【読書】部下が働かない本当の理由
タイトルから、上司向けのマネジメントの本かと思いきや、中身は自身のありたい姿を考えることについて論じている、まさにリーダーシップについて説いている本である(と私は思った。)これは酒井さんの本に共通しているメッセージだと思う。
部下が働かないのはなぜだろうか?
以前は特に気にしなくとも会社にコミットして働く人が多くいたけれど、今の若者は会社に対してドライなように感じる。ワークライフバランス重視だし、すぐに転職するし、飲み会にはこないし、、、
いったい何をモチベーションにしているのかつかめない。そんな漠然とした不安感がマネジメント側にはあるように思う。
私自身、最近の若手とは価値観のGAPがあるのを感じる。ただ、40代に突入した私と新卒の若者は20歳も違うのだ。過ぎてみればあっという間の20年だけれど、ずいぶんと今の20代とは経験してきた文脈が異なるわけで、価値観、考え方が違うのは当然である。それは頭ではわかっている。
だけども、その”違い”がなんであるかに手触り感がない。
本書では、象徴的な世代間断絶のキーワードとして、「ゆとり世代」という言葉を使っているが、この言葉には、「上司側が若者を理解できないという不安」、さらには、「自分たちの価値観が正しく、若者はまだ未熟で正しくない」とどこか見下している上司側の心理が反映されているのだと指摘している。
この指摘にはドキリとさせられる。
日本社会は年上を敬うという規範が社会全体に無意識に刷り込まれている。経験を積んできた年上の人の方が現実を理解し、的確に判断できるという思い込みが前提としてあるし、だから、上司である私の方が正しいことを言っているはずだという力学が働きがちである。そのことが、”若者を見下す”という扱いにつながりやすい。
これまでは、そのような権威が機能してきたため、会社におけるコミュニケーションは、納得するかどうかは脇において、上司が主張することを、部下である若者が受けとるということが成り立ってきた。
もちろん今後も、上司の経験には若者にはない価値もあるはずだ。
しかし、今の時代、この本でいうところの”ゆとり世代”はきっと真顔で、「なんでですか?」と返してくる。上司側の伝える言葉、行動の意味、意義がわからないと、率直に疑問を返してくるという時代はすでに来ている。
これに上司側はどうやって対応するのか。
多様性の時代にメンバーの個性を活かしながらマネジメントをするということはすごく難しい課題である。
酒井さんは、リーダーシップを、人を動かす力というところから連想し、相手を思う通りに誘導していくことと解釈し、そのためのスキルを身に着けようとすることではうまくいかないと言う。
そうではなく重要なのは「本人の価値観を明確にすることである」と述べている。
仕事の中で何を実現したいのか。人間としてどうありたいのか。自分の価値観を示し、この人についていきたいと思わせる人間性が大事であるということだ。
リーダーシップの語源は「leith」。
出発する、敷居を超える、死ぬという意味だそうで、
自分の指針をもって歩みを進めているかが問われる。
結果的に、その歩みに人がついてくるのかどうかということ。
メンバーのマネジメントに苦慮するとき、どうしてもスキルに頼りたくなってしまうし、もちろんそれはそれで役に立つ側面もあるのだけれども、そのスキルが機能する上でも、今の時代、「この仕事は何につながっているのか?」「どんな意義があるのか?」「自分はそれに対してどう考え行動しているのか?」そのようなことに自分の解を示して、自分の言葉で語り、結果として周囲がそれに共感したなら、マネジメントの大きな助けになってくれる。
部下が働かない本当の理由はそんなところにあるんじゃないですか?
その問いかけがこの本のメッセージだと受け止めている。