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「記者会見開放」を決めた検察庁の腹黒い意図
映画『i新聞記者ドキュメント』の下敷きになっているのが、望月衣塑子・東京新聞記者の著書『新聞記者』(KADOKAWA)です。望月記者の半生記といえます。
望月記者は、千葉、神奈川、埼玉の各県警や東京地検の記者クラブに所属し、スクープを飛ばしてきました。しかし、『新聞記者』の記述からすると、どうしても、捜査機関との「近さ」が気になってしまいます。
たとえば、以下の記述があります。
当局からリークされ、それを記事にしたこともあるが、リークはあくまでもリーク。何らかの意図があることを見越さないといけない。
しかし、日々、他社との競争や原稿の締め切りに追われている新聞記者に、当局のリークの意図を見越す余裕があるのでしょうか。
実際、以下の記述もあります。
新入社員研修をへて配属された千葉支局時代のこと。ある事件で無実の人を容疑者として、顔写真を添えて「逮捕へ」という記事を書いてしまった。しかも、誤って報じたのが暴力団の組長だった。
情報を提供してくれた警察幹部は事情に精通していたので、「これはいける」と思い、千葉県版で掲載した。
この間、菅義偉官房長官の記者会見で果敢に質問する望月記者が称賛されています。一方、首相官邸の記者クラブの記者たちは、「質問するべきことを質問していない」と批判されています。
では、もし、望月記者が東京地検の記者クラブに所属しているとき、外部の人間が記者会見に参加し、果敢な質問をくり返したら、彼女は、どう反応したのでしょうか。
そんなことを想像しながら、以下の記事を読んでいただくと、記者クラブメディアが国民の知る権利にこたえられない原因が理解できると思います。
※本記事はパチンコ業界誌『PiDEA』(ピデア)2010年8月号の記事に加筆しました。
最高検が「記者会見開放」を通知
2010年4月22日、最高検察庁は全国の高等検察庁や地方検察庁に対し、新聞やテレビなどの「記者クラブメディア」以外の記者も会見へ参加させるよう通知した。
翌々日の『読売新聞』は、「『検察会見 フリー記者にも』 最高検通知 東京地検が事前登録募集」という見出しで、こう報道している。
最高検は全国の地検に出した22日付の通知で、参加できる記者の範囲を従来より広げた形での記者会見を開いていくよう指示し、これを受け、東京地検は23日、ホームページに、会見の趣旨について説明した文書を掲示、事前登録手続きを始めた。
参加できるのは、日本新聞協会、日本民間放送連盟に加盟している報道機関の記者のほか、日本雑誌協会や日本インターネット報道協会の加盟社の記者など。フリーの記者も十分な活動実績を持っている者は参加を認めるとしている。
しかし、我々、役所取材が長いフリーランスは、誰もが不審に思った。検察庁といえば、警察と並び、記者クラブメディアへ捜査情報をリークし、世論を誘導するのがお家芸。それが記者会見を開放し、捜査情報を平等に提供するなどということがありえるのか。
ともかく、筆者は東京地検に「事前登録」とやらをしてもらおうと考えた。
記者会見は「便宜供与」
筆者がフリーランス仲間の三宅勝久氏と東京地検を訪れたのが5月10日。2人とも登録申請書(東京地検ホームページからダウンロードし、プリントアウトしたものに記入)と自分が十分な活動実績を持っている記者であることを証明するための署名記事のコピーを持参した。
記事は、筆者が「女性記者告白! 『検事がセクハラ』証言の衝撃」という見出しのものなど、三宅氏が「東金幼女殺害事件でっち上げ疑惑」という見出しのものなど。2人とも検察庁に批判的な立場であることを明らかにした。
すると、東京地検広報担当者は、こう述べた。
「記者会見には、地検に『公平な報道』をしてくれる記者に参加してもらいたい」
さっそく、三宅氏がかみついた。
「それは問題発言だ。『公平な報道』かどうかなんて、地検が決めることではない」
しかし、広報担当者は悪びれずに続けた。
「記者会見は『便宜供与』なんですから」
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