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「名づけえぬもの」から「言葉コトバことば」へ

2024年5月4日から5日にかけて行われたダンス公演「FINAL LEGEND 第2回紅白コレオグラフィ合戦」に参加をさせていただきました。

僕は11人のダンサーと共に「言葉コトバことば」という作品を披露。
この作品は僕の代表作ともいえる作品でして、音楽を一切使わず、語りのみで踊るというものです。ストリートダンスの世界では、異質な作品かもしれません。

実は「言葉コトバことば」は今回で5回目の再演でした。再演やリメイクがあまり好きではない僕が3年弱、その時に力を貸してくれたメンバーと作り続けたこの作品について書いてみます。

古舘伊知郎さんのトークライブ「トーキングブルース」との出会い

古舘伊知郎さんといえば、なんといっても実況。
独特な言い回しとテンポ、臨場感を伝える熱量。古舘さんの実況を聞きながら、スポーツマンNo. 1決定戦を見ていたのをよく覚えています。
(世代によってはプロレスなどの実況の方がイメージの方もいるかもしれません)

そんな古舘さんがライフワークとしているトークライブがあるのをご存知でしょうか?

その名も「トーキングブルース」
僕はテレビ番組を見ていて、一瞬話題に出てきたことをきっかけに、トーキングブルースのことを知りました。アナウンサーが身ひとつで舞台に立つ。一体どんな舞台なのか気になり、ネットで検索をしてみるとYouTubeにアップされているではありませんか!

これは見るしかないと思い、見てみると、とんでもなく面白い!
自分の言葉のみで観客を魅了する古舘さんに、僕も虜になっていました。いろいろな動画を見漁っている中で、ふと目に止まったのが「名づけえぬもの」という演目。約3分の中に込められた古舘さんの喋る行為に対する熱意と、遊び心がたまらなく僕の心に刺さりました。

「これで踊ってみたらどうなるかな?」
無謀な気もするけども、なんだか面白いものができそうな予感がする。いつしかそんな考えを持つようになります。

映像版「名づけえぬもの」

記念すべき古舘作品1作目は映像作品。
Envision Nextstageさん主催のDance Recordというダンス映像作品を作る企画に参加させていただいた時のことでした。

古舘さんの言葉の疾走感と遊び心を大切に、カット割りやカメラアングルを考えながらの創作は本当に楽しかったです。そして何よりも、なかなかスケジュールが合わず、4回のリハーサルで踊り切ったダンサーたちが本当に素晴らしかった。言葉で踊るって本当に難しいんです。本当にみんなすごい。

舞台版「名づけえぬもの」

映像版を経て「これを一発勝負の舞台でやったらどうなるのか?」という興味から作り上げた舞台版「名づけえぬもの」

当然ですが、舞台で踊るのでカット割りなどはありません。構成や照明で展開をつけながら、どうやってラストまで走り切るか。ものすごく悩んだのを覚えています。

僕と出演してくれるダンサー達と行き着いた答えは、映像作品の時のような疾走感と遊び心は残しつつ、感情を踊りに込めることでした。古舘さんがこの演目に込めたであろう喋る行為への想いを、僕らがダンスを踊る意味と重ねながら踊る。

本番まで共に試行錯誤を続けた6人が、客席の空気を変えていく様がカッコよかった。

Legend RISE EAST「独白」

舞台版に確かな手応えを感じ、この作品がどんなふうにジャッジされるのか試したくなりました。そこで、コンテストへの挑戦を決意し、作り上げたのが「独白」という作品です。

タイトルは違えど、メインの音源はトーキングブルースの「名づけえぬもの」
ただ、今回は冒頭に環境音の中で踊るというシーンを追加しました。古舘さんの語りをお借りしながら、それを一人の男の独白のような形で表現した構成になっています。

Legend EAST RISEは、Legend Tokyoという振付師のコンテストの東日本予選大会です。僕は過去に幾度となく挑戦をして、ことごとく苦い思いをし続けてきた大会でもあります。そこに再び挑戦をして特別選定賞を獲れたのは格別の思いでした。

僕の作品に惜しみなく力を貸してくれたダンサー達のおかげで受賞、本戦への出場権を得たのですが、だからこそ優勝できなかったのが悔しくもありました。

Legend Tokyo Chapter.11「言葉コトバことば」

予選の反省を活かしつつ、さらなるグレードアップを図った作品「言葉コトバことば」

タイトルの通り、僕が普段、言葉に対して感じる疑念と、古舘さんの発する言葉に焦点を当てながら作り上げました。4回目の再演となるわけですが、身体に馴染んだ言葉のひとつひとつと、新たにもう一度向き合って創作をしました。間違いなく、このとき僕が持っている力の全てを注ぎ込んで作り上げた作品です。

しかし、結果は残念ながら残すことができませんでした。道のりはものすごく険しく、ダンサー達の多大な協力で出来上がった作品だけに、とてつもなく悔しかったですね。

ただ、ダンサーひとりひとりが僕を信頼して、この作品を信じていてくれたことはとても嬉しかった。彼らのおかげで「言葉コトバことば」はここまで育ってくれました。出てくれたダンサー達には足を向けて寝れませんね。


FINAL LEGEND 第2回紅白コレオグラフィ合戦「言葉コトバことば」

Legend Tokyo本戦に出場できたことをきっかけにお声がけいただいた。FINAL LEGEND版「言葉コトバことば」

こちらはまだYouTubeに映像がアップされてませんので、僕の言葉だけで。

「言葉コトバことば」は、FINAL LEGENDで一区切りと決めて作品づくりに挑みました。「それならば、僕も舞台上で最後を迎えたいな」なんて想いもありまして、初めて僕もダンサーとして舞台に立ちました。いやぁ、今まで出てくれたみんなにこんな大変なことしてもらってたのかと実感する日々。言葉で踊るって大変なんですね。笑

今回は"誹謗中傷”をテーマにリメイクしてくれないか?というご依頼をいただき、それを基に作品を作っています。誹謗中傷というと、どこかに矢を向けないといけない。どこにするかと考えたときに、あえてそれを自分の作品に向けてみようと思いました。

誰しも誹謗中傷の被害者にも加害者にもなれてしまう昨今ですが、人前で表現をする仕事は、特にその標的になりやすい。幸い、僕は誹謗中傷の渦中にいたことはありません。でも、もしその矢が僕や僕の作品に向いたとしても、僕は自分の信念に従って踊り続けるんだという想いを込めました。
(もちろん、僕に非があってのことなら、誠心誠意謝罪して対応しますが…)

自分の考えた演出とはいえ、大切な僕の作品を、僕自身があえて傷つけるのは本当に苦しかったです。しかし、ずっと続けてきたこの作品で、心新たに創作に向かう決意みたいなものを刻むことができたようにも感じます。

また、偶然にも力を貸してくれたダンサーが、僕の歩んできたダンス人生の岐路で出会った方ばかりでして。僕の中ではとてつもない胸熱展開でした。偶然なのか、運命なのか、これ以上ない最後だったのかもしれません。

FINAL LEGENDの舞台本番は終わってしまいましたが、現在アーカイブが配信中です。僕の作品はもちろん、他の作品も素敵なものばかりですので、ぜひご覧ください!

『FINAL LEGEND 第2回紅白コレオグラフィ合戦』アーカイブ視聴はこちらから
https://legend-creative.zaiko.io/buy/1wp9:yI9:56ef9

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