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『月刊あれこれ』の記者クラブ特集
朝日新聞の有名記者だった本多勝一さんが2003年に創刊した『月刊あれこれ』という雑誌がありました。私の友人でジャーナリストの林克明さんも編集、発行に携わっていました。
その4号目の2003年7月号で記者クラブに関する特集が組まれています。私の友人で元日本経済新聞記者、『My News Japan』編集長の渡邉正裕クンが、「『記者クラブ』という名の奇妙な集団」と題する8ページの力作を発表しているほか、「本誌記者突撃! 閉じられたドアは開くのか?」「『記者クラブ不要』は世界の常識」などの記事が掲載されています。
私が編集部のインタビューに答えた記事も掲載されています。以下に加筆して公開しますので、興味を持たれましたら、『月刊あれこれ』の記者クラブ特集全体を読んでみてください。図書館まで行く価値は絶対にあります。
記者クラブにしか判決要旨を渡さないのは不当である
愛媛県警の警察官3人が、暴力団から提供された拳銃を、あたかも押収したかのように見せかけ、点数稼ぎしていた事件がありました。
僕は、これは事件を起こした警察官個人の問題ではなく、組織ぐるみだったのではないかという取材をしていたのです。
1996年に、この事件の判決言い渡しが松山地裁でありました。
僕は前日に松山に入り、早朝から地裁にいました。傍聴希望者が多かったので、記者席を割り当ててくれないか地裁総務課に依頼しましたが、断られました。幸いなことに約10倍の抽選に当たって傍聴することはできました。
裁判長は判決言い渡しの前に「判決要旨を希望する報道機関の方は、あとで取りに来てください」と言ったのです。
閉廷後、判決要旨を受け取りに行ったら、総務課長が「記者クラブ加盟社以外には渡せない」と言うのです。「それは差別だ」と抗議したのですが、その後、取材が入っていたので、いったんは地裁を出ました。
15時過ぎに、最高裁の広報に電話して、「判決要旨をもらうには、どうしたらいいか」ときいたのですが、「裁判長が『取りに来い』と言うなら、取りに行けばいいのではないですか」と言われました。
そこで、松山地裁の総務課長に電話しましたが、「判決要旨は渡せない」と言われました。「こちらとしては、正確な記事を書きたいだけなのだ」と訴え、1時間近く総務課長を説得しました。
その結果、総務課長は上司の了解を取りつけて、「今から取りに来れるか」ときいてきました。私は帰京の飛行機の時間を変更し、地裁へ向かいました。
ところが、いざ地裁に着くと、総務課長が「上司が翻意して、やはり渡せないことになった」と言ってきました。
これは、どう考えても不合理だと思い、1999年に国を相手に裁判を起こしました。判決要旨を記者クラブだけに渡して、それ以外のジャーナリストに交付しないのは、法の下の平等に違反し、なおかつ取材の自由を侵害するという訴えです。
1審、2審と負けたのですが、上告して、最高裁で争っています。
今後も同様の事態が発生したときは、訴訟を提起し、判決要旨がもらえるまで続けるつもりです。
※上記訴訟は記者クラブに関する憲法訴訟のさきがけとして判例集などでも取り上げられている。2019年4月に発行された拙著『裁判所が考える「報道の自由」 判例 第1次記者クラブ訴訟』が、訴訟記録に基づき、判決全文を掲載しているので、いちばん正確かつ詳細。
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