平成30年度秋季近畿大会準決勝①「龍谷大平安-履正社」の展望
こんにちは遊撃です。
今回は、11/3(土)にほっともっとフィールド神戸で行われる平成30年度秋季近畿地区高等学校野球大会準決勝①「龍谷大平安-履正社」の展望を書いていきたいと思います。
ベスト4に進出したことで、両校はすでに来春の選抜の切符をほぼ手中に収めている。ただ、試合内容によっては完全に逆転選出が無いという訳でもなく、依然として気が抜けない戦いが続く。実力校同士の顔合わせとなった準決勝。試合のポイントは「チャンスの作り方」だ。
展望に入る前に、両校のこれまでの勝ち上がりと、選手の成績をまとめておく。
〇龍谷大平安(京都③)
1回戦 4-3天理(奈良①)
龍谷大平安は初回、天理のエース桂田の立ち上がりを攻め、北村・多田・水谷の3連打で2点を先制。4回には豊田の内野安打、6回は中島の二塁打で効果的に追加点を挙げ、終始試合を有利に進めた。先発の豊田は9回に天理の4番川端に2点本塁打を浴びたが、9回途中を散発の5安打3失点と好投。低めにボールが集まっていたのが印象的だった。
準々決勝 5x-4市立和歌山(和歌山②)(9回サヨナラ)
龍谷大平安は2点をリードされた4回裏、2死2塁から8番羽切の左越2点本塁打で同点に追いつく。8回表に市立和歌山にリードを許すも、5番奥村のライトへの犠牲フライで再び同点に。そのまま迎えた9回裏、2死2,3塁から奥村が左越に安打を放ち、龍谷大平安がサヨナラ勝ち。2度リードを奪われる苦しい展開だったが、見事な粘りを見せた。3回途中からリリーフした野澤は6回2/3をわずか2安打に抑え込んだ。
京都府大会では投手陣が崩れて3位通過だったものの、近畿大会に入ってからは①豊田・⑪野澤の両左腕の頑張りで、いずれも接戦を制して準決勝に進出した。
個人成績(△は左打者、スタメンは準々決勝のもの)
1中△中島⑧ 9-3(二塁打1) 打点1
2二 北村④ 4-2(二塁打1) 四球2 死球1 犠打2 盗塁3
3捕 多田② 7-1 四球2 盗塁1
4右 水谷⑨ 9-5(三塁打2,二塁打1) 打点3
5三 奥村⑤ 7-3 打点2 四球1 犠飛1
6一△三尾③ 5-2 四球2 死球1
7左 半保⑦ 8-2(二塁打1)
8遊 羽切⑥ 7-1(本塁打1) 打点2 四球1
9投△豊田① 5-1 打点1
投△野澤⑪ 3-0
投手成績(△は左腕)
・①豊田△ 投球回11 球数162 被安打12
与四球5 与死球1 奪三振4 失点6 自責点6
・⑪野澤△ 投球回7 球数67 被安打2
与四球0 与死球0 奪三振6 失点1 自責点1
チーム成績(2試合)
得点:9 失点:7 安打:20 本塁打:1
三塁打:2 二塁打:4 四球:8 死球:2
犠打:2 犠飛:1 盗塁:4 三振:3
〇履正社(大阪①)
1回戦 11-2南部(和歌山③)(7回コールド)
履正社が一発攻勢で南部を沈めた。1-2とリードされて迎えた3回表、4番井上・5番大西・6番野口の3連打で1点を返した後、7番池田のライトスタンドへ飛び込む3点本塁打で4点を追加。なおもチャンスを作り、2番西川のタイムリーと、2死満塁から4番井上の満塁弾でこの回一挙9得点。試合を決めた。先発の清水は最速145キロを記録し、7イニングを2失点で完投した。
準々決勝 5-0福知山成美(京都①)
履正社打線は、2回までは成美の小橋のコーナーを丁寧に突く投球の前に得点できなかったが、3回に3番小深田の二塁打(高く上がった打球がレフトとショートの間に落ちた)で先制すると、4回には1番桃谷の右前適時打で追加点を挙げた。その後も小刻みに1点ずつを重ねる攻撃で5点を奪い、福知山成美に完勝。エースの清水は被安打2、無四球、毎回の12奪三振でシャットアウト。文句のつけようのない投球だった。
大阪1位の実力をいかんなく発揮している。打線は本塁打も出ているが、犠打などの小技も絡めて小刻みに得点を挙げる。守りも固く、エース清水にも安定感があり、ここまでは盤石の戦いを見せている。
個人成績(△は左打者、スタメンは準々決勝のもの)
1中 桃谷⑧ 8-4 打点3 四球1 犠飛1
2二△池田⑭ 6-4(本塁打1,二塁打1) 打点3 四球1 犠打3
3三△小深田⑤ 9-3(二塁打2) 打点1 四球1
4右 井上⑨ 8-3(本塁打1) 打点4 四球1
5一 西川④ 8-3 打点1 犠打1
6捕 野口② 9-6(二塁打2) 打点2
7左 大西⑬ 7-2(二塁打1) 犠打2
8遊 野上⑥ 6-3(二塁打2) 打点1 四球1 死球1 犠打1
9投△清水① 6-3 打点1 犠打2
投手成績(△は左腕)
・①清水△ 投球回16 球数227 被安打10
与四球0 与死球0 奪三振21 失点2 自責点2
チーム成績(2試合)
得点:16 失点:2 安打:31 本塁打:2
三塁打:0 二塁打:8 四球:5 死球:1
犠打:9 犠飛:1 盗塁:0 三振:5
【試合の展望】
近畿大会を2試合を経験したことで、雰囲気にも慣れたはず。お互い、強豪校との試合には慣れているだろうし、そんなにバタバタする展開にはならないだろう。また、平安の豊田・野澤、履正社の清水は、それぞれが持ち味を十分に発揮する投球を見せている。両校ともに打線が好調であるとはいえ、そこまで大量点は入らないだろう。ということで、5点勝負と予想する。
龍谷大平安は戦うごとに力をつけている。京都府大会の序盤とは別のチームになったと言っても過言ではない。近畿大会に入ってからは、痺れる試合を制してきた。その原動力となっているのは、上にも書いている①豊田・⑪野澤の両左腕だ。2人ともボールを低めに集めて、豊田はスローカーブで、野澤はチェンジアップでそれぞれ打者のタイミングを外し、打者にうまく打たせている。履正社の打線はこれまでに対戦したどの打線よりもパワーがある。これまで同様にボールを低めに集め、ゴロを打たせる投球を展開したい。いくら履正社打線にパワーがあるとはいえ、低めに集められるとそうそう長打は出ない。
打線は府大会では不調だった4番の水谷に当たりが出てきたのが大きい。しかし、府大会の時からずっと指摘している打撃フォーム(トップを作るのが遅い)には改善が見られていない。トップを作るのが遅いため、スイングの始動も遅れてしまう。立命館宇治の森井や京都国際の酒井など、ボールに勢いのある投手には押されていた。天理の桂田、市立和歌山の岩本はともに球速がそこまで無いため、現在の状態でも打てていたが、履正社の清水相手にどうなるか。
1番を打つ中島と、左投手を苦にしない2番の北村もカギになる。北村は近畿大会でも盗塁を3つ成功させており、出塁すると足が使える。履正社の清水には安定感があり連打は望めないので、足を使ってかき回していきたい。水谷や、市立和歌山戦でサヨナラタイムリーを放った奥村にチャンスで回すためにも、1,2番コンビが数多く出塁したい。
清水を打つには、とにかく追い込まれる前に勝負を決めてしまうことだ。追い込まれてからだと、ここまでの2試合を見た感じ、少なくとも、左打者は「アウトローの直球」「アウトコースのスライダー(カーブ)」「インコースの直球」の3択、右打者は「アウトコースのチェンジアップ」「アウトコースの直球」「インコースひざ元のスライダー」「インコースの直球」と4択を頭に入れておかなければならない。しかも清水はこれを制球よく投げ込んでくる。これに対応するのは大学生でも難しい。
となると、狙うのはカウントを取りに来たストレートかスライダーだ。ストレートには力があるので、右打者は特にスライダーを積極的に狙っていってほしい。
履正社はここまで盤石の戦い。それを生んでいるのはエース①清水の投球だ。初戦は少しボールが浮いたところを南部打線にとらえられたが、準々決勝の福知山成美戦は文句のつけようのない投球だった。球速こそ初戦の方が出ていたが、球のキレはこの試合の方が良かったように思えた。2試合で与えた四死球は0、奪った三振は21。制球力も抜群だ。「寺島2世」と煽る声も聞こえてくるが、彼は寺島とは違うタイプの投手。強いて近いタイプの選手を挙げるとするならば、大阪桐蔭→立教大学の田中誠也だろう。制球よくボールを低めに集め、チェンジアップやスライダーで空振りを奪える。球速ほどの速さをボールから感じられないのが少し気になる点ではあるが、現時点でかなり完成度の高い投手であることは間違いない。
強力打線の調子もまずまず。府大会で活躍を見せた小深田がまだもう一つ自分の打撃を出来ていないように見えるのが気がかりではあるが、1番から9番まで全員が長打を打てるパワーは魅力的。池田と井上は初戦で本塁打を記録している。大技に加えて、犠打を絡めた攻撃も履正社の持ち味だ。近畿大会2試合で9つの犠打を決めている。走者を確実に進めて、1点を積み重ねる。準々決勝の福知山成美戦はその意味で言えば、岡田監督の理想通りの攻撃ができたのではないだろうか。
中軸を打つ小深田や井上も注目なのだが、個人的に平安戦のカギを握ると思っているのは6番の野口だ。初戦では感じなかった打席での「雰囲気」が準々決勝では感じられるようになっていた。何が変わったのかまでは掴めなかったのだが、その「雰囲気」が平安戦でも感じられると、爆発するのでは…と思っている。
平安の豊田や野澤は丁寧に低めを突いてくる。ただ、直球にそこまでの威力はないので、しっかりとらえれば長打にはならずともヒットは出るはず。豊田のスローカーブ、野澤のチェンジアップに「打たされる」打撃は避けたい。
ここまで、両校の見どころについて書いたが、平安の豊田・野澤、履正社の清水の各投手の出来を考えると、連打でポンポンと得点が入ることは中々考えにくい。となると、1イニングにヒットが1本しか出なくても点が入る場面を作っていくことが大事だ。そこで、ポイントに挙げた「チャンスの作り方」が重要になってくる。
「1イニングにヒットが1本で点が入る場面」というのは1死(無死)3塁(2,3塁、1,3塁)である。この場面を作ると、仮にヒットが出なくても、内野ゴロやスクイズ、犠牲フライなどで得点に繋げることができる。連打が望めない以上、ヒットが出なくても得点を作れる形をいかに作れるか、というところがポイントになりそうだ。
両校のここまでのチャンスの拡大の仕方は、龍谷大平安は主に「足」、履正社は「バント」。この持ち味を生かしつつ、両校がどのようにして3塁に走者を置いた場面を作っていくのか、というところにも注目したい。
これらを踏まえて、試合の予想をしてみます。
履正社の打線が、平安の豊田から中盤までに2,3点くらいの得点を挙げそう。打たれる、というよりは四球の走者が絡みそう。リリーフした野澤からも、犠打を絡めて2点くらいは取るか。平安の打線は、予想以上に清水に食らいついていきそう。連打が出なくても、2,3点くらいは取るのではないか?終盤まで競る展開も、最後は履正社が底力を見せるか。5-3で履正社の勝利と予想します。
これはあくまで現時点での予想であり、試合前ノックや当日の雰囲気を見たらまた大きく変わる可能性もあります。なので、当日の私のツイートも楽しみにしておいてください!
好投手相手にどのようにチャンスを広げて、点を取っていくのか。それは今後、全国の舞台を経験することになるであろう両校の戦い方を理解する上でも重要なポイントだ。それを知る、またとない好機だと思う。そんな所に注目しながら試合を見ていきたい。
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