読書感想文コンクール ― 今年はチャンス!?
プロフィールにて読書感想文について触れさせていただきましたとおり、今回から読書感想文について連載してまいります。
私たちが<小学生の時の思い出に残る夏休みの宿題>と聞いて連想すると、読書感想文を思い出す方も多いのではないでしょうか?小学生から高校生までを対象とした読書感想文コンクールは複数ありますが、最もポピュラーなコンクールは、「青少年読書感想文全国コンクール」です。夏休みに入る頃には書店に、シンボルマーク入りの帯を巻いた課題図書が一等地に山積みされ、およそ2万5千校、400万編もの応募がある、断トツのモンスター級コンクールです。まずは、「青少年読書感想文全国コンクール」を筆頭に代表的な読書感想文コンクールを整理してみましょう。
青少年読書感想文全国コンクール
公益社団法人 全国学校図書館協議会および毎日新聞社が主催となり、内閣府および文部科学省が後援しています。また、サントリーホールディングス株式会社が協賛しています。個人賞の表彰は、上から順に内閣総理大臣賞、文部科学大臣賞、毎日新聞社賞、全国学校図書館協議会長賞、サントリー奨励賞となっています。他のコンクールは文部科学大臣賞が最優秀賞となりますが、この青少年読書感想文全国コンクールだけが内閣総理大臣賞が設置されていることが特徴です。
―コンクールの開催趣旨―
◇子どもや若者が本に親しむ機会をつくり、読書の楽しさ、すばらしさを体験させ、読書の習慣化を図る。
◇より深く読書し、読書の感動を文章に表現することをとおして、豊かな人間性や考える力を育む。更に、自分の考えを正しい日本語で表現する力を養う。
小学校低学年の部(1・2年生)、小学校中学年の部(3・4年生)、小学校高学年の部(5・6年生)、中学校の部、高等学校の部の5部に分かれ、さらにはそれぞれに課題図書部門と自由図書部門に分かれていることから10区分となります。 応募作品の審査は①学校審査、②市区町村・地区審査会(市区町村コンクール)、③都道府県審査会(都道府県コンクール)、④中央審査会(全国コンクール)へと段階的に行われます。 都道府県審査会においては各部ごとに優秀作品を選び、各部課題読書1編、自由読書1編を中央審査会に送付されます。中央審査会は、小・中・高等学校関係者および学識経験者(大学教員、児童文学作家など)で構成する委員会で行われます。
「てのひら文庫賞」読書感想文コンクール
一般財団法人総合初等教育研究所が主催し、文部科学省が後援、株式会社文溪堂、日本教育新聞社が協賛する小学生対象のコンクールです。指定図書(てのひら文庫)が他のコンクールと比べたいへん豊富で、てのひら文庫は読破する喜びと充実感を得られる手ごろな長さが特徴です。自由図書(てのひら文庫以外)部門もあり、令和元年度の応募数はおよそ14万5千編でした。他のコンクールは複数の学年を一括りにされ、より高い学年が受賞する傾向が強いのですが、こちらのコンクールは各学年ごとに表彰されるためフェアと言えます。 ただし、てのひら文庫は学校の授業で使用される教材であり、書店販売や個人販売はされていないことから、課題図書部門については学校の図書室に所蔵されている環境が条件となりますので、学級担任や図書担当教諭に確認しましょう。ネットフリマなどでてのひら文庫が出品されているケースもありますが、稀です。
全国学芸サイエンスコンクール(文芸Ⅱ分野 (9)読書感想文部門)
株式会社旺文社が主催し、内閣府、文部科学省、環境省(申請中)が後援しています。協賛・協力企業に恵まれたコンクールです。応募分野によって条件は異なりますが、小学生から高校生までを対象とし、サイエンスジャンル(理科系・社会科系)の各研究分野、学芸ジャンル(アート・文芸Ⅰ・文芸Ⅱ・環境)といったように募集範囲が広範です。お子さまの関心の高い分野、得意な分野でチャレンジが可能です。令和元年度の応募数は全体で12万超、内、読書感想文部門はおよそ4万4千点となります。上位入賞者には教育奨学金が贈呈されることが特徴です。
全国小・中学生作品コンクール(国語部門)
子どもの文化・教育研究所事務局が主催、文部科学省など多数の後援を受けて開催されています。小学生から中学生が対象で、自由研究のきっかけと発表の場を与え、さらに継続研究の楽しさを知る機会となります。読書感想文を含む国語部門、社会科部門、理科部門、生活科部門、英語部門、パソコン部門があります。令和元年度は、作文と読書感想文を合わせて1千超の応募があり、受賞作品紹介のページでは当年度の総評が掲載されています。そこでは、読書感想文を執筆するにあたりどのような点に注意すべきかを丁寧に解説されています。他のコンクールに応募する場合であっても、ぜひこちらのサイトを参考にしてください。
◆読書感想文コンクールの傾向
主要な読書感想文コンクールは以上ですが、「さぴあ 作文コンクール」(株式会社日本入試センター主催)のように学習塾などが主催する読書感想文コンクールもあります。各コンクールを比較してみると、募集要項の発表は6月、募集締め切りは学校を通じて9月提出締め切りとするコンクールが多く見られます。多くのコンクールがすでに募集開始され、その中でも青少年読書感想文コンクールの場合5月上旬には課題図書が発表されており、最大4カ月程度もの準備期間があります。
たいていの応募者は夏休み期間中に取り組む傾向にありますが、今年は新型コロナウィルスによる臨時休校期間の長期化が影響し、各自治体は夏休みの期間を短縮し2週間に満たない状況です。もちろん期間相当の宿題が課せられ、そこに帰省などの予定が加わるため、読書感想文に割く時間は限られてきます。しかし、読書感想文を仕上げるのにかかる日数で最も多いのは2~3日ですが、2割の家庭は1週間要し、2週間以上要する家庭も含めると3割もの家庭が夏休み期間だけでは仕上げられないことが分かります。
つまり、今年度は読書感想文への応募数が例年と比べ減少することが予想されます。そうなると確かに倍率は下がりますが、単純に入選・入賞の可能性が高くなるという考え方はできません。と言うのは、5月からすでに書店、ネットショップを含め課題図書は品薄状態となっており、意識高く早期から執筆準備に取り掛かる親子、言い換えれば各コンクールの募集開始情報にも精通した常連親子が多いことの表れでもあります。そういった親子と勝負するのであれば、こちらも早い段階で選書し執筆に取り掛かるほかありません。
それでは<どのように準備をしていけばいいのか>、次回以降一緒に考えていきますが、まずは数少ない読書感想文に関するアンケートを読み解くことにしましょう。
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