片山幹雄さんに学ぶ、日本の勝ち筋。
日本電産を退社した元シャープの片山幹雄さんの記事がお正月にSNSで話題になりましたね。
遅ればせながら読みましたが、非常に興味深いものでした。
片山さんからのメッセージはシンプルに言うとこんな感じでしょうか。
日本企業は今こそ経営戦略と人材戦略の変革を行うべき。
経営戦略:経営者は組織を勝たせる経営戦略を立案せよ。ポイントは以下3点。①追従型ビジネスモデルで勝て、②勝てる市場に集中せよ、③集中投資によりDの規模感で勝ち、結果としてCで勝ちにいけ。
人材戦略:大企業は人材の流動性を高め、分社化を促進し、変革をリードできる強い経営者を育成せよ。
結果として日本が強い産業構造へ変化することを目指すべき。
以下にてもう少し具体的に内容をご紹介します。
経営戦略について(第一&第二セクション)
フォロワー企業は、圧倒的な投資によって供給能力を高め、効率的に市場を獲得することが勝ち筋である。
QCDのコストで負けるということの意味合いは、実はDの規模感を作れないから、結果としてCで負けているということ。先行する知見のある企業がなぜフォロワー企業に負けるのかというと、それは商品の供給能力に問題が生じたのだ。
組織戦略 / 人事戦略について(第三&第四セクション)
日本が世界で勝つためには、人材の流動性を高め、大企業は分社化を促進し、強い経営者を多数育成する必要がある。
過去の日本には世界に変革をもたらした素晴らしい人材がいたが、人材の流動性が低く、経営や組織が固定化され、強い経営者が育成されないまま世界から取り残されてしまったのだ。
片山さんは日本が捨てたものではないとおっしゃっていますが、一方で人材流動性を高めることが前提ともおっしゃっています。人的資本投資と騒がれて既に半年。片山氏が指摘する人材の流動性が担保されない中、本当に筋の良い成果の上がる政策が進められるのか?注意深く観察する必要があるかと思っています。
以下では上記記事で記載のトピックスについて、少し深掘りをして記事やデータなどを示します。背景となる情報を知ることで、より理解が深まるのではないでしょうか。
韓国サムスンの事業統廃合と半導体事業の躍進
1997年のアジア通貨危機によりアジア諸国の通貨が急落し、外貨借入によって資金を調達していた企業や政府が借金返済に苦しむという結果を招きました。
韓国政府はこの危機に対してIMFプログラムの下で、企業規模ごとに異なった改革の枠組みを用意しました。五大財閥(現代、サムスン、大宇、LG、SK)に対しては、財閥間での事業交換(ビッグディールと呼ばれる)を実施し、中核事業への選択と集中を進める産業構造改革を要請しています。
例えば半導体産業は、危機前はサムスン、現代、LGの三社体制でしたが、政府の意向を受けヒュンダイ電子がLG半導体を吸収、現在のハイニクスとなっています。ハイニクスはLG半導体を吸収したことに伴う過剰債務のため経営不振に陥り、結果としてサムスンの圧倒的なプレゼンスにつながりました。
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2003/data/iwp03j02.pdf
フォロワー企業は効率的な市場獲得が可能
フォロワー企業の方が先行企業よりも製品コストを低く抑えることができる理由には、いくつかの要因があります。
技術の習得:先行企業が開発した製品から技術を習得し、研究コストを大幅に削減できる。
サプライチェーンの確立:先行企業が確立したサプライチェーンを利用することで、部品や材料の調達コストを削減できる。
スケールメリット:先行企業が開拓した市場で、効率的にシェアを獲得可能で、生産量を急速に増やすことで、生産コストが低減できる。
競争によるコスト削減:後発企業の参入により、競争が活性化され、先行企業もコスト削減に努力するため、後発企業もコスト削減することができる。
先行した企業が高いシェアを獲得し、市場がコモディティ化したとしても、フォロワー企業は高い効率で市場獲得できてしまうのです。先行企業が逃げ切ることは難しく、逆にフォロワー企業にとってはチャンスとなります。
ブランド力による価格プレミアム
価格プレミアムとは、商品やサービスが他の同様の商品やサービスよりも高い価格で販売されることを指します。これは、認知度が高いほど、ブランド力が高いほど、顧客は高い価格を支払うことが許されると考えらるからです。
サムスンは世界最高額の広告宣伝費を支払うことで、2012年には世界最大手の携帯電話メーカーとなったと同時に、11.5%の当期純利益率を実現しました。
労働市場の流動性と労働生産性の関係
一時期話題になったので見たことがある方も多いのではないかと思います。片山さんが指摘されているように、人材流動性と経済の成長は相関関係にあります。
人材流動性が高ければ、成長産業や成長企業へ人材の移転が進み、人材スキルも高まり、経済も活性化される。一方で人材流動性が低ければ、人材は一つの企業に滞留し、産業や企業変革のボトルネックとなる。なにより人材スキルが高まらない。強い経営者が育成されない。
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/mirai_jinzai/pdf/001_04_00.pdf
いかがだったでしょうか。上記をふまえて記事をご覧になると、さらに一段理解が深まり、また新しい気づきなどもあるかもしれません。是非ご自身の企業戦略や組織戦略にも当てはめて考えてみていただければ幸いです。
ご覧になっていただきありがとうございました。この記事があなたのお役に立ちましたら幸いです。