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SF「太陽がほしい」#1

SF「太陽がほしい」#1
 僕は静かに部屋を出た。網目の床の下からは光が上がってきていて視界が悪い。壁から吹き出てくる蒸気はとても熱く、幼少期のころに間違って手を突っ込んだから大やけどを負った。お陰で左手は今でも手袋がないと生活ができない。
 周りの人間が起きないように、静かに歩く必要があった。みんな労働で疲れている。休ませてあげないと。僕はゆっくりと大きな鉄扉の前に立った。ハンドルを回して扉を開けるタイプだ。大きな音をたてると皆に気づかれてしまう。ハンドルに手をかけると、いきなり横から手を掴まれた。
「うわ!ああ、ミランダ」
「あなた何してるの!また外に行く気?」
「いや、その、ミランダ、これは」
「どうして危険だと分からないの?」
「なあ、ミランダ、もしかしたら」
「あなた死にかけたのよ!忘れたの!?」
 そうだ、僕は前回外に出て、ミュータントに襲われて死にかけた。僕の不在が分かったみんなはレンジャー部隊を編成してなんとか僕は一命を取り留めたのだ。
「あなたに何かあったら私はどうすればいいの?」
「ミランダ頼む、一時間で帰るから」
「ジン、お願い、もうやめて」
 ミランダに泣かれると心が痛む。でも僕は外に出なければならない。地上で住める場所を求めて。


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