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「さすらひスニーカー」

もう何年にもなるスニーカーを履きつぶした。
正確には履きつぶそうとしているところだ。
もう靴底がひび割れていて、雨の日には水が沁みてくる。
ホントにボロボロなんだけれど、まだ捨てられない。
なんでだろう。

親譲りの整理下手で、なかなか物が捨てられない。
勿体無いから、とレジ袋や折なんかも残している。
これはどうも遺伝子レベルの問題らしい。
おばあちゃん家にも無駄な物がやたらと多い。
良く言えば物を大切にする家系なのだけれど、
角を立てて言うと貧乏性なのだ。

で、スニーカーである。
ベージュ色の彼にはとてもお世話になった。
紐じゃあなくって、マジックテープなのがお気に入りだった。
最近そのマジックテープの部分が剥がれ出した。
これならイヤでも分かる。
そろそろお別れの時が近いようだ。

僕はよく歩く。
かなり歩く。
そんな僕と一緒に歩き続けてくれた。
アスファルトが熱い夏の日も、雪の中も。
勿論、雨の日も。
なんなら犬の糞も踏んづけたかもしれない(ゴメン)。

アニミズムという考え方がある。
すべての物には精霊が宿る、というのだ。
昔の人々が氏神さまを信仰するのもこれにあたる。
有名な傘のおばけも、物は大切にしなさい、という意味が見える。

僕のスニーカーも付き合いがかなり長いので、
これには友達みたいな気がしてたんだ。
だからなるべく捨ててしまう前には、
お気に入りの場所に履いていこうと思っている。
それが僕からの感謝とお礼のつもりだ。

【2005 ?月?日 HP更新】

#なごみの手帖

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