《映画論》世界のありか(上) 屋敷の内と外、鏡の向こう
「映画論 〜世界のありか」と題して、(上)を富裕層、(下)を貧困層について、テキストを書いてみよう。富裕層のテーマは「屋敷」と「鏡」である。
屋敷がある。富と権力、戸籍と血縁、土地と国家。屋敷は戦争をも超える。
屋敷の中には鏡がある。女は鏡の中にもう一人の自分を見る。美少年は鏡の中にもう一人の自分を見る。男は鏡の中の自分が見えない。
共生社会から監視社会に変貌した現代において、屋敷の中にある鏡に映る自分は、鍵である。世界のありかにつながる扉の鍵である。
大島渚の「儀式」や市川崑の「犬神家の一族」のように、旧家の屋敷は人間を縛るものとして機能し、悲惨な展開をつくってしまう装置としても描かれる。それは日本人の精神性の主体にすらなっている強大なものだ。
ところが、屋敷の中に鏡が光っている場合がある。
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