【読書】リーダーシップに出会う瞬間
”先頭に立って人を導く”、”上に立つ人が発揮する”
少し前までのリーダーシップの一般的なイメージはこのようなものだったと思います。
一方で、近年のリーダーシップとは、誰もが発揮するもの。
もっと言えば、その人らしさとして自然と発揮されているものと定義されるようになりました。
本書もそのような、誰もが発揮するものとしてリーダーシップを捉えています。そして、なんといってもこの本の特徴は、一人の女性が成長していく物語を通して、その本質について手触り感を持って学べる点にあると思います。
まるで小説やドラマを見る感覚で、興味深く一気に読み進めることができ、
自分自身のふるまいやありたい姿にひきつけて考えることができる。そんな仕立てになっています。
本書の舞台は某食品メーカー。入社9年の青木美智子さん(主任)が主人公です。彼女はあるとき、上司から将来管理職になることを目指してみないかと声をかけられます。
それまでの彼女は、目の前の仕事を一生懸命行っていただけ。
そのため、管理職になること、そしてリーダーとしてメンバーを導いていくことは、考えたこともありませんでした。
まさに、主人公自身が、旧来の狭義のイメージでリーダーシップを捉えているところから物語は始まります。
管理職を目指すことにぴんとこない青木さんに、上司は、ある人に会ってみるよう勧めます。
それが、のちに青木さんのメンターとなる森尾課長です。
森尾課長は、軽やかに自分らしく活躍する女性リーダーです。
彼女との対話を通じて、青木さんは仕事の中で周囲とのかかわり方を変え、
自身のリーダーシップに目覚めていく。そんなストーリーとなっています。
ちなみに、本書では「リーダーシップ」とは「影響力」であると定義しています。
「いるだけで場をなごませるような人」
「場をぴりっと緊張感を持たせる人」
「不機嫌そうで、重たい空気を出す人」
皆さんの周りにも様々な影響力を持つ人がいらっしゃるのではないでしょうか。
誰もが、そこに存在するだけで周囲に自然と与えている影響というものがあります。それがリーダーシップであるということです。
では、その影響力はどこからきているのでしょうか?
本書では、それを影響力の起点と表現しています。
たとえ同じことを言っていたとしても、その背景にあるものが自身の保身や人をコントロールしたいというようなエゴによるものか、あるいは、本書の言葉を借りるとコアな願いによるものか。
何を起点にその発言をしているか、そのことで、相手に伝わるものがまったく変わってくるのだと本書は教えてくれます。
そして、自身の起点を自覚するのは意外と難しいもの。正しく自身の起点に気づくには、視野を広げ、同時に自分の感情を客観視できる力が必要であると言います。
「相手を変えることはできない。変えられるのは自分だけ」とはよく言いますが、本書を読むと、おそらく自分を変えるということが意味するのは、自身の影響力の起点に気づくことではないかと思わされます。そのことで自身のリーダーシップを変えることができ、そしてはじめて周囲にも違う影響を与えることができる。
チームで働くすべての人にお勧めしたい一冊です。