10/6の遊馬的心は【ハエとの戦い】
浅草演芸ホールはハエの飛び交う高座でした。
そのハエのせいにしたくなるほど酷い出来で、
あまりにも酷い【牛ほめ】でした。
声の響きは良い感じで入れたと思うが、
やはりマクラは苦手だという意識がある。しかも思い付きのマクラでは仕方がない。
楽屋で前座を一緒に勤めた後輩に
「兄さんはアドリブ効かないんだから〜」と。
確かに自分はそうであるのに、臨機応変に笑いを取る連中に憧れてしまうのです。
師匠に言われた通り「オチのない話はするな」でした。
わかっていても、時々ややウケす?のでやってしまう。やるならオチを付けろである。
お前が思い付きで喋るなんて百万年早い!であった。
噺の候補に悩んだせいもある。
ネタ帳ずらと出ていないというのもあったが、
圓朝モノばかりでしばらく演っていなかったせいにしたくはないが、
与太郎がブレブレだった。
私の与太郎はめげないはずが、マクラのスベリを引きずってめげてしまった。
そして、楽屋には飛んでいたハエがまさか高座にまで…そりゃ飛ぶだろに楽屋と高座は繋がっているし、換気の為にドアも開いている。
自分が試されているかのように、私の右眉毛の近くに止まった。
ココで私は動じてしまった。
『ハエが飛んでいる』と言ってしまったのだ。
お客様も気にはなっていたろうに、
私が確認したのは三匹。
私にとまった奴と
他に小さいのと人一倍大きな奴は私をあざ笑うかのように飛ばずに私の見ている前をはっていた。
『ほらほら〜オレをイジって、ウケてみろよ〜』と言っているようだった。
そこは経験値で、たいしてウケないがなんとかいなして噺に戻った。
今席は人気の伯山の芝居で、私の出番は中入り後の次の出番で深い位置。
伯山は良いお客様をたくさん呼んでいるのだからと、肩に力が入るのは仕方が無いとしても情けない。
途中で噺を切って降りて来たら持ち時間より短かったので
『前の時計とズレてるし、高座にはハエが飛んでいるぞ!』と時計とハエのせいにしてしまった。
ハエの事は伯山に伝えた。
伯山が高座を降りて来て『あのハエは厄介ですね!』と。
彼にもハエはとまったがうまく噺に取り入れて、見事にウケていた。