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【トランサミン】トラネキサム酸との違いは?併用しても大丈夫?

トランサミン」と「トラネキサム酸」、どちらも医薬品の名称です。

風邪で喉の炎症を抑える薬として処方されたとき、薬局によって名前が違うことがあり、疑問に思う方もいるかもしれません。
また、美容皮膚科でシミ(肝斑)治療の薬をもらうときも同じことが起こります。

どちらも有効成分は「トラネキサム酸」
成分は同じですが、「商品名」が違うだけなのです。

今回は、「トランサミン」と「トラネキサム酸」の違いや、効能効果を解説します。


トランサミンとトラネキサム酸の違いは?

「トランサミン」と「トラネキサム酸」は、どちらも同じ有効成分を含む医薬品です。
しかし、名前が違う理由は何でしょうか?

トランサミンは「販売名」
トランサミンは、第一三共が販売している先発医薬品の商品名です。
有効成分(成分そのもの)は、トラネキサム酸です。

トラネキサム酸は「ジェネリック医薬品」
トラネキサム酸という名前で販売されている薬は、ジェネリック医薬品(後発医薬品)です。
ジェネリック医薬品とは、先発医薬品と同じ有効成分・同じ効果を持つ薬です。

ジェネリック医薬品ってどんな薬?

ジェネリック医薬品(後発医薬品)は、先発医薬品と同一の有効成分を同一量含み、同一経路から投与する製剤です。
効能効果、用法用量が原則的に同じであり、先発医薬品と同等の臨床効果と作用が得られる医薬品をいいます。

  • 有効成分・効果・用法用量は、先発医薬品と同じです。

  • 先発薬に比べて価格が安いことが多いのが特徴です。

  • 厚生労働省の厳しい基準をクリアしており、安全性・効果は確認済みです。

ジェネリック医薬品の名前のルール
有効成分の一般的名称(成分名)+剤形+含量+「会社名(屋号等)」
で構成されています。

ジェネリック医薬品は、先発医薬品に比べて「薬価(薬の価格)」が安く設定されています。
先発医薬品の特許が切れた後に発売され、研究開発費用が少ないためで、患者さんの医療費負担を軽減するメリットがあります。

例をあげると以下のとおりです。ここに記載した薬価は2024年4月時点の薬価です。

250mgは薬価差なし

トランサミンの基本情報

1964年に日本の研究者により発見され、1965年に止血作用を有する薬としてトランサミンカプセルが発売開始されました。

今では世界各国で止血剤や抗炎症剤として使用されている日本生まれの薬です。

第一三共

トラネキサム酸は、医療用医薬品から市販薬、さらには化粧品や歯磨き粉にまで広く使用されている成分です。
そのため、知らないうちに過剰摂取となる可能性もあるため、注意が必要です。

トラネキサム酸が使われる主な場面は、以下のとおりです。

  1. 医療用医薬品

    • かぜ薬:喉の炎症抑制

    • 肝斑の治療薬:美容皮膚科の処方

    • 止血剤:出血を抑えるための治療

  2. 市販薬としての使用

    • 総合かぜ薬:のどの痛みや腫れを抑える目的で配合

    • 肝斑改善薬:しみ対策として販売されている内服薬

  3. 化粧品・日用品

    • 美白化粧品:メラニン生成抑制による美白効果が期待される

    • 歯磨き粉:歯肉炎や歯周病予防のため、抗炎症成分として配合


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効能または効果

トラネキサム酸は止血作用を有する抗プラスミン剤です。

種々の出血症状などに関与するプラスミンの働きを阻止することにより、抗出血・抗アレルギー・抗炎症効果を示します。

トランサミンの効能または効果は、以下のとおりです。

全身性線溶亢進が関与すると考えられる出血傾向
・白血病、再生不良性貧血、紫斑病等、及び手術中・術後の異常出血
局所線溶亢進が関与すると考えられる異常出血
・肺出血、鼻出血、性器出血、腎出血、前立腺手術中・術後の異常出血
下記疾患における紅斑・腫脹・そう痒等の症状
・湿疹及びその類症、蕁麻疹、薬疹・中毒疹
下記疾患における咽頭痛・発赤・充血・腫脹等の症状
・扁桃炎、咽喉頭炎
口内炎における口内痛及び口内粘膜アフター

トランサミン錠250mg/トランサミン錠500mg/トランサミンカプセル250mg/トランサミン散50%添付文書

保険適用外ですが、トランサミンは皮膚科領域でシミ(肝斑)を改善するために使用されます。メラニンを生成する色素細胞メラノサイトの活性化を抑制する作用により効果を示します。

用法・用量

トラネキサム酸として、通常成人1日750〜2,000mgを3〜4 回に分けて服用します。

年齢、症状により適宜増減します。必ず指示された服用方法に従ってください。

飲み忘れた場合は、気がついた時点で1回分を飲んでください。ただし、次の飲む時間が近い場合は、忘れた分を飲まないで、次の飲む時間に1回分を飲んでください。絶対に2回分を一度に飲んではいけません。

誤って多く飲んだ場合は医師または薬剤師に相談してください。

特定の背景を有する患者に関する注意

血栓症のリスクが高い方・腎機能が低下している方・妊娠中・授乳中・高齢者の使用は、医師に相談してください。

合併症・既往歴等のある患者
・血栓のある患者(脳血栓、心筋梗塞、血栓性静脈炎等)及び血栓症があらわれるおそれのある患者
・消費性凝固障害のある患者
・術後の臥床状態にある患者及び圧迫止血の処置を受けている患者
・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
腎機能障害患者
・腎不全のある患者
・人工透析患者
妊婦(治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。)
授乳婦(治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。)
高齢者(減量するなど注意すること。一般に生理機能が低下していることが多い。)

トランサミン錠250mg/トランサミン錠500mg/トランサミンカプセル250mg/トランサミン散50%添付文書

相互作用

血栓症のリスクが高い方は、トランサミンの服用に関して注意が必要です。

低用量ピルの服用は併用注意ではありませんが、低用量ピルの服用にも血栓リスクがあるので、処方される婦人科で相談してから服用するようにしてください。病院によっては血液凝固系の血液検査を行ってくれる場合もあります。

併用禁忌(併用しないこと)

トロンビンを投与中の患者へは禁忌(投与しないこと)とされています。

トロンビンは血液凝固促進薬です。血栓形成を促進する作用があるため、トランサミンとトロンビンの併用により血栓形成傾向が増大します。

併用注意(併用に注意すること)

併用により、血栓リスクが上昇するため、トランサミンの服用に関して注意が必要です。

ヘモコアグラーゼ
・ヘモコアグラーゼ注射液は、ヘビの毒液に由来する酵素止血剤です。2023年11月時点で販売中止になっています。
・トラネキサム酸とヘモコアグラーゼの大量併用により血栓形成傾向があらわれるおそれがあります。

バトロキソビン
バトロキソビン注射液は、ヘビの毒液に由来する抗血栓性末梢循環改善剤です。血液中のフィブリノゲンを低下させ、血液の流れをよくすることにより手足の潰瘍や痛みを改善します。通常、慢性動脈閉塞症(バージャー病や閉塞性動脈硬化症)に伴う虚血性諸症状、振動病における末梢循環障害、突然発生する難聴の改善に使用します。
・トラネキサム酸とバトロキソビンの併用により、血栓や塞栓症を起こすおそれがあり注意が必要です。

血液凝固因子製剤(エプタコグアルファなど)
・血液凝固因子製剤は、血液凝固を活性化させることにより止血作用を発現します。一方、トラネキサム酸は、出血症状などに関与するプラスミンの働きを抑え止血作用を発現します。
・併用により、出血リスクをより抑えることができますが、血栓リスクは上昇するため注意が必要です。

トランサミンの副作用

トラネキサム酸は副作用が出にくい薬ですが、発疹や消化器症状があらわれることがあります。

美容目的で日常的にトラネキサム酸を服用している方は、かぜ薬など処方されたときに注意が必要です。喉の炎症を抑えるためにトラネキサム酸が処方される場合がありますが、併用すると過剰摂取になるおそれがあります。

薬を服用するときは、おくすり手帳などを活用し医師や薬剤師に服用している薬を確認してもらうようにしてください。

記載された副作用がすべてではありません。気になる症状が出た場合は、医師または薬剤師に相談してください。

重大な副作用

重大な副作用として、痙攣(けいれん)が報告されています。使用をやめて、すぐに医師の診療を受けてください。痙攣の発現頻度は不明であり、 人工透析をされている患者さんで痙攣があらわれることがあります。

その他の副作用

トランサミンは副作用が出にくい薬ですが、発疹消化器症状があらわれることがあります。

トランサミン錠250mg/トランサミン錠500mg/トランサミンカプセル250mg/トランサミン散50%添付文書

臨床成績

トランサミンの臨床効果は、60~70%認められています。

全身性線溶亢進が関与すると考えられる出血傾向及び局所線溶亢進が関与すると考えられる異常出血
・全身性線溶亢進が関与すると考えられる白血病、再生不良性貧血、紫斑病等の出血傾向及び肺出血、性器出血、腎出血、手術中・術後等の異常出血に対する止血効果は73.6%(2,063/2,802例)に認められた。

湿疹及びその類症、蕁麻疹、薬疹・中毒疹における紅斑・腫脹・そう痒等の症状
・皮膚疾患(湿疹及びその類症、蕁麻疹、薬疹・中毒疹等)の患者223例を対象にした一般臨床試験は、そう痒、腫脹、紅斑等の症状に対する効果は60.5%(135/223例)に認められた。

扁桃炎、咽喉頭炎における咽頭痛・発赤・充血・腫脹等の症状、口内炎における口内痛及び口内粘膜アフター
・扁桃炎、咽喉頭炎、口内炎及び歯肉炎等の患者168例を対象にした一般臨床試験では、疼痛、腫脹及び発赤等に対する効果は70.8%(119/168例)に認められた。

トランサミン錠250mg/トランサミン錠500mg/トランサミンカプセル250mg/トランサミン散50%添付文書

まとめ

トランサミンとトラネキサム酸は、同一成分ですが、
名称の違いは先発医薬品ジェネリック医薬品によるものです。

トラネキサム酸は、市販薬や化粧品、日用品にも広く使われているため、
多くの製品に配合されている成分です。
知らないうちに過剰摂取してしまうリスクもあります。

「この薬と市販薬を一緒に飲んでも大丈夫?」
そんな時は、薬剤師に相談してください。

参考

くすりのしおり : 患者向け情報

ジェネリック医薬品への疑問に答えます。~ジェネリック医薬品Q&A~


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ゆう
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