「記者クラブいらない訴訟」第7回口頭弁論 共同通信、記者会見の主催権をあいまいに

 2024年9月9日、東京地裁(衣斐瑞穂裁判長)で「記者クラブいらない訴訟」第7回口頭弁論が開かれた。

 前回の第6回口頭弁論で、原告(フリーランスの三宅勝久と寺澤有)は、以下のように書面で主張した(〈原告が「記者クラブ制度は憲法違反」との書面を提出〉の記事を参照)。

 被告らは、本件妨害行為の時点から現在まで、「鹿児島県知事の記者会見は鹿児島県政記者クラブ『青潮会』が主催している」と主張している。
 これは、「鹿児島県政記者クラブ『青潮会』に鹿児島県知事の記者会見を主催する権利(主催権)がある」と主張している意味と解される。
 しかしながら、被告らも自認するとおり、青潮会は任意団体である。任意団体には権利能力がないから(民法33条1項、34条)、青潮会に鹿児島県知事の記者会見を主催する権利がないことは自明だ。加えて、第5回口頭弁論で裁判所が整理したとおり、青潮会が記者会見を主催するという手がかりとなるような法規はない。

「原告ら準備書面(3)」より

 これに対し、被告(共同通信社、前田晋吾氏、久納宏之氏)は、今回の第7回口頭弁論で、以下のように書面で反論している(書面で、「甲○」と表記されているのは原告が提出している証拠の番号、「乙○」と表記されているのは被告が提出している証拠の番号)。

 被告らがこれまで主張、立証したとおり、本件記者会見(寺澤注:鹿児島県知事の記者会見)は、青潮会(寺澤注:鹿児島県庁の記者クラブ)が主催しているものであり、原告の主張はその前提が事実に反している。
 青潮会は、自ら主催する記者会見を円滑に進めるため「青潮会主催の記者会見に関する規約」(乙4)に基づき、本件記者会見への参加の可否を決定しているのであり、被告前田支局長及び被告久納記者が、「何らの権限なく原告らの本件記者会見への参加を妨害した」事実は存在しない。
 なお、原告らは、青潮会は任意団体であり権利能力はないから、本件記者会見を主催する権利がないと主張している。
 しかし、任意団体が知事の記者会見の主催者となり得るかは、任意団体の権利能力の有無と無関係である。
 例えば、団体のOB会が有識者を呼んで勉強会を主催する場合など、(権利能力の有無にかかわらず)任意団体が会合やイベントの主催者となり得るのであり、原告らの主張は誤りである。

「被告準備書面4」より
乙4

 この反論に対し、原告寺澤が法廷で被告に問いただした。

「被告は、『青潮会に鹿児島県知事の記者会見を主催する権利がある。主催権がある』という主張はしないということなのか」

 被告の代理人の弁護士は、こう答えた。

「主催権というものが、どういう権利かわからないが、青潮会が鹿児島県知事の記者会見を主催しているという主張は維持する」

 寺澤は納得せずに、さらに問いただした。

「取材・報道の自由というのは、すごく強い権利。それを被告は妨害したのだから、それ以上に強い権利がなければならないはず」

 被告の代理人の弁護士は無言で、かわりに、衣斐裁判長が口を開いた。

「趣旨は理解した。しかし、被告の答えとしては、今聞いたとおり」

 第7回口頭弁論では、原告2人と被告2人の尋問を行うことを前提に、10月25日までに、それぞれの陳述書(事実関係や主張をまとめた書面)を提出することとなった。

 次回の第8回口頭弁論は11月18日13時30分から東京地裁第526号法廷で開かれる。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                         


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寺澤有
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