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武富士スラップ訴訟判決(上)

 吉村洋文大阪府知事が弁護士時代に手がけた武富士スラップ訴訟。これは何も私が「スラップ訴訟」と喧伝しているわけではありません。

 東京地裁(タイトル画像)が判決で明確に「(武富⼠と武井保雄前同社会⻑は)事実的・法律的根拠がないにもかかわらず、専ら⾃らに対する原告(寺澤有)からの批判的⾔論を抑圧する意図で、本件名誉棄損訴訟を提起したものと認めるのが相当である」と述べているのです。

 この判決の直後、私はブログ『共謀罪反対』に2回に分けて解説記事を書きました。今回、noteで再公表します(最小限の加除訂正あり)。

真実の報道に対し、名誉毀損訴訟を提起

 2007年6⽉26⽇、東京地⽅裁判所⺠事第45部(⽩⽯哲裁判⻑、吉村美夏⼦裁判官、佐野⽂規裁判官)で、筆者が消費者⾦融⼤⼿・武富⼠(東京都新宿区)と武井保雄前同社会⻑を相⼿どり、損害賠償2億2000万円と謝罪広告を請求していた訴訟の判決が⾔い渡された。

 なお、武井前会⻑は2006年8⽉10⽇に病死しているため、遺族が訴訟を引き継いでいる(記事〈武井保雄氏の最期〉参照)。

 まず、この訴訟が提起される経緯をふり返っておこう。

 2003年5⽉、筆者は『週刊プレイボーイ』(集英社)で、警察と武富⼠との癒着を追及する連載を開始した。警察から武富⼠へ犯歴などの個⼈情報が提供され、その⾒返りとして、武富⼠から警察へ個⼈の信⽤情報(消費者金融からの借り入れ状況)と⼤量のビール券が提供されていた。

『週刊プレイボーイ』の報道を受け、5⽉21⽇、参議院個⼈情報の保護に関する特別委員会で、集中審議が⾏われた。⾕垣禎⼀国家公安委員⻑(当時)が「今、調査、捜査をしているところで、仮に(警察官の)非違(違法)があれば、厳正に対処しなければならない」、⼩泉純⼀郎⾸相(同)が「(警察と武富⼠との癒着についての調査、捜査の)結果につきましては、きちんと(国会へ)報告すべきだと思っている」と答弁した。

 7⽉18⽇、警視庁は、武富⼠へ個⼈情報や捜査情報を提供し、同社から個⼈の信⽤情報やビール券を受け取っていたとして、武⽥三郎警視正(警務部付=当時。以下同)と久保⽥利⽂警視(刑事部捜査第1課課⻑代理)を警視総監訓戒(武⽥警視正は辞職)、関根正宏巡査部⻑(⾚⽻署警備課)を戒告とするなど、9名を処分した。

 ところが、武富⼠は「本件記事は、事実無根も甚だしい」と主張し、集英社と⽥中知⼆・『週刊プレイボーイ』編集⻑(当時)、筆者へ損害賠償2億円と謝罪広告を請求する訴訟を東京地裁に提起していた。

 さらに、同社ホームページで筆者を、「虚偽の情報であることを知りながら、これを悪⽤して報道した」「(記事は)当社の信⽤を傷つけることを唯⼀の目的とする風説の流布」「ブラックジャーナリスト」などと再三再四、誹謗中傷した。

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