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映画「snatch 」をDVDで見ました。多い登場人物だいたい魅力的。

こういう作品はどう言いましたっけ。群像劇? グランドホテル形式? それぞれの人物を追いながら、全く軸が違う物語が同時に進行し最後にうまく重なって着地する。「バッカーノ」という小説を昔読みましたが、「バッカーノ」もこのような物語形式でしたね。

舞台はロンドン。冒頭でフランキーが盗んだ「86カラットのダイヤモンド」巡る物語と、裏ボクシングでの出来事。この2つの物語が微妙な接点をもったまま、映画は進行する。主要と思われる登場人物がたくさん出てくるし、物語がどこに進んでいるかわからない。人物を覚えるのに頭を使い、物語が2つに交錯しているためだろうか、物語の先が容易に読めず、少しでもその映像の語りから振り落とされる可能性があるため、見ていることに集中力をようされる。しかしながら、もちろんつまらなければ集中力など続かないわけで、わたしは集中して見ていた。0〜2時の間に見ていたのだが、ちっとも眠気がささなかった。

エピソードが2つ交錯しておらず、どちらか一方だったらここまで物語に興味を持てなかったと思う。2つ絡まっているから先が読めない。今まであまり見たことがない展開。そんな点に惹かれたのだと思う。

それ以上に各々の人物性が映画を面白くしている。特に、母親を殺されたミッキーがどのようにして、ブリックトップに復讐するかというのは期待させられた。ミッキーの人物描写はこうだ。パイキー(イギリスでは主に旅行者、ジプシー(放浪人)、または社会的身分の低い人々の事を指す)の若者、ふざけた態度で普段はヘラヘラしているのに、素手のボクシングでは誰にも負けない。演者がブラット・ピットというところにも何かする期待というか、そういうものが付与されている。うまい演技とは、主役と脇役では違うと思うけれど、主役級においてはこのような、いるだけで期待感をいだかせる存在感、を感じさせるものが良い演技などではなかろうかと思った。もちろん、そこにわざとらしさがなく(あってもその人物に相応しいわざとらしさなら良いと思う)、実際にいると感じさせないといけないとも思う。それは劇の中でなく、もし実際に出会ったらこんな感じだろうかと考えさせるような存在。これらが良い演技というのかはわからないが、良い「俳優」ではあると思う。強盗の首謀者フランキーという男は、ダグとの会話の中でいかにも怪しい雰囲気で話していた、わざとらしくはあるが、この先何か行ってくれそうな感じをすごく感じさせた(しかし、結局その後ほとんど活躍しなかったが)。演技だけでなく、エピソードで人物性を高めている者もいた。「一度に6発の銃弾を受けながら、歯で銃弾を受けて生き延びたことがある凄腕の賞金稼ぎ」というエピソードをもつ(語りだけでなく、実際に映像としても流れていた)トニー。車の窓枠に人を挟んで、車を走らせ、脅迫するなど行動からも人物性を際立たせてた。「裏切り者は殺して、豚の餌にしてしまう」ギャングのボスのブリックトップも人物性が際立っている。実際に豚の厩舎の場面はあるし、死体処理の仕方としてソルとヴィニーに講釈を垂れる場面もあり、「豚の餌にしてしまう」ということが恐怖の背景として使われいて、人物性を立たせる。黒人のソルとヴィニー(ボリスからノミ屋強盗といっしょにフランキーのもつ鞄を盗むこと依頼される。2人は知らないが、ダイヤモンドが入っている)と逃がし屋のタイロンは、どこか間の抜けた感じで描かれていて、何か面白いドジしそうな予感をさせる。この3人はダイヤモンドの窃盗と闇ボクシングの物語を絡ませる役もしている。ボリスは銃火器の商売をするロシア人(元KGBらしい)そこまで映画に出てこないが、銃火器を持って路上を歩いて行く場面は少し笑える。3人に窃盗を依頼した物語の語り手としてのターキッシュにはそんなに強い人物性は付与されていない(心の声は彼だけの語り)。相棒のトニーは明らかに間が抜けていて、闇ボクシング関連の話は全部彼がしっかりしていないせいである。そんな人物たちが絡まりあって、2つの物語が進行するのだ。

犬もうまいこと2つの物語を絡ませている、最初ミッキーからトニーに渡され、その後ヴィニーに渡され、紆余曲折を経てダイヤを飲み込み、最後にトニーの元へ行く。スナッチの意味はひったくり、この犬のことを言っているらしい・劇中でおもちゃを飲み込む場面でスナッチ(ひったくるな)と言われている。

冒頭は全くよくわからなかった。3人いるのに、2人の紹介しかしないし、「ダイヤモンドの世話をする」と言っているがその意味もわからない、その後ダイヤモンド窃盗の場面が映されるからそれと関係あるというのはわかるが、この冒頭と繋がりがある場面は出てこない。それもそのはず、繋がるのは最後の場面だ。

フランキーにボリスのことを教えた男が裏切り者らしい。電話している場面もあったね。

アビーがニューヨークから、ロンドンに飛んでくる場面はうまく面白いカット割だ。トニーの死体を見せず、アビーがニューヨークに帰る場面も面白い(先に書いた場面と同じようなカット割)。狩で犬が兎が追う場面(ミッキーとターキッシュの賭け)と、タイロンが追われ、ブリックトップによって犬に襲われる場面を交差して映している。この場面は印相深い場面となっている。兎は犬に襲われず、逃げる。これは物語の最後を予期しているのだろう。強者であるブリックトップをミッキーたちパイキーが逆襲することを。トニーたちがボリスを襲う場面を描かないところもうまいと思った。必要ないところは描写を省略して、だいたい2時間に収めようとしているのだろう。

悪い奴は悪い奴を知っているので、うまいこと物語が進む。ブリックトップのところに盗みにはいったソルとヴィニーとタイロン、ブリックトップの部下はソルとヴィニーは知らなかったが、タイロンは知っていた。

物語としては状況が状況を読んで展開するだけの物語である。登場人物たちはいきあたりばったり行動している(最後のミッキーは違うが)。ミッキーを主とすると、母を失い、復讐する物語とも言える。復讐はカタルシスがある(と言って長く見せ場として描いていないけど。パイキーの住まいでの復讐劇を見せるために、時間を巻き戻しボクシングの場面を見せるのはすごいと思った)。ソルたちを主と見れば喜劇だね。ターキッシュは心の声を語るのです主人公っぽいけど、狂言回しとも言える存在。それよりも、一瞬、一瞬の映像の語りで見せる物語だ。先が読めず、映像や人物たちの話から物語を読み解かないといけない。そこに夢中にさせて見せる。

最後を見手から思えばラストは想像できそうだが、ラストは想像できず一体どうなるんだとずっとドキドキして見ていた(ボクシングの場面も、最初の試合と違ってミッキーは少し苦戦する。わざとかもしれないけど)。パイキーたちがこんな危険とは思わなかったからね。でも彼らの行動から見ると、危険なことをしても変ではない。

すごく面白かった。全て知った上でもう一回見ても楽しめるね。最初、パイキーって特定の人の名前かと思って見ていた……。


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