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物理学科で学ぶ事

私は物理学を専攻し、大学院修士課程まで学んでいきました。ここでは、物理学科とはどのような所なのかを自分が感じたことを踏まえ、書きたいと思います。物理学科への進学を希望する人の助けになればいいかと思っています。

物理学科について

物理学とは何か

物理学とは自然界の物質の起源や現象を理論で裏付ける学問であり、それは“立証科学”だと言われています。そのために「この物質は一体どんなものであるか」ということを徹底的に突き詰めて研究するために、理論を習得したり、物質の特性を自分の目で確かめられる「実験」をします。また実験は実際に道具を使うだけでなく、コンピュータシミュレーションや、頭の中で行う実験である思考実験も含まれます。

そうすることで、物質の本質を知り、さまざまな現象の原因や原理を知ることもできます。このとき、自然現象を説明できない理論は物理学ではなく実験などからかけ離れた理論は単なる空論であり、考察の対象とはならないと考えられます。そのため、論理性だけでなく、それが自然界にどのように説明できるのかが求められます。
そのために実験や観測をして結果によって示された時、理論は正しいとして確立されます。

そのような探求をするためには、自然に関する深い洞察力が必要であります。

ではどのようにすれば、このような洞察力が身に付けられるのでしょうか?それは、講義や本を読むだけでなく、演習をすることであります。演習とは、実際に個々の自然現象に関する問題を考察することです。例えば、問題を解いて答え合わせするだけでなく条件を変えてみたり、答えがわからない問題を自ら考えて解くというようなことであります。

さらに深い洞察を身につけるには、自分の興味を持ったものについては何でも調べたり体験したりすることが必要になるかもしれません。それは、スポーツでも、旅行でも、テレビゲームでも何でも構いません。ここで重要なのは、漠然とするのではなく、意識的に感じることです。

今後の物理学では、物質の研究においても、人工知能といった情報科学や生命科学といった分野の視点を加えることが必要になる可能性がありますので、物理学の本流に囚われない研究も必要になる可能性があります。なので、物理学だけでなく、自分の興味のある分野は、学んでみるという姿勢が必要になりますし、その中で物理学との関連を考えて学ぶといいです。

物理学科への入り方

・一般入試
目的意識がはっきりしていない人や、自分に何も持っていない人
は一般入試をオススメします。一般入試は成績勝負であり、これまで何もしてこなかった人にとって、逆転できる唯一のチャンスであると言えます。AO入試は面接があるので、面接が苦手な人や物理に関して語るものがない人はここで勝負した方がいいです。

・AO入試・推薦入試
目的意識がはっきりしている人
はAO入試(もしくは推薦入試)で受けるのをオススメします。最近の大学入試は、学力が高いだけでなく、学ぶ意欲が高い人を求めている傾向があります。そのために、AO入試を使った入学者の割合を3割程度になろうかとしています。AO入試では、面接だけでなく、適性試験も行い、学力も意欲もあるのも見ようとしています。そのために、ニュートンなど科学系の本を読んで自己啓発を図るとともに、部活動では科学部に入って実験をしたりしてほしいと思います。また、物理オリンピックに興味を持ったらいいなと思います。

・3年次編入・大学院入試
別の学科に入学してしまった人や既に大学を卒業した人
はこちらです。必要な単位をとって物理学科に行くと、教養の学習をしなくてもいいメリットがあります。最初の1年の学習はたくさん専門の単位を取る必要があり、かなり大変なので注意してください。物理学を研究をしたい人で基礎からきちんと身に付けたい人もこちらをオススメします。いきなり大学院へ通って研究についていけなくなるリスクが減ります。基礎に十分な自信があり、研究したい人は大学院に挑んでいいかと思います。

物理学科と工学部の違いは何か

物理学は時間や空間や物質の起源や現象を探る学問ですので、物理学科では自然現象に関しての探求、つまり真理を追求します。一方、機械工学や電気電子工学科といった工学部は物理学を活かしたものつくりをすることで、人の役に立つのかどうかを追求します。なので、自然界の起源を探りたい人は物理学科人の役に立ちたい人は工学部へ進むことをすすめます。

学ぶ内容の紹介

基本分野

以下の内容を学部生の時に学ぶことで、研究ができるようになるための知識や学力を身につけていきます。

物理数学
物理を学ぶのに必要な数学をまとめた分野

力学
微分・積分を利用し、力と運動の理論を学ぶ分野。

熱力学
熱を中心とした自然現象を学ぶ分野。

解析力学
力と運動の理論をより抽象化したものを学ぶ分野

電磁気学
電気や磁力について学ぶ分野。

量子力学
現代物理学の中心ともいえ、ミクロの世界にある粒子の性質を体系づける分野。

統計力学
分子・原子・素粒子などの微視的運動から、物質の性質や法則を導き出す分野。

相対性理論
時間や空間の性質について学ぶ分野

発展分野

以上の基本分野を習った上で発展分野を学びます。発展分野は大きく分けると以下の3種類です。        

素粒子・原子核物理学
物質の元々の基本的な要素は何か。その性質は何かを探る。

宇宙物理学
宇宙の起源や天体の運動および性質を探求する

物性物理学
物質の性質を分子や原子の大きさのレベルで探ろうとする

以上の分野を学ぶにあたって

 基本分野は1年生から履修し、発展分野は概ね3年生から履修をします。また4年生では卒業研究をすることで、研究の世界を体験できます。また、大学によっては、発展分野に関して大学院の方が学部より充実していると言えるところもあり、本格的に発展分野を学ぶのは大学院に入ってからと言えるでしょう。また学部では、自分が学びたい分野を調べつつも、基礎分野に関する演習問題を解き、自分が学びたい分野との関連を考えながら学ぶことで、発展分野を学んだり研究できる素地を身につける必要があります。

卒業後の進路

一般企業の場合、電機・機械メーカー、コンピュータソフトウェアの開発会社などへの就職が主になります。そのほか、教員、公務員になる人もいます。また大学院に進学して研究を続ける人も少なくありません。その際、大半は修士課程まで進学して就職する人が多いです。

教職課程について

数学科や物理学科といった理学系の学科は教員志望が多いです。
また、基本的に中学と高校は2つとも取る方をオススメしますし、科学全般を教えられます。また中学校の教員免許を取ると、高校の教員免許を自動的に取れる学校が多いですので、中学校の教員免許の取得を目指すつもりで取ってください。
物理学を中心に教えたい人は、高校の教員免許のみでいいかもしれません。高校のみの場合は、中学の教員免許と比べて習得に必要な単位は少なく済むので、物理学を極めやすいというメリットがあります。
しかし、教育学部に比べると、物理学科では教員になるモチベーションは全体的に低めなので、教員を目指す事が決定している人にはオススメできません。また、教育学部理科専修に物理学系の講座を設けているところがあるので、物理を教えたいという認識があるかたは、教育学部が一番と思います。なので、教職課程はおまけのようなものと考えてください。
基本的に、物理学科では物理を極めたいという人が行くところであるので、教員を目指す人は注意が必要です。

参考文献

杉山 忠男「理論物理への道標〈上〉」 河合出版; 三訂版 (2014/8/1)

ファインマン、 坪井 忠二 「ファインマン物理学〈1〉力学」 岩波書店; 新装版 (1986/1/8)


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