「本当に好きなもの」
どういう訳か音楽を創っている。
理由もなく閃(ひらめ)いたものを曲というカタチにする。
そしてライヴやCDで、創ったものを発表する。
みんなでワイワイというよりも、もっとパーソナルな愉しみや感動をイメージしている。
僕等の心が傷付かないよう覆われた殻の、その内側のあの柔らかい部分に届くように。
けっして声を荒げて歌ってはいけない。
柔らかい部分に響くには、多くの音楽がそうしているような虚勢は無意味なんだから。
そしてこれは相変わらずロックンロールなんだ。
だからなんのギミックもテクニックも要らない。
誰でもその気になれば始められる自己表現。
成り上がる方法の一つ。
たとえば黒人のボクサーがチャンピオンになるのと同じ理由。
労働者階級出身の僕にとって、それが許されたチョイスだったから。
確かに僕は色んなジャンルの音楽を知っている。
まぁ一般のリスナーよりもほんの少しだけは。
で、しばしば、音楽が好きだから中井はこんな生き方をしている、と思われる。
実際はそうじゃない。
間違っても全ての音楽が好きな訳じゃない。
正確にいうと、ごく一部の音楽と数人の素晴らしいミュージシャンに感動したから今の僕がいる。
Rock’n’roll、Rhythm&Blues、Jazz、Bossa Nova、Soul、Folk、Doo Wap、歌謡曲…etc
セロニアス・モンク、ジョアン・ジルベルト、美空ひばり、ビートルズ。
バナナジュースが好きなんじゃない。
バニラビーンズ入りのあの店のバナナジュースが好きなんだ。
31アイスが好きなんじゃない。
ロッキーロードが好きなんだ。
とにかく好きなものが好きで、しかも好きだから好きなんだ。
という訳で音楽を創っている。
#なごみの手帖 [ 2006年4月22日(土) ]