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Netflix日本コンテンツ分析レポート:世界で戦える作品の条件とは

はじめに

日本のアニメやドラマは本当に世界で戦えているのか?

この問いに答えるため、Netflixの2024年上半期グローバルデータを分析しました。単なる数字の羅列ではなく、各作品の中身まで踏み込んで、日本コンテンツの現状と可能性を明らかにしていきます。

注:本分析での「日本コンテンツ」は、日本のIPを使用している作品や日本が主体となって制作している作品を指します。日本企業が海外で制作した作品や日本のIPを基にした海外制作作品も含みます。

テレビ番組カテゴリー:実写化の新時代の到来

市場シェアから見える現状

  • 作品数 : 1,001作品 / 6,801作品(14.7%)

  • 視聴時間: 46億時間 / 682億時間(6.8%)

Netflixグローバルデータより筆者作成

総作品数の14.7%を占める日本作品ですが、視聴時間シェアは6.8%に留まっています。数字自体はネガティブに見えますが、限られた予算で多くの作品を提供できている日本の制作力の高さを示唆しているとも言えます。

グローバルランキングにおける存在感

  • TOP10: なし

  • TOP50: 2作品(4%)

  • TOP100: 4作品(4%)

Netflixグローバルデータより筆者作成

注目すべき上位作品の分析

視聴時間TOP5:
(全体39位)Parasyte: The Grey(ドラマ):126.8M時間
(全体50位)House of Ninjas(ドラマ):112.9M時間
(全体82位)ONE PIECE Season 1(ドラマ):92.0M時間
(全体87位)ダンジョン飯(アニメ):90.6M時間
(全体138位)SPY×FAMILY(アニメ):72.6M時間

Netflixグローバルデータより筆者作成

実写化における革新

特筆すべきは、TOP3を実写作品が独占している点です。特に「Parasyte」と「ONE PIECE」の成功は、日本IPの実写化における新しいフォーマットになる可能性があります。

ONE PIECEの実写化成功は、原作の「非現実的な要素」を違和感なく表現できた点にあると考えられます。ルフィのゴム人間としての能力は、かつての実写化では致命的な壁でしたが、最新のVFX技術と原作への深い理解が、この壁を見事に突破しています。

Parasyte: The Greyは、原作の世界観を韓国という新しいロケーションに移植することで、グローバル展開の新たな可能性となっています。原作ファンも納得の緻密な寄生獣の描写と、韓国ドラマならではの人間ドラマの融合は、クロスボーダーのIP活用の好例といえます。

アニメ作品の健闘

ダンジョン飯は、ファンタジー×グルメという独自路線で新規視聴者の開拓に成功しています。特にグルメパートの丁寧な作画と、ファンタジー世界の食文化という斬新な切り口が、言語や文化の壁を超えて視聴者の心を掴んでいるようです。

映画カテゴリー:ゲームIPの圧倒的強さ

市場分析

  • 作品数: 602本/9,360本(6.4%)

  • 視聴時間: 9.5億時間/257億時間(3.7%)

Netflixグローバルデータより筆者作成

映画カテゴリーでは、テレビ番組と比較して相対的に低いシェアとなっています。しかし、TOP作品の視聴時間を見ると、圧倒的な強さを見せる作品が存在することがわかります。

グローバルランキングにおける存在感

  • TOP10: 1作品(10%)

  • TOP50: 3作品(6%)

  • TOP100: 3作品(3%)

Netflixグローバルデータより筆者作成

人気作品の深掘り分析

視聴時間TOP5:
(全体6位)The Super Mario Bros. Movie:123.1M時間(アニメ映画)
(全体34位)Sonic the Hedgehog 2:61.2M時間(実写映画)
(全体40位)Godzilla Minus One:57.5M時間(実写映画)
(全体111位)Ultraman: Rising:32.3M時間(アニメ映画)
(全体129位)Gran Turismo:30.7M時間(実写映画)

Netflixグローバルデータより筆者作成

ゲームIP活用の成功例

上位5作品中3作品がゲームIPを活用した作品という興味深い結果となっており、特に「マリオ」と「ソニック」の成功は、グローバルでの高い認知度に加え、原作ゲームの世界観を損なわない緻密な映像化と家族で楽しめる普遍的なストーリーテリングが功を奏したと考えられます。

特撮IPの底力

「ゴジラ」と「ウルトラマン」の健闘は、日本の特撮IPが持つポテンシャルを証明しています。特に「ゴジラ-1.0」は、最新のVFX技術と日本らしい人間ドラマの融合により、国際的な評価を獲得しました。

データから見える日本コンテンツの未来

実写化における新基準の確立

今回のデータを見て大きな気付きとして、実写化における新たな成功パターンがあります。特にONE PIECEとParasyteは、これまでの実写化とは全く違う次元の作品になっています。
2作品とも、原作への愛情と理解を持ちながら最新技術をうまく使い、これまでチープに見えがちだった特殊な表現を再現しています。また、世界展開を最初から視野に入れた制作により、世界で勝負できる作品に仕上がっています。

アニメの新たな可能性

アニメ界で特に注目したいのは「ダンジョン飯」の成功です。ファンタジーとグルメという、一見混ぜにくそうな要素を組み合わせた斬新な企画が、言語や文化の違いを超えて視聴者の心を掴んでいます。この成功は、面白い企画があれば世界で戦えることを示しています。

ゲームIPの強さ

そして個人的に最も衝撃を受けたのが、ゲームIPを活用した作品の圧倒的な強さです。マリオやソニックの成功は、世界中で愛されているゲームIPの底力を示しました。原作IPの強さに加え、映像作品として新しい魅力を加えられた点が良かったのかもしれません。

おわりに

日本コンテンツは、アニメやゲームIPという従来の強みを活かしながら、実写化という新しい領域でも可能性を広げ始めています。これからは、この両方の良さを活かしながら、もっと多様な作品づくりができるはずです。
次の半年のデータも、今からとても楽しみです。


分析手法について

本分析は、作品名にIP関連情報(メタデータ)を付与し、データ分析を実施しました。SevenDayDreamersでは、エンタメ業界における「数字では見えない価値」をデータで可視化し、コンテンツの持つ本質的な魅力を最大化するソリューションを提供しています。IP分析や意思決定支援について、お気軽にご相談ください。(お問い合わせ:X DM または info@7dds.co.jp

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