そばにいるよ、それだけで誰かのケアになる。
「何かあった?」
聞いてもらうためには、行動や様子で表現しようとか書かれてある本書。もうアピールの察してちゃんなので、ちょっとどうなのよと思っていたら、
そんな人がいたらまずこの本を読んでいる私が声をかけてほしい、と書いてある。
聞く技術は、聞いてほしい人を見つける技術なのだと。
聞く技術聞いてもらう技術
東畑開人
私は、子どもの頃、当時は珍しい片親の家庭で育っていたのと、大人に連れ歩かれて噂の流れを知っていたので“根掘り葉掘り”事情を聞かれるのが、心底嫌だった。
だから今でも、人のことを“聞こう”とすると“根掘り葉掘り”聞いてくる不快感を感じる人との違いをどうつければいいのかわからなくて、うまく聞けない。
だから「何かあった?」もなかなか口から出てこない。
けれど最近知ったことがある。こんな質問することすら、相手に不快感を与えるのでは?と考えてしまう私でも普段から“行動”に関してなら質問していることに。
「どうした?」
「最近何してる?」
みたいな聞き方。あるいは、お店では
「この1ヶ月、どうでした?」というような状態を聞くこと。
同じく根掘り葉掘り聞いているのかもしれないが、心理的な壁は低い。おそらく、その人の“周辺の事情”を含まず、相手の行動や状態だけを聞いているから。
普通に擬態したいのに普通がわからなかった20代30代と違って、どうやら自分はデリカシーがないし、他の人と基準が違うことが色々ありそうだから、同じ基準を押し付けちゃいけないんだと認めることができた40代。
人の心に寄り添いすぎて感染していた20代は、優しい自分でありたかったけど、それだともう倒れる40代。
気持ちもわかるところとわからないところがあって当たり前で、それを伝えても良いと考えられるようになってから、人の話をもっと聞きたいと思うようになった。
それでも、人の事情は聞いてはいけない気持ちになる。そんな宙ぶらりんなところから、抜け出せる気がする一冊。
何もできないし、聞くのもままならないけど、そばにいるよというのが、伝われば、それだけで誰かのケアになる。