【研究】序盤構想で勝つ時代【part5】
8.序盤の反システム化(局面を多角的に捉え打牌の幅を広げる)
ここまでいくつかの例を挙げ序盤の選択肢として有力になる手順を紹介してきたが「なるほど、次からはそう打とう」で終わらせて欲しくはない。
麻雀は実戦中に考えるべきことが沢山あるため、成績を向上させる手段として何かをシステム化してしまうのは実戦的でとても有力ではある。
しかし、システム化しすぎて多角的な思考を放棄してしまってはすぐに壁にぶち当たり、そこから打牌の質はなかなか上がらない。
「序盤はとりあえず手なりであがりを目指す」というシステムは概ね正しいが、それを盲信しすぎると「何故か勝ちきれない中級者」になってしまう。そもそも、情報が増える中終盤と比べて序盤を簡略化するメリットはそんなに大きくない。
序盤から牌理に背く場合、「牌理的に損だがその他の要素を加味すれば有力な選択」ということになるが、牌理的にどれくらい損か分からないため無難な選択をするプレイヤーは多い。
僕の記事はそういったプレイヤーに向けた「こういう手順も結構有力だよ」という紹介、くらいに捉えてもらいたい。
「序盤からもっと色々考えよう!」
ということ。
9.数牌のアシスト、絞り
アシストには項目7で少し触れたようなアシスト含みの手順と自分のあがりをほぼ見ない完全アシストがある。
今回は分かりやすく完全アシストの前提で優劣を比較していく。なお、分かりやすくするため(そして僕が牌姿を考える手間を省くため)比較と関係ない部分は省略する。
3巡目、下家に役牌ポンが入りアシストしたい状況。
3.7やアンコ持ちはかなり鳴いてもらいやすい牌だが、このようにその中でも選択が生じる場合はどう切っていくべきか。
序盤アシストの基本は、
①愚形で鳴かれやすい牌を切る
②複数持っている牌を切る
という2つがまず挙げられる。
例えば自分が役牌を仕掛けてこんな手牌だとする。ここから一つ進んだり縦フォローが入るなどした場合ペンチャンを払うことになるだろう。
アシストするなら、愚形の中でも最も弱いペンチャンで鳴かれる可能性がある牌は優先的に切ってあげたい。
つまり、最初の4種の中で真っ先に切るべきは4pをアンコで持っていることから3pとなる。
これは鳴かれにくいが鳴かれるとしたら愚形の可能性が高いという牌なので、次巡以降も沢山アシストチャレンジできる序盤だからこそ切りたい牌だ。
次に複数持っている3mと4pの比較になるが、4pは1-4p、4-7pという2つのリャンメンで鳴かれる可能性があるのに対し3mは3-6mのリャンメンでしか鳴かれず、鳴かれた場合の愚形率に差が出るため3mからとなる。
上で挙げた理由も込みで3sと4pの比較は微妙だが、ペンチャンを払われるリスクよりもあとでもう一度チャレンジできるメリットが勝るとみて4p切りになりそう。一応、二度受けを捌ききらせる含みもある。
というわけで序盤からアシストするなら3p>3m>4p>3sという優先度になる。
まぁこの比較が実戦で活きることはほとんどないので何故優先度が高くなるのかという理由の紹介くらいに思って欲しい。
さて、ここでもう一つ序盤アシストの基本を。
③下家の河にある牌の2つ隣までは優先度が下がる
例えば先ほどの4種の比較で、下家の捨て牌に2pがあったとする。
その場合3pや4pが愚形で鳴かれるパターンは激減するので3m>3s>4p>3pという優先度になる。3pに関しては4pワンチャンスの3-6pでしか鳴かれなそうなので、もはや切らなくていいくらいだ。
相手の捨て牌の2つ隣までは特別な意味を持つという考え方は様々な読みの基礎にも繋がるので是非覚えておいてもらいたい。
では、完全アシストの中でも絶対に放銃したくないときの優先順位はどうなるか。
ここで意識すべきは最終的に横移動しやすい待ちを残してあげるということ。
④差し込めないときは多く見えている牌から切る
間違っても自分がアンコで持っているカンチャン待ちなどにならないよう、自分が沢山持っている牌、場に多く切られている牌から切っていくのが基本となる。
場に多く切られている牌は下家がそれほど鳴きたい手牌でなくても発進してくれる可能性があるため場の速度感を上げる意味もある。
つまり先の例なら優先順位は4p>3m>3p>3sだ。
ちなみに、
⑤差し込めない対2副露以上はひたすら同巡に合わせ打つ
というのもかなり有力。河の濃い1副露も同様。
これは染め手など打点が見えているときに「上家じゃないからってラフに切ると合わせちゃうぞ」と他家に無言のプレッシャーをかけることもできる。
差し込めない状況下では⑤が有力なので、他家が持っていない可能性が高い牌から切る④のメリットはかなり大きかったりする。
少し読みの話を...
ターツが足りてなさそうな場合は②のメリットが大きくなるが、「ターツが足りてなさそう」と読める局面は非常に稀な上に仮にそうであっても①のメリットも大きいためあまり意識しなくて良い。
逆に「ターツが足りてそう」と読める局面は少なくない。ターツ落としがあり染めてないパターンや、捨て牌が「南1p北」のように数牌のあとに手出しで字牌が出てくるパターンなどが代表的。
早めにアシストするとターツが出来ていない可能性があるからとアシストのスタートを遅らせる考え方もあるが、基本的には6巡目から3つチャレンジするより3巡目から6つチャレンジした方がアシストが入りやすい、スタートを遅らせるときはアシストのタネが少なく他家の速度感があまりないときなど局面の見極めが重要になる。
特に上記の「ターツが足りていそう」なパターンを見落とさないように気をつけなくてはならない。
よく分からないときは「②複数持っている牌を切る」に逃げるのも実戦的な判断だろう。
さて、ここまでアシストする上で鳴かれやすい牌について書いてきたが、アシスト含みの手順を踏むときや、逆に絞りたいとき、絞り気味に打ちたいときなどにもこの考え方が基礎となる。
簡単な例で説明すると、ここから2p→8sとして69sを残すか7s→3pとして14pを残すかの選択で鳴かれやすさも考慮して状況に合わせた打牌をしようということ。
将来的な待ちの良さよりも下家の和了率を意識すべき局面で、鳴かれやすい牌、鳴かれにくい牌の条件を理解していれば精度の高い比較が可能になる。
特にアシスト含みや絞り気味の構想では拾うべき情報や考えるべきことが多く、鳴かれやすさのロジックからその場で考えているようでは厳しいので、ある程度の基礎知識は必須と言えるだろう。
序盤構想の話でアシストや絞りに言及するというのはあまりピンと来ない人も多いと思うが、捨て牌と相手の手牌を紐付けて考えたり他家の和了率に影響を与えやすいアクションを知ることで、中盤以降有利に立ち回りやすい手組みを考えるきっかけになるかなと思いあえて項目を設けた。
まぁやはり序盤から色々考えよう、ということだ。