映像系のネタを愛してきた 〜 陣内さんと日本の形。 | 2000年生まれのポピュラー文化探訪 #53
単刀直入に書きます。わたしはツッコミのあるお笑いが苦手です。家族がお笑い番組が好きなので毎年の賞レースも見ているのですが、ほとんど笑いません。幼少期にお笑い芸人のネタを引用した形で弄られたトラウマもあるのかもしれません。基本的にお笑い番組が苦手なら、バラエティー番組も同様の理由で苦手だったりします。
単純に面白くないのに、さも面白そうに振る舞っているのが嫌というのもあります。わたしの感性に合わなかっただけなので、単純にその芸人さんが面白くないと結びつけてほしくはないのですが。
とは言いつつ、陣内智則さんのネタだけは笑えたりするのでよくわかりません。かつてはナイツが好きで、今はあまり観なくなりましたが、賞レースに出ていた頃はよく笑っていました。あと、シュールな笑いが好きなのはあります。一見、何も笑わそうとしていないように見えて、よく見なくとも変わったことをしている。これはお笑いではありませんが、浦沢義雄さんが脚本を手がけた東映不思議コメディーシリーズの登場人物たちが当てはまります。あ、『Mr.ビーン』も好きです。
要するに、笑いのストライクゾーンが狭すぎるんですよね。狭い中にぴったりと当てはまってくれると、恐ろしいくらいの勢いで笑い出す。
陣内智則さんの笑いの何が面白いのかというと、やはり原田専門家さんのつくっている映像にあると思います。陣内さんのつくる台本も面白いのですが、映像を使い始めてからの爆発力は彼の貢献があまりにも大きすぎます。ダウンタウンのお二人には受けませんでしたが、ディアゴスティーニのネタが個人的にはかなり好きなんですよね。
テレビのバラエティー番組をネタにした「じん散歩」や「じんゴルフ」も大好きですし、好きなネタを挙げ始めるとキリがないのですが、なんだかんだ言って、十年以上は陣内さんのネタを好きであり続けています。
ただ、こんなことを綴ると陣内さんやファンの方には怒られますが、わたし個人としては、ツッコミよりも映像のシュールさを楽しみたいのです。あの映像が好きなんです。身も蓋もない話ですが、ツッコミがいらないくらいに映像で笑っています。
さっきは要するに……と纏めてしまいましたが、結局は映像系のツッコミが入っていないネタが好きなんでしょうね。笑い声もいらなくて、ただただシュールさを楽しみたい。
たとえば、ラーメンズはラーメンズの本体はそんなに笑わなかったんですけれども、NAMIKIBASHIのネタはかなり笑っていました。
「海外視点からの日本紹介」という切り口で、誰も突っ込まないまま、ナレーションも突っ込まないまま、そのまま進行していく。
このシリーズが始まるきっかけとなった『机上の空論』に顕著ですが、2000年代のネタなので今見るとキツい描写もあるものの、それでも笑ってしまうんです。(『机上の空論』は片桐仁さんと市川実日子さんの気恥ずかしくなるほどの告白シーンがたまらなく好き。斉木しげるさんも良い味を出していますよね)
もう何かと朝から晩まで語りがち。そんな偏愛を爆発させがちなわたしですけれども、いずれにせよ、誰も傷つけずに大笑いすることほど、楽しいことはないもので。学生時代のわたし自身が道化になってしまいやすかった分、人を傷つける、傷つけられることには敏感で、物事がうまくいっていた時に軽薄になり過ぎてしまったいつかのわたしを後悔していたりもします。
それでも、人生は続く。この先もわたしなりに愛せるお笑いを愛でていきたいものです。
2024.1.10
坂岡 優