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うつくしい巾着には

わたしは、家系的に空腹を我慢するのが苦手だ。

これが遺伝なのか、習慣からなのかは、わからないけれど、とにかく本当に苦手で、仕事のときも、空腹にならないように細心の注意を払っている。

もちろん、万が一減ってしまった場合でも問題ないように、一口大の羊羹や最中、チョコレートなどをかばんに忍ばせている。

空腹によってどんな症状が出るかというと、

気分が悪くなる。

よって、機嫌も悪くなる。

そんな人と仕事をさせるのは申し訳なさすぎるので、できるだけ空腹にならないように、

自分で自分の機嫌を取っている。


家系的にというのは本当で、各々が好みの手段でおやつを持ち歩いている。

祖父は気に入りののど飴を、スラックスのポケットと(たまに洗濯されることがあり困っている)、車のポケットに入れているし、

おばあちゃんもいわゆる「おやつ袋」を持ち歩いている。


うちの母も例外ではなく、外出する際は必ず「おやつ袋」を持って出かける。

わたしはというと、まだ持っていない。

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母のおやつ袋は、どれも巾着。

ベルギー製のレースがあしらわれているもの、

鮮やかなオリーブ色で半透明のビニール製のもの、

多色使いで幾何学模様のテキスタイルが使われているもの、

グレーのやわらかい革製のもの、

キルトの大人っぽいものなどがあるが、

どれも、うつくしい佇まいのものばかり。


中のおやつは、黒糖がなめやすくキャンディのようになっているものが必ず入ってる以外は、

その日家にある、とっておきのものが入っている。

いただきものなことが多く、

雅に小包装された香ばしいカステラから、

宝石のようなフルーツゼリー、

惑星のようなチョコレート、

輝くような甘ったるいわたがし、

甘酸っぱい乾燥梅干まで、その種類は多岐にわたる。

巾着は、その日のバッグや着物に合わせて選ばれ、

巾着の中には、母の空腹だけでなく、心まで充してしまうような”あかぬけた”おやつが入っている。

それらは、人目を気にせずに手軽に食べられるようコンパクトに設計されていて、だいたいが個包装。


いつも、黒糖キャンディ以外に、もう三種類ほど入っていて、母自身はだいたい一日に2つ食べ、残りは後輩や上司にあげるらしい。

長年同じ会社に勤め、現在同じ部署には15名ほどいるらしいが、

母から見ると「この人はおやつが必要だな。」ということが分かるらしく、

人目につかないタイミングでそっと渡すと喜ばれたり、

泣かれたり!!

何かを話されたり、するらしい。


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おやつ袋は空腹をを充すためのもの、というわけでもなさそうだ。


わたしも、お気に入りのおやつ袋を探してみようと思う。



(2020/7/7 七夕の夜に)


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