![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/169750816/rectangle_large_type_2_fce66023c6ee4274392d5df7c08866d2.png?width=1200)
スバルがWRCに帰ってくる日まで
わたしは未だに、2008年12月16日の記者会見を忘れられません。
リーマンショックの影響が社会に色濃く現れた頃でした。12月5日にはホンダがF1からの撤退を発表し、12月15日には限りなく完全撤退に近いニュアンスでスズキがWRC活動休止を発表していました。スズキは2008年からSX4WRCでトップカテゴリーに挑戦を始めたばかりで、スバルもGRB型のインプレッサで長年こだわり続けてきたセダンからハッチバックに完全刷新を行ったばかりでした。
2000年代後半のスバルは非常に厳しい戦いが続いていましたが、2008年後半はテスト的側面が強いながらも、一戦ごとに着実に前進。この年参戦を始めたばかりのスズキもテクニカルディレクターのミシェル・ナンダンが早々に離脱し、三菱自動車のWRC活動の中心的存在だった稲垣秋介さんがテクニカルマネージャーに起用され、シーズン後半には信頼性の向上とともに、ポイント圏内に顔を出し始め、まさに「これから!」という段階でした。
この決断で路頭に迷ってしまったドライバーも少なくありません。特に、自らファンドを立ち上げたガイ・ウィルクスはまさにスバルワークスでここからキャリアを形成していこうという時期に、ワークス自体が撤退してしまいました。彼はIRCやラリークロスを中心に活躍しましたが、結局WRCのトップカテゴリーに参戦する夢は叶いませんでした。
また、クリス・アトキンソン、トニ・ガルデマイスター、パー・ガンナー・アンダーソンはワークスドライバーとしてのキャリアが実質的に閉ざされ、ペター・ソルベルグも3年間にわたるプライベーター生活が始まります。以前取り上げたように、「THIS IS MY LIFE」「NEVER GIVE UP!」を合言葉に自らがすべてを取りまとめる形で参戦し続けた3年間はペターのラリーに対しての情熱そのものが各所に現れていて、わたしを含む、多くのファンの記憶に残り続けています。
スバルとスズキが撤退した当時、わたしは小学2年生でした。何度も綴ってきた話ですが、この撤退は心の底から悲しみましたし、ドライバーたちがそれぞれの道を歩み始めた翌年の開幕戦・アイルランドは、まるで心にぽっかりと穴が空いたような気持ちで見つめていました。次戦の参戦も約束されない中でシトロエンのウェアに身を包むクリス・アトキンソンは、正直、違和感しかありませんでした。
次戦・ノルウェーには旧型のシトロエン・クサラWRCでペター・ソルベルグが復活し、同じく4年落ちのシュコダ・ファビアWRCでパー・ガンナー・アンダーソンも参戦しましたが、トニ・ガルデマイスターは結果的にWRC復帰を果たせませんでした。
2017年にトヨタはWRCに復帰を果たしましたが、技術提携や資本提携を行う関係性でもあるスバルは、全日本ラリー選手権や各国選手権、地域選手権へのサポートを続けるものの、未だにWRCのトップカテゴリー復帰を果たせていませんし、下位カテゴリーにも参戦していません。
かつて、トヨタ、スバル、三菱、日産、マツダ、ダイハツ、スズキなど、ほぼすべての日本メーカーがなんらかのラリーにワークス体制で挑んでいた時代がありました。唯一、ホンダは伝統的にラリーに力を入れませんでしたが、ヨーロッパのプライベーターがシビックをR3規定に持ち込んだことがあります。
現在のスバルを見ていると、WRCへの復帰の可能性が限られていることはわかっています。しかしながら、WRCにスバルのマシンがあるのとないのとでは、やはり、まったく力の入り方が違ってくるんですよね。六連星があってこそ、WRCはもっともっと盛り上がると思っていますし、いちファンとして、その復帰を心の底から願い続けています。
どんなに時間がかかっても、絶対に復帰してほしいですし、他のメーカーも、またWRCの各種カテゴリーに積極的に参戦する時代が帰ってきてほしいです。わたしはWRカー以降の時代しか知りませんが、トヨタ、ヒョンデ、フォードだけの現在は、やっぱり淋しい。2009年から2012年にかけて、シトロエン、フォードだけになった時代もありました。今も、いずれかのメーカーが撤退すると、あの時代に戻ってしまいます。また2027年から規定が変わって自由度が高く、コストを抑える方向性で検討が進んでいるようですが、そろそろ本腰を入れていかないと、カテゴリーの存続自体が危うくなってくる可能性すらもあります。
わたしはモータースポーツの中でラリーが好きで、WRCは特別な立ち位置の選手権です。いつか、その盛り上がりの中にスバルが居る日がやってくることを信じています。絶対に帰ってきてほしい。重ね重ねになりますし、これからも年に一度は発信していきますが、WRCで表彰台に登ってこそ、スバルのアイデンティティーが復活する日といってもいい。何年でも、何十年でも、待っていますよ。
さあ、今年ももうすぐWRCの季節がやってきます。
2025.1.12
坂岡 優
いいなと思ったら応援しよう!
![Yuu](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/3317553/profile_69314a9d931f26975b0b273541313cdf.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)