自作解説編① 「遺されてⅨ」
今週は予告通り、最近の自作「遺されてⅨ」について、色々と記してまいります。こういう類の自分を語るような文章はなかなか不慣れなのですが、どうぞ、よしなに・・・
目次
〈まずはみてみる〉
解説を行うとは言ってみましたが、まずは純粋にみてもらいたい。
「何に注目すればいいかわかんね!!!」という方は、
↓の対話型鑑賞(※1)でよく使う注目ポイントも参考にしてご覧いただければと思います。
① 何が描いてあるか
② どんな状況か(時間帯、季節、シチュエーションなど)
③ 作者はなぜこれを描いたのか
では、ぼちぼち解説に入っていきます。
〈一言で表すと〉
「死んだ爺さんお盆で返ってこんかった!!!」
・・・意味がわからないって?詳しい説明が下に続きます。ご安心ください。
〈画中のモチーフ〉
この絵の主題は、ズバリ「お盆」。
なので、中央の謎の物体は精霊馬、つまるところきゅうりで作るアレです。
「お前のようなきゅうりがあってたまるか!!」って感じですが、
実際にこうなりました。
1週間の遠出から帰ってきたら、この惨状。
ちなみに、背景のモデルになったのは唐招提寺の庭園。(鑑真の作ったアレです)そこから絵に合わせて微調整を加えました。
上から垂れているのは、枝垂れ柳です。
絵に入りこむ簾のような役割のほか、後述のように東洋画によく描かれる「詩」のメタファーとして配置しています。
〈制作秘話〉
お盆をモチーフにしたのは、祖父の初盆がきっかけでした。
この絵を描いた2024年の2月末ごろ、父方の祖父が天寿を全うしました。私にとっては初めての家族との永遠の別れで、かなりショッキングな出来事でした。
そんなこんなで迎えた初盆。
多忙ゆえ現地には行けなかったものの、下宿で精霊馬を作ってお供えすることにしました。
しかし、祖父の信仰していたのは浄土真宗。
仏教に詳しい方であればご存知かもしれませんが、浄土真宗においては死者は極楽浄土に転生してすぐに仏様になってしまうため、お盆に帰ってくることがないのです。
(おまけに祖父の入信していた宗派が特殊だったのか、「浄土に旅立ったら仏様の一部になって個体識別がなくなる」システムとのことで、自分がこれから浄土真宗に入信したところで、死後祖父に会うことは叶わないということになる。余計悲しい)
もともと、「遺されて」シリーズは、広い世界に一人取り残され、誰とも一線を引いて生きていく寂しさ、諦めを主題にしているのですが、まさか、死者からも切り離されるという。
私をキャンバスに向かわせるには、十分すぎるものでした。
仏教行事をもとにしているので、構図作りもどことなく東洋絵画をベースにするのは自然に決まりました。先述の柳も、東洋絵画において絵画とセットであった詩部分のオマージュです。
もっとも、もともと私が東洋絵画の文脈を踏まえた洋画制作に興味を持っていたというのもあります。
逆に言えば、この作品を作ったことをきっかけにある程度自分の制作・研究の方向が定まったともいえます。
〈終わりに〉
こんな感じで解説をしていきました。最初なので分量とかわからんですが、こんなものでどうでしょうか・・・!?
素材の話とかできていないので、また更新するかも。
そんな「遺されてⅨ」ですが、今週10/25(金)〜27(日)開催の武蔵野美術大学芸術祭2024にて展示します!
直接作品をご覧いただける機会になりますので、
お時間のある方は、ぜひ大学まで足をお運びいただければありがたいです。
ついでに即身仏きゅうりのステッカーも販売するので、よければ買ってください(笑)
今回はこれにて。日付跨いだので月曜更新になってしまいましたが、次回からは日曜に頑張って戻します。
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