谷。カウント1-1から①桂田の甘く入ったカーブを逃さなかった。打球はセンターの頭を超える2点適時二塁打になり、平安が2点を先制した。
その後はお互い攻撃でミスが出る。2回裏、平安は先頭打者を敵失で出すも、犠打を試みた際の守備妨害と、盗塁死で走者を生かせない。3回表の天理は、2死2塁から二塁走者の第2リードが大きくなったところを、捕手の多田が二塁へ送球して刺殺。その裏の平安は1死1,2塁のチャンスを作って4番の水谷に回すが、その水谷は遊ゴロ併殺に倒れる。4回表の天理は先頭打者を安打で出すも、次打者が簡単に併殺打を打ってしまう。
試合が動いたのは4回裏。平安は三尾と半保の安打で2死ながら1,2塁のチャンスを作る。ここで打席には豊田。完全に打ち取られたあたりだったが、これがセカンドへの内野安打となる。その間に二塁走者の三尾が一気に生還。3-0とリードを広げた。
直後の5回表、天理は先頭の6番岩本が左前安打で出塁した。このヒットは防げていたヒットだった。カウント1-1から、バッテリーはアウトローの直球で追い込む。このボールに対して岩本は全く反応しなかった。傍から見てもストレートを待っていないことは容易に分かった。となると、同じコースにもう1球直球を続けるのが最善だったと思うが、豊田が投じたのは同じアウトコースへのカーブ。岩本は「待ってました」とのごとく左前へもっていった。
続く打者に死球、四球を与え無死満塁のピンチを招く。しかし、ここからは落ち着いていた。9番の桂田を三振に斬ると、1番吉田の打球はショートへ。併殺でチェンジかと思われたが、セカンド北村の送球がわずかに逸れ、併殺とはならなかった。この間に三塁走者が生還し、天理が1点を返す。
5回終了
天理1-3龍谷大平安
6回裏、平安は1死から敵失で走者を出すと、8番半保の左越二塁打で1死2,3塁のチャンスを作る。続く豊田は投ゴロ(挟殺の末、2塁走者がアウト)で2死1,3塁となるも、1番の中島がインコースのカーブをうまくライトへ運び貴重な追加点を挙げる。
7,8回と平安の①豊田は一人の走者も出さない完璧な投球を見せる。そして9回もマウンドへ向かった。
9回表、①豊田は先頭の3番北野に中前安打を許す。打席には4番川端。初球、浮いたボールを逃してはくれなかった。打球はレフトスタンド中段へ飛び込む2点本塁打。天理が1点差に迫る。
その後2死を奪うも、7番河西に四球を出したところで、府大会ではエースナンバーを背負っていた左腕の⑪野澤にスイッチ。この野澤は続く江口を遊ゴロで打ち取り、平安が辛くも逃げ切った。
試合終了
天理3-4龍谷大平安
龍谷大平安が終盤に追い上げを見せる天理を何とか振り切り、準々決勝進出を決めた。
【投手成績】
〇天理
・①桂田△ 投球回8 球数104 被安打12
与四球1 与死球0 奪三振1 失点4 自責点3
〇龍谷大平安
・①豊田△ 投球回8と2/3 球数122 被安打5
与四球4 与死球1 奪三振3 失点・自責点3
・⑪野澤△ 投球回1/3 球数4 被安打0
与四死球0 奪三振0 失点・自責点0
【雑感】
両チームとも、早いカウントからの攻撃が目立った。ファーストストライクスイング率は天理が51.4%、龍谷大平安が50%だった。かなり積極的に打ってきていたことがわかる。以前も言ったが、早打ちは悪いことではない。甘いボールであれば初球からでもどんどん振っていくべきだと思う。ただ、この「初球」に対する意識が、平安と天理では少し違っていたように思えた。
平安打線が狙っていたのは、ベルトより上。球種はおそらく各人に任されていたのだろう。選手によって打ちに行っていたボールは違った。
天理打線が狙っていたのは「打てる」球。どういうことかというと、これといった狙いを定めていなかったのではないか、ということだ。今日の平安の①豊田はかなり低めにボールを集めることができていたので、そもそも高めに浮くボールが少なかったということもあるが、それを簡単に打たされる場面が目立った。この試合、天理は二つの併殺打があったが、いずれも低めを簡単に打ちに行った結果の併殺打だった。
ただ、一度もバントをしないという姿勢からは、天理の目指す野球を窺うことができた。おそらく今後も打って打って打ち勝つ野球を展開していくのだろう。今日のように、思うようにヒットが出ないときにどうやって点を取っていくのかという所は注目したい。
平安は、見事な試合運びだったが、所々で気になる点はあった。5回表無死2塁で3番の多田が打席に立った時、原田監督はバントのサインを出した。しかしこれを多田がファールにしてしまう。ここでヒッティングに切り替えたのは分かるのだが、多田はあまりにも右打ちを意識しすぎてしまい、投ゴロに倒れ、走者を進めることができなかった。このような場面は府大会でもあったのだが、もう少しはっきりとした攻撃にしたほうがいいと思う。バッテリーはこの場面では当然右打ちをさせない配球をしてくるわけなので、そこを無理に流しに行くのは非効率だ。多田は力もあるので、思い切って打って行ってもいいのではないか。もしくは、走者を進めるなら割り切って「バント」でも構わないと思う。3番打者に「進塁打」を求めるのはすこし中途半端な気がしてならなかった。
また、守備では、3回裏無死1塁で、打席には9番の桂田を迎えた場面があった。点差は2点。まだ回が浅いこと、打者が9番投手であることを考慮すると、送ってくる確率が高いことは理解できる。ただ、この場面で平安のサード奥村はバントだと決めつけた守備をしていた。実は平安は、府大会の準決勝・京都国際戦で「バント決めつけ」の守備の間を抜かれてピンチを広げられたケースがあった。今回はバスターの結果、打者はレフトフライに倒れたため事なきを得たが、やはり決めつけは危険だ。両方に対応するのは難しいが、場面・状況に応じて臨機応変に対応してほしい。
本塁打を放った天理の4番川端には今後も注目したい。スイングの力強さは申し分ないが、フォームもゆったりとしており、かなり確実性も上げていけそうな打者だった。
【まとめ】
冒頭でも書いたが、平安の仕上がり具合に驚かされた。今日の試合は①豊田に尽きる。内外・緩急・そして低めをうまく攻め、強力天理打線に的を絞らせなかった。結果的に連打は最終回のみ。打たせて取る投球が光った。
次戦の市立和歌山も打撃のチームだが、今日見た感じ、明らかに天理よりも打力は1,2枚上だ。そして、積極的にガンガン振ってくる。そんな相手に多田がどういうリードをするのか、そして豊田がどんなボールを投げるのか、今から楽しみだ。
打線も、府大会で苦にしていた左腕から12本のヒットを放った。市立和歌山戦も、おそらく左腕の岩本との対戦が予想される。今日のようなコースに逆らわない打撃をしてほしい。
天理は打線が本来の力を発揮できなかった。個々のポテンシャルはあると感じたが、やはりそこそこのレベルの投手相手になるとヒットは出にくい。そんな中でどうやって点を取っていくのか。それを考えるいい機会にしてほしい。
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