他の誰でもないぼくのためだけの音楽
初めてその音楽を聴いたとき
10代でロックに出会った時のことを思い出した
10代の頃のぼくは
いじめられているわけではないが友達もなく
というか誰にも自分のことを理解されてたまるかって感じで
自分は周りとは違う特別な存在だから
馴れ合ってやるものかとか思ってた
そんなぼくにもロックは親切で
ひとりで歩く登下校の時間とか
なんか眠れない夜とか
とにかくどんな時もそばにいてくれた
『リンダリンダリンダ』という名作映画に憧れて
文化祭でバンドを組んだりしたものだけど
ぼくはその出番が終わってから
とにかくやることもいる場所もなくて
でも浮き足だつ喧騒のなかを
ひとりで徘徊することを恥ずかしいと思う
羞恥心は一応持ち合わせていたので
ずっと何かしらの催しがある講堂とかに
ひとりで身を潜めたりしていた
卒業式の時だって
用事までの時間を潰す必要があるけど
文集にメッセージを書き合う同級生と同じ教室で
座っていられるほどの度胸もなく
時間までトイレにこもってたりもした
この2つのことは今もすごく覚えてるけど
あとはたくさん音楽を聴いて、本を読んで映画を観てたこと以外は
ほとんど覚えてないし
あの頃の同級生にはそれ以来誰ひとり、一度も会っていない
SNSもやってないからいま誰が何をやってるか
なんにも知らない
いまそれなりに普通の大人になって社会に出て
あの頃のぼくの、周りのこととかどうでもよくて
ひとりで好きなことだけしていて誰よりも自由だった
無敵感(笑)は今のぼくにはもうなくて
社会に出てからやりたくなくても人間関係を形成しなくちゃいけなくて
正直、なんでもっとあの時人との関わり方を学ばなかったんだろう
そのために学校生活ってあったんだよなって思ってしまうこともあって
そんなことを考えてしまう自分にちょっぴり悔しくもなった
『星彩と大義のアリア』
世に放たれたその名盤は
そんなぼくの脳を揺らした
この人はこんなにも時間を超えて
あの頃のぼくもことを救ってくれるのか
ついでに今のぼくのことも
あの日ロックンロールに出会って
ひとりじゃなくなった日のことを思い出した
ぼくはまたあの頃のぼくのことが大好きになった
また大好きになることができた
もし今、
あの頃のぼくのような誰かが
この音楽に出会えたなら
ぜひ君だけのものにしてほしい
SNSにあげないで
誰にも教えないで
自分だけが感じた気持ちを自分の中に閉じ込めて
そうすれば、誰にも汚されない
ずっと君を守ってくれる、いちばんの理解者でいてくれる
何年経ってもずっと
友達なんかいなくていい
誰かと同じじゃなくていい
ひとりでいたって別にいい
本当に大事なものは、誰にも見せないで独り占めしていい
他の誰でもない、ぼくのためだけのもの、だと
君が思えるなにかに出会えたのなら
今日から君は、無敵だ
『星彩と大義のアリア』リリースに寄せて