じしゅくなう
【咎人に私的制裁を与えたカドで、謹慎中!】
扉の前に荒々しく書き殴られたメモ書き。
妹が珍しく息せききって帰ってきたかと思ったら、兄さんが数時間後に疲れ切った顔で戻ってきた。
ママは、話を聞くと、まあそこは本人たちに任せましょうと。
幸い、大きな問題にはなってないのだから。
そこから、向こうの方では色々と手を打ったようだと聞いた。詳しくは、教えてはもらえなかったけど。
あれから数日経っても、まだ出てこない。いつもだったら、どこかお気に入りの場所に出掛けるだろうに、それもない。
こんなに長く、あの子が籠ってると、私まで落ち込んできちゃう。
やるべき事は沢山あるから、そんな暇はないのだけれど。
次から次に、傷ついた子たちが渡って来ている。てんやわんやになってないのは、心得のある有志も増えてきているからだけど。
本当に、あの時にお話を聞きに行けて良かった。しばらくは何処にも行けそうにないから。
と思っていたら、今度は私が呼び出されてしまった。
何かしら?
半刻後、七海は苦笑いで戻ってきた。いつも明朗快活が心情の彼女には珍しく、何があったか口ごもる。
「なんか有ったのかは聞かないけど、もっかい気合入れてくよ!」
「う、うん!」
「返事はハイ!!」
反射的に、七海のお腹から声が出る。
それは今まで、鬼っこたちも他の奴らも聞いたことがないような大声で。
「…あんな、おっきな声も出せるのね。」
なんて、仕事終わったらケラケラ笑われる始末。
今日はなんて一日かしら。彼女は胸の中でそっと零す。
しかも今日は、まだやることがあるのよ。
でも、なんて切り出せばいいのか分からないわ。
ああ、願わくば、妹の怒りがおさまって、せめて落ち込んでくれていますように。
あの子は、一回深く潜ると、なかなか上がっては来なくって。
そういうとこは、本当に、ちぃに似てるんだけど…ちぃはいいなあ。恋人さんもいるし、とても柔和な方だって、それしか聞けなかったけど。
ああ、だめだめ違う違う。今考えるのは、ってもう考えちゃダメだ。
殴り書きの張り紙は変わってない。
たっぷり悩んだ十秒間。
響くノックの回数は。
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