爆風スランプの復活
爆風スランプの復活。
ひょっとしたら、今のところ、今年いちばん嬉しかったニュースかもしれない。
いろんなバンドやソロ・ミュージシャンの音楽を好きになってきたが、コロナ禍の孤独な春にずーーーーーっと聴いていたこともあって、特に思い入れがある。だが、「きっと復活はむずかしいんだろうなあー」と、サンプラザ中野くんとパッパラー河合さんがふたりでメディアに出演している姿を観ながら、いつかを夢見ていた。
そんな日が来てしまったのだから、なんだか浮ついた気分だ。しかも、新曲とメンバー全員が揃ったコンサート、代表曲「Runner」のファーストテイクまで。
新曲の『IKIGAI』を聴いていると、「ほんとうに爆風が帰ってきたんだ!」と感慨深い気持ちになった。タイトルにもなっている「IKIGAI」というコンセプトが、まさに今の彼らを象徴しているよう。
26年ぶりの新曲、バーベQ和佐田さんのベースから始まるのがたまらないな。爆風というと、現在も療養されている江川ほーじんさんのベースを思い浮かべる方も多いだろうし、当時を知る方であればあるほど思い入れが強いんだろうけれども、わたしはどちらのベースも大好き。ほーじんさんのベースが稲妻なら、和佐田さんのベースはエッセンシャル。どっしりと胸に音色が染み込んでいく感覚がたまらないんだ。
新曲がバラードではなく、和佐田さんのスラップベースや末吉さんのドラムがガンガン鳴り響き、その隙間を河合さんのギターが縫うように暴れるという、彼らの歴史との連続性を感じるラップ調なのも嬉しい。
近年、中野くんが河合さんといっしょに活動されていた時も好きだったけれども、やっぱり四人揃ってこそ、爆風スランプ。後期の爆風スランプが大好きなので、たまらない響き。
わたしが出逢ってから、はじめての復活。
オリジナルの「Runner」と、『THE FIRST TAKE』のために収録された「Runner」を聴き比べられるということが倖せだ。
メンバー全員の表情がとっても朗らかでよい。音を真剣に楽しんでいる感覚。観ているこちらも、「再び伝説を目にしているんだ」という高揚感に満ちてくる。あの時代を生き残ったバンドだもの、「よい」以外の言葉はいらない。
19歳の春、Spotifyで爆風スランプを気まぐれにかけ始めたわたし。あなたの気まぐれのおかげで、「5年後によいものが観られた」と褒めてあげたい。
この秋にはベストアルバムもリリースされるが、いつか、彼らの気が向いて、オリジナルアルバムの新作に出逢える日が来たら。もう、飛び上がるんじゃないかな。
明日も、よい一日を。ハードボイルドは無理だから、せめてハーフボイルドくらいに生きたい。どうか、台風にはお気をつけて。
2024.8.29
坂岡 優