映画「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」をNetflixで見ました。「物語」を物語る物語。
映画「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」を見ました。物語はオーソドックスですね。クボという少年の物語。月の帝である祖父から、クボの母は久保と共に逃げ出してきた。成長したクボと母は二人だけで暮らしている。日暮れ前に住処に戻ってくるという約束をクボは破ってしまう。そこに久保の母を姉と呼ぶ画面の人物が現れクボを襲う。母のおかげでクボは逃げ出すも、母は亡くなる。母の魔法でサルの人形から、命を持ったサルと、道中で仲間になったクワガタ人間(クボの父の家来だったらしい)、父の記憶を持つ折り紙とともに、天の帝を倒せるという3つの武具を探しの旅に出る。武具探し、母の姉との戦い、天の帝と戦い、物語は終わる。
テーマは「物語」。人の物語としての「記憶」だろうか。クボは住処の麓にある村で折り紙を魔法(いつも持っている三味線を引いて)で操って物語を語る(結末まで語られないのも示唆的ですね。この映画自体がここの物語の続きです)。ここで、物語が出てきますね。クボと天の帝との最後の戦い、クボは天の帝の言葉に「それはあなたの物語でしょう」と言う。天の帝は「わしと天上界に来れば物語など超えられる。不死身になれるのだ」と言う。クボは「物語は終わる」と言います。他の言い方もできるのに、過剰に「物語」と言う言葉が頻出しますね。天の帝「これがお前の物語の結末だ」。クボは三味線を引いて、村人たちの祖先の霊を呼びます「僕たちはあなたより強い」「これは亡くなった大事な人の思い出だ」「胸深く刻んだ彼らの物語は決して誰にも奪えない」という言葉と共に三味線を引き、天の帝を圧倒します。記憶を失った天の帝に「あなたは良い人だった」と言う、ことを村人たちは言います。良い物語(記憶)が人を変えることを示しています。最後にクボはお墓参りで旅のことを語り「僕は幸せだった」と言います。物語(記憶)かなくならない限り、人は生き続けることを示します。物語(記憶や思い出)の大切さを、強調してますね。なので、これがテーマだと考えました。「物語」の強調はこれがアニメーション(ストップモーションアニメーションというのかな)で作られたということも考えると、メタ的ですね。エンディングで、このアニメーションを作っている場面がてできます。大変そう。これを考えさせるのもテーマかも。強調することによって(台詞なども工夫して)、テーマを知らせるという手法もあるんですね。
クボが物語を語る場面で、「三つの武具」を探すことが語られるんですよね。「三つの武具」は天の帝を倒す道具だと。なので、クボたちがこの三つの武具を探すのは自然です。そして、私が物語が面白くなりそう思えたのもここから。三味線?を使い、折り紙を操る魔法の表現を見ながら、「この魔法がどう物語活かされるのかな」と期待しました。魔法に関しては説明はありません。三味線を引いて、魔法力が発生させるというルール以外は決まり事も説明されません。映像表現が素晴らしいので許せてしまいますが。映像の強さですね(魔法とかの説明は特になくても、楽しめますね。能力バトル作品ばかり見ていると説明するのが当たり前と思ってしまいますが)。三味線での、魔法表現は物語始まってすぐ、クボの母が逃げている場面で波を裂く場面でも出てきます。この時は「すごい映像だな」と思っただけで、物語への期待はそれほど高まりませんでした。クボが魔法で物語を語る場面は、長いですからね。でも、上手いこと省略もしていて、動きもあるので飽きません。その語りから、武具探しの場面は面白かったです。武具は折り紙のクボの父が道標としての役割を果たします。ご都合主義かと思ったら、クボたちが父の廃城に行った時父たちが武具を探していたことがわかります(よく考えたら、クボの折り紙の物語でも語られていたけれど)。武具のありかを知っていたなら、ご都合主義じゃないですね。仲間になる、クワガタの登場はちょっと唐突でしたが「折り紙の父」に興味を持ったという説明で納得はできます(クボの父の部下の語るこのクワガタは実はクボの父でした。クボの母に命を与えられたサルの心は、実はクボの母その人でした。クボは両親とともに旅をしていて、家族の物語を作っていたのですね。よくできている)。3つの武具探しに最後に残った武具で得る兜は、麓の村にあり、それによってクボは村に向かうので、最後の村人たちの先祖を呼ぶラストにつながります。上手いですね。上手いは上手いのですがこの3つの武具、武具探しの冒険(家族の物語作り)と、村への導線としてしか役立ってません(サルが敵の姉妹と戦う時に使ってましたが、別に普通の武器でもいいし)。天の帝との戦いには役立たないですしね(三味線で圧倒する)。物語を進行させるためだけの道具でしかなく、もう少しなんらかの役割を与えられなかったかなとも思います。苦労して集めてきた武具は役に立たないし、天の帝の目的がいまいち分からず、最後は少し盛り上がりに欠けていたような気がします(私の中で期待値が上がらなかった)。クボの片目を何故奪ったのか言及されないんですよね。後でクボが「心を見せたくないからだ」と言っています。自分の娘が敵であるはずのハンゾウ(クボの父)が、ハンゾウの心を見て、愛してしまったことがトラウマになっていたとはわかりますが。天の帝が何で最後に出てきたのか、村に出てきたということは武具が底にあること知っていたの? 何で壊さなかったのか。などなど、説明されない。クボが天の帝を恨む気持ちはわかる。天の帝が何をしたかったのかの説明があれば私はすごく楽しめたかな(私が映画のターゲットではないのかもしれませんが。天の帝側を描くと、エグくなって子供向きではなくなるかな?)。天の帝も結構あっさり退治させられるし。
クボは物語の中で成長していると思うけど、成長は強調されてませんね。前半にこれといったクボの足りないところの描写もなかったし(魔法に関してはコントロールできない場面もあったけど、これといってそれを解決した描写はないです。船作ったりとうまいことコントローしていました)。クボはキャラクター性は強くないです。最初から魔法がそこそこできて、サルから多少怒られることはあるけど、それに対して少しイタズラするくらいで、反発することはないです。いたっていい子です。クワガタを助けようと、海に潜ったりもしますし。それだけに、天の帝に対して「殺す」といっている場面は違和感がありました(両親は殺されてはいますが)。クボのキャラクター性より、サルとクワガタの掛け合いがこの作品だと面白いですね。この二人の方がキャラクター性はありました。といっても、この作品に対してはクボを中心に見ていました。これは「バーバラと心の巨人」と同じく、登場してくる人物全員の興味の中心がクボであるということに関係しているのでしょう。
苦労してとった武具が最後全く役に立たないのは残念でしたが、それを得るための冒険は面白かったです。テーマもはっきりしていて良い映画でした。語れませんでしたが、敵の姉妹のルックは魅力的でした。
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