記者クラブのフリーランスに対する悪意の数々

 2024年11月18日13時30分から東京地裁第526号法廷で、「記者クラブいらない訴訟」第8回口頭弁論が開かれる。

 これに先立ち、10月3日、原告(三宅勝久、寺澤有)は東京地裁へ「原告ら準備書面(5)」と証拠数点を提出した(準備書面とは、あらかじめ当事者の主張をまとめて提出する書面)。9月9日の第7回口頭弁論で被告(共同通信社、前田晋吾氏、久納宏之氏)が「被告準備書面4」に基づき主張したことに反論するほか、2011年11月にフリーランスの有村眞由美氏が鹿児島県と鹿児島県政記者クラブ「青潮会」に対し、フリーランスも鹿児島県知事の記者会見に参加させて質問させるよう要求して以降、どれだけ、「青潮会」がフリーランスに対し、悪意あふれる対応をくり返してきたか、実例を挙げて指摘している。1890年(明治23年)創設の記者クラブ制度がフリーランスの基本的人権や取材・報道の自由を侵害し、ひいては国民の知る権利を侵害しているという実態がよく理解できる準備書面と思う。

 以下、「原告ら準備書面(5)」を全文掲載する。「甲○」と表記されているのは原告らが提出している証拠の番号、「乙○」と表記されているのは被告らが提出している証拠の番号だ。

原告ら準備書面(5)

(1)被告は「被告準備書面4」で以下のように主張する。

〈「青潮会主催の記者会見に関する規約」(乙4)における、青潮会非加盟の記者の事前申請の要件は、申請者の参加の可否を青潮会内部で協議し、参加人数を収容できる会場の確保や会見の円滑な運営を担保するためにある。また、同規約で「過去半年以内に2回の署名記事を目安とし」た記事の提出を求めているのは、参加申請者の目的が報道のためかどうかを確認し、記者会見自体を混乱させる目的や知事に危害を加える目的をもつ活動家や記事を発表したことのないブロガーなどが記者と自称して記者会見に入り込んでくることを防止するためである〉(3ページ)

乙4

(2)しかし、「記事を発表したことのないブロガー」などというものは存在しないのである。

 1990年代後半にアメリカで生まれた「ブログ」が、2002年ごろから日本でも急速に普及した。従来のホームページとは異なり、専門的な知識や専用のソフトウェアがなくても、プロバイダーが提供するサービスなどを利用すれば、個人や団体が簡単に情報を発信できるようになったからだ。ブログで記事を公開している個人を「ブロガー」と呼ぶ。ブロガーには著名人も含まれる(甲66)。

 2008年には、福島中央テレビの男性アナウンサーがブロガーの記事を盗用して懲戒処分を受けている(甲67)。

 また、同年、『産経新聞』は、「【近ごろ都に流行るもの】ブロガー記者 影響力と速さ、本職に肉薄」と題する記事で、「1億総記者時代の到来!? ネット上にブログを開設するブロガーをマスコミ同様、いやそれ以上に扱う企業が目立ってきた」「マスコミもウカウカしていられない」と報じた(甲68)。

 さらに、2013年、『産経新聞』は、「【情報の未来】第4部 メディアの行方」という連載で以下のように報じている。

〈ブログなど個人の情報発信が集積し、実社会へ影響力を持つことでメディア化する「個人型メディア」。ヤフーは昨年9月、ヤフーニュースに専門家らによる記事を配信する「個人」というカテゴリーを作った。全国の120社から1日3500本が配信される記事と肩を並べるように、約150人が有償で執筆する。既存メディアの持続可能性が揺らぐ一方、個人の存在感は増している〉((1)「情報のプロ」独占崩壊=甲69の1)

〈田中さんは「ニューヨーク・タイムズなどの一流紙が数年前から、ブログを引用する形で記事を書き始めた。それくらいメディアとして力をつけている。新聞が現在も影響力を保っているのは政治や経済の分野くらいではないか」と話す。近年、米国ジャーナリズムの最高峰であるピュリツァー賞にハフィントン・ポストやポリティコといったブログニュースが選ばれていることは、偶然でない。ここには、ブログなどの「個人型メディア」が組織化され、強力なメディアへと成長を遂げた姿がある〉((2)「フリップボード」の衝撃=甲69の2)

 上記の各報道の時点で、既存の通信社や新聞社、テレビ局をしのぐ影響力を持つブロガーがいたことは明らかである。それから久しく経つ現在において、「記事を発表したことのないブロガー」などという存在しないものをでっち上げてまで、フリーランス(ブロガーもフリーランスに含まれる)を記者会見から排除することを正当化する被告の主張は、もはや常軌を逸している。

(3)「記事を発表したことのないブロガーなどが記者と自称して記者会見に入り込んでくる」と被告は主張する。しかし、フリーランスの記者は全員が「自称」である。「記者と自称して」は「裁判官と自称して」などとはまったく意味が異なる。

 この主張には被告のフリーランスに対する差別意識がにじみ出ている。つまり、「共同通信社の記者」なら、本当に「記事を発表したことのない」新入社員でも記者だが、「フリーランスの記者」なら、全員が「自称」であるから、「記者会見に入り込んでくる」前提で扱うというものだ。これは、「役所や会社に所属している者は無条件で一人前として扱い、『フリーランス』などと称している者は基本的に半人前として扱う」(「原告ら準備書面(4)」の「【1】本件妨害行為は憲法13条に違反すること」を参照)と同意である。

(4)2011年11月以降、フリーランスの訴外有村眞由美は鹿児島県と青潮会に対し、フリーランスが鹿児島県知事の記者会見に参加して質問できるよう要求してきた。結果として、2012年3月、青潮会は「青潮会主催の記者会見に関する規約」(乙2)を作成し、有村に通知した(甲10の「鹿児島県、記者会見からフリーランス排除を規約化か」と題する記事)。

乙2

 被告は「その際、内容については、総務省の会見規約(乙3)を参考にした」と主張する(「被告準備書面1」2ページの2)。ところが、フリーランスが鹿児島県知事の記者会見に参加するために行わなければならない事前申請で、青潮会は「各会員社の報酬等の支払い証、各会員社が発行した契約書等」の提出を要求している(乙5の1の【注意】3)。これは、総務省の記者会見の登録では要求されていない(甲24)。のみならず、フリーランスが中央省庁や地方公共団体の記者会見に参加するさい、報酬等の支払い証や契約書等の提出を要求されたなどという話は聞いたことがない。そのような要求はフリーランスのプライバシーや営業の自由、営業の秘密を侵害するものであり、とうてい認められないからである。

乙5の1

 有村は「各会員社の報酬等の支払い証、各会員社が発行した契約書等」の提出に疑問を持ちつつも、鹿児島県知事の記者会見に参加することを優先し、2012年4月4日、2011年報酬の支払い調書のコピーを青潮会へ提出した(甲10の「フリーランスの記者会見参加について、記者クラブととことん話した」と題する記事)。

 しかし、翌5日13時すぎ、青潮会幹事社の西日本新聞社の湯之前八洲(ゆのまえ・やしま)記者から有村に電話があり、「提出された署名記事のコピーですが、これは本当に『ライブドアニュース』なのかという質問が昨夜ありました」と尋ねられた。有村は、真正に『インシデンツ』から『ライブドアニュース』に転載された記事である旨、伝えた。当時、原告寺澤有が運営していたニュースサイト『インシデンツ』の記事は大手ニュースサイト『ライブドアニュース』に転載されており、有村が『インシデンツ』に寄稿した署名記事も多数が『ライブドアニュース』に転載されていた。ライブドアは日本インターネット報道協会法人会員社だったので、有村は「青潮会主催の記者会見に関する規約」(乙2)で規定された鹿児島県知事の記者会見の参加要件を優に満たしていた。

 さらに、同日17時すぎ、湯之前記者から有村に2度目の電話があった。湯之前記者と有村との会話は以下のようなものだった。

湯之前記者 16時から青潮会では総会を開き、1時間以上議論していますが、提出されている書類が公的なものではないということが問題になっています。源泉徴収票は、通常は発行元の印鑑が押してあるはずだということで。

有村 えっ。ちょっと待ってください。そんな理由ですか。びっくりしちゃっているのですが。以前に勤めていた会社からもらった源泉徴収票にも、印鑑はありませんでした。

湯之前記者 仮に偽造だとしても判別できないのです。インシデンツで発行したものと考えてよいのか、青潮会で判断できないという話になっています。インシデンツの社員証や契約書をお持ちですか。

有村 社員ではないので、社員証などありません。印をついた契約書もありません。信頼できないのであれば、インシデンツの代表に確認をとればよい話ではないですか。それに署名記事ではなぜ足りないのですか。記事を書いていることはわかりますよね。

湯之前記者 代わりになる書類はないですか。

有村 今、出先ですし、印をついた契約書も社員証もありません。変な話だと思いませんか。

湯之前記者 どのへんがですか。

有村 出せと言われた書類を出して受領されたのに、今ごろになって書類不備だから審査しないというのは、まさかのフェイントです。

湯之前記者 こちらとしてもフェイントです。インシデンツとの契約がわかればよかったのです。端的に言えば印鑑ですが、提出された源泉徴収票が公的なものだと担保するものがないので、審査できないということです。

有村 源泉徴収票は、偽造ではありません。それは、公的な機関である税務署で、問題なく受け取られるものです。要求された書類を提出しているので、書類不備はないはずです。審査だけでもできませんか。

湯之前記者 税務署ではそうなのかもしれないが、青潮会としては、源泉徴収票と認めることはできません。書類不備なのです。ルールを決めた以上は、ルールに合致するものでなければなりません。

有村 そのルールどおりのものを出しているのですが、審査しないということですか。

湯之前記者 正式な書類かもしれないが、提出された源泉徴収票では判断できないということです。

 長年、原告はフリーランスとして税務署で確定申告を行い、そのさい、源泉徴収票を提出してきた。しかし、日本新聞協会会員社や日本民間放送連盟会員社、日本雑誌協会会員社が発行した源泉徴収票も含め、押印してあるものなど見たことがない。

 結局、青潮会は、書類不備を理由に、翌6日の伊藤祐一郎鹿児島県知事の記者会見に有村が参加することを認めなかったのである(甲10の「記者クラブが私の記者会見参加を拒否したあまりにもアホらしい理由」と題する記事)。

 4月11日、湯之前記者から有村に電話があった。「次回の伊藤知事の記者会見が20日に予定されている。源泉徴収票に加え、税務署に所得税を申告した書類(税務署の印章がある控え)を提出すれば、改めて記者会見参加を検討する」というものだった。

 有村は次のように考えた。

〈源泉徴収票の提出でさえ、プライバシーの侵害の度合いが高く、私はやむをえず応じているのに、そのうえ、所得税の申告書類の提出まで求められるとは、青潮会の意図をいぶかしく思わないほうが不思議だ。私が記者として活動していることは、いくつも署名記事を提出しているのだから、明らかなのである。一方、昨年11月に青潮会に記者会見参加を申し込んでから、様々な交渉を経て、ようやく、ここまでこぎ着けたという思いもある〉

 そこで、有村は湯之前記者に対し、同記者ともう1社の幹事社の日本放送協会(NHK)鹿児島放送局の木下隆児記者に、所得税の申告書類を見せることで妥協できないかと提案した。湯之前記者は「そのような方法でかまわないか、青潮会加盟社で話し合う」と答えた(甲10の「記者会見参加に所得税の申告書類を要求する記者クラブ」と題する記事)。

 4月17日、有村は青潮会幹事社の記者に所得税の申告書類を閲覧させた(甲70)

 翌18日、湯之前記者から有村に電話があり、「20日に予定されている伊藤知事の記者会見にオブザーバー(質問ができない者)として参加を認める」と伝えられた(甲10の「鹿児島県政記者クラブ、フリーランスの記者会見参加を認めるも、なお火種」と題する記事)。

 こうして、4月20日、有村は伊藤知事の記者会見にオブザーバー(質問ができない者)として参加することができた(甲10の「記者会見初参加で見た伊藤祐一郎鹿児島県知事の狡猾さ」と題する記事)。

 上記の経緯にかんがみると、青潮会は、有村が伊藤知事の記者会見に参加するための事前申請を断念するよう、源泉徴収票、さらには所得税の申告書類の提出を要求したものと推測される。社会通念上、そのような秘密性が高い文書は公的機関や金融機関ぐらいへしか提出しないからだ。確認しておくが、青潮会は、義務も権利も有しない任意団体である。

(5)2012年4月4日、有村は、「鹿児島県知事定例記者会見事前申請書」(乙5の1)と「鹿児島県政記者クラブ(青潮会) 鹿児島県知事定例記者会見遵守事項」(乙5の2)、運転免許証のコピー、署名記事のコピー、2011年報酬の支払い調書のコピーを青潮会へ提出した。そのさい、有村が「提出書類として、中央大手メディアとの契約書や報酬の支払い調書を求めているのはなぜか」と質問すると、青潮会加盟社の記者は「責任の所在という観点からだ。報酬をもらうというのも責任の1つ。業として記事を書くということをどうとらえるか、という話し合いもあった。報酬がなくても記者だろうという議論もあったが、この点は各々の持つジャーナリズムについての考え方の違いで、意見集約はできなかった」と答えた(甲10の「フリーランスの記者会見参加について、記者クラブととことん話した」と題する記事)。

乙5の2

 しかし、ジャーナリズムを行っている人を「記者」や「ジャーナリスト」と呼ぶのであり、報酬の有無は関係ない。

 前述のように、2008年、福島中央テレビの男性アナウンサーがブロガーの記事を盗用して懲戒処分を受けた。このブロガーは、影響力が大きい上位のブロガーをネット上の投票で選ぶ「アルファブロガー・アワード」に選ばれていたが、広告収入は取っていなかった(甲67)。

 元共同通信記者で早稲田大学教授(ジャーナリズム論)の澤康臣氏が訳した『ジャーナリストの条件』(甲71)には、ジャーナリストの条件に報酬の有無は含まれない旨の記述が以下のように頻出する。

〈私たちがこの本で説明するジャーナリズムの条件とは、ニュースを出す人々に社会が何を求めるかということにほかならない。大手の会社で働く人々も、個人発信のニュースレターを空き時間に作って、個人の発信者向けに設計された(米国のメールマガジン配信サービスの)サブスタックで配信する人々も、同じだ〉(8ページ)

〈この版で使っている言葉の中には、以前の版とは違う含意を持つようになったものもある。この版の「まえがき」で述べたように、かつてはジャーナリストという言葉は、C・W・アンダーソンやクレイ・シャーキー、エミリー・ベルが「産業ジャーナリズム」と呼んだ職業に従事し、組織に所属している者たちを指したが、今この言葉には、自分はニュースを制作していると考え、それを倫理的に、責任を持って行おうとする人なら誰でも含まれる。(中略)この本では、どういう人がジャーナリストでどういう人は違うかを(職業の)問題として捉えるべきではないと常に主張してきた。問題となるのは、なされる仕事が、私たちがジャーナリズムと呼ぶものの特質に見合っているかどうかだ〉(29~30ページ)

〈テクノロジーによって、メディアは無数の新たな声に開かれたものとなった。フェイスブックやツイッター上の全員が発信者だ。そして商業メディアの報道部門が縮小する中、シンクタンク、企業、政治活動家グループ、非営利組織など、社会に明確な課題を持つあらゆる団体もまたニュース組織となり、彼らに関係する問題を伝える記事を生み出すようになった――時には、彼らが感じる商業メディアの歪みや浅さその他の限界を取り上げ、ただす視点を伴っている。デジタル思想家たちが指摘したように、商業メディアでない私たちもまた報道ができるのだ〉(252ページ)

〈誰がジャーナリストで誰はジャーナリストではないと問うことが近年流行っている。私たちは、これは間違った質問だと考える。問うべき質問は、この人はジャーナリズムを行っているか否かだ。(中略)言論の自由も報道の自由も全ての人に備わっている。しかしコミュニケーションは何でもジャーナリズムというわけではない。誰もがジャーナリストになり得る。誰もがジャーナリストであるわけではない。そこを分かつのは、その人が報道記者証を持っているか、それとも読者・視聴者かではない。(中略)ITコンサルタントのソハイブ・アタルのことを考えてみよう。オサマ・ビンラディンが潜んでいた邸宅などの敷地を米軍が攻撃した時、たまたまその地域、パキスタンのアボタバードに住んでいた人だ。二〇一一年五月のその日、アタルのツイートは見慣れないヘリコプターの目撃を記し、爆発音を指摘し、そしてタリバンによるいつもの活動を上回る軍事行動のようにみえると推測し、オサマ・ビンラディンを殺害した攻撃についての最初の報道として知られるものとなった〉(261~262ページ)

 青潮会の内部で「報酬がなくても記者だろうという議論もあった」(前出)にもかかわらず、それを突き詰めず、「各々の持つジャーナリズムについての考え方の違いで、意見集約はできなかった」(同)で終わらせたのは、各加盟社に「中央大手メディアとの契約書や報酬の支払い調書の提出は、フリーランスが鹿児島知事の記者会見に参加するための事前申請を断念する要因となる」という共通認識があったからだと推測される。

(6)2020年7月28日、鹿児島県知事が公人の義務として開く記者会見に、原告らがフリーランスの権利として参加しようとしたところ、被告らが威力をもって妨害した(以下、本件妨害行為)。そのさなか、原告寺澤有、同三宅勝久と被告久納宏之ら青潮会加盟社の記者との間で、以下のやりとりがあった(甲1「カメラを止めるな! 7月28日(前編)」、2:18:48~)

訴外久保田泰司(日本経済新聞社鹿児島支局長) いや、あの、だから、(塩田康一鹿児島県知事の就任記者会見への参加を寺澤や三宅が青潮会へ)事前に申し込む機会っていうのは、明らかに、ボクは、あったと思ってるんですよ。

寺澤 いや、ちょっと、それ、それ、それ、それ……。

久保田 それをやりたくないから、直接、来た……。

寺澤 いや、いや、いや、必ずやりたくないって言ってるわけではなくって、ただ、あまりにもね、私、古い(青潮会主催の記者会見に関する)規約(乙2)しか(見たこと)ないけど、まあ、あんまり(新しい規約(乙4)も)変わらないっていう……。

三宅 (規約を)知らなかった。

寺澤 話を、(フリーランスの訴外)畠山(理仁)さんが(畠山さんから)、チラッと聞いたんでね。まあ、古いの(古い規約)、私、前提……。

(畠山がなにごとか発言)

寺澤 (新しい規約は古い規約と比べて)変わってる!?

(畠山がなにごとか発言)

寺澤 変わってる!?

(畠山がなにごとか発言)

寺澤 あの、参加要件?

畠山 参加要件は変わってなくて……。

寺澤 参加要件は変わってないでしょ。いや、だから、そのね、10年前の……。

久保田 フリーランスの質問権も認めてるし……。

寺澤 あっ、ですからね、ですからね、たとえば、もう……。東京で、そんなこと(青潮会が規約で規定する参加要件のようなこと)、もうやってないんだから、やめましょうよって話なんですよ、そもそも。あと、それと……。

訴外男性記者A 今回は、そもそも、フリーランスの方々が質問ができないっていう条件がある中で、その、みなさまからご指摘をいただいて、ボクらも、青潮会、みんな集まって、話し合った結果、質問は、やっぱり、していただくことにしようと……。

寺澤 だったら、べつに、じゃあ、その、参加要件(を変えるの)なんか、もっと簡単じゃないすか。

訴外男性記者B 「だったら、べつに」とは、また、それは別ですよ。だって。秩序が。

寺澤 じゃ、なんで、この……。えっ?

男性記者B 秩序が。

寺澤 ちょっと、(議論に)参加されていいですよ、べつに。あの、さっきから、なんかボソボソ言ってるから……。さっき……。いや、「(署名記事を青潮会へ)出して(提出して)」って、それは自分たちで調べなさいよって話でしょう。だって……。

男性記者B それはスジが違うな。

寺澤 いや、だって、私だって調べましたよ、久納さん、あなたの署名記事(甲23)を。調べましたよ。調べましたよ。

男性記者A こっちも調べてはいますけど、(署名記事を青潮会へ)出すのは、そちらですよね。

寺澤 だって、そんなの、そっちは、知りたいのは、そっちなんだから。

三宅 これ、あの、新しいヤツ(自著)。

(三宅は2020年3月に発売された自著『「大東建託」商法の研究』を差し出す)

久保田 三宅さんね、オレ、買って、持ってる。

寺澤 実は、三宅さんの読者だった(笑)。

三宅 持ってるんだったらさあ……。

久保田 三宅さんが、(鹿児島県知事の記者会見に参加するための事前申請の)手続きやってくれたらうれしいなっていうことだけ。

三宅 知らなかったんだもん、オレ。

久納 次回から……。

三宅 (就任記者会見に)次回はないでしょう。

寺澤 まあ、三宅さんは知らなかった。だって、ボク、べつに、特に、三宅さんに教えてないから。この事前(申請)の、あの、手続きで(もめている)って。きのう、(三宅さんと)会って、あの、こういう、事前(申請の)手続きの話が、今、出てるから、まあ、もめるか、あした、もめるかも……。

男性記者A どうして、その、(三宅は)鹿児島に来ようと思ったんですか。

寺澤 ああ、いや、だから、それは、ボクが(三宅に)声をかけました。

三宅 我々の同業者(フリーランス)がいじめられると聞けば、……わけですよ、私も。

男性記者A 「いじめられる」って、どういう……。

三宅 要するに、記者会見、出れないと。

男性記者A どういうこと(経緯)で、(それを)知ったんですか。

寺澤 ボクから(三宅に)連絡しました、それは。

三宅 寺澤さんから、とにかく、その、せいりゅう……、あの、ごめん、ごめんね。青潮会からね。あの……。ごめん。わざとじゃないからね。まあ、気を悪くしないでくださいね。その、青潮会から規約を送ってくるから、ね、というふうに、こう、聞いて、待ってたわけ。

寺澤 あっ、そうそう。(青潮会から寺澤へ規約が)送られてきたら、三宅さんにも送りますよ、てか、三宅さんのメールアドレスも直接(フリーランスの訴外有村眞由美を通じて青潮会へ)送ったんじゃなかったっけ。

三宅 そうそう。それで、待ってたけど、来なかったわけ。

久納 それは違いますよ。

三宅 (青潮会が規約を三宅へ)送った? オレのメールアドレス、知ってる?

久納 送ったことではなくて。それは、私は、(鹿児島県知事の記者会見への)参加を、あの、(事前)申請いた、申請というか、(青潮会に)コンタクトいただいた方に、個別にお送りしてるわけで。

三宅 ちょっと待って。私、寺澤さんから「三宅さんにも、この規約を送るから」っていうふうに、PDF(ファイル)で送るからっていうふうにメールを受けて、待ってたんだよ。

寺澤 うん、うん、うん。ボクだって、待ってたんだよ。

男性記者A 誰に言ったんですか。

寺澤 えっとー、えーと、有村さん。ボクは、メールアドレス、有村さんに教えたでしょ、ボクと(三宅さんの)。

久納 有村さんからメッセージは来てましたけど、それは、べつに……。

有村 (久納が)「(規約を)BCCで一括送信するので」っていうことだったので、「(有村の)ほかにも、(規約を送って)ほしい人がいれば」(ということだったので)。

久納 それは参加申請いただいた方に一括申請してるんです。あの、一斉送信してるんです。

有村 それ、書いてあったら、やんなかった(久納へ寺澤と三宅のメールアドレスを送らなかった)んですけど、「(規約を送って)ほしい、(規約に)関心のある人には、一括送信する」って……。

久納 「関心のある人に」って書いてないですよ。

寺澤 いや、「関心のある人」、えっ、いや、「ほかの方々にも」って書いてありましたよ。私、その(久納の)メッセージ自体(有村から転送して)もらってるから。

久納 それは勝手な解釈です。

寺澤 いや、いや、いや。そちら、残ってません? メッセージ。久納さんね。

男性記者A 結局、有村さん、送ってないってことですか。

寺澤 いや、違う、違う、違う、違う。

久納 有村さんには、お送りしましたよ。

有村 私は送られてきて……。

寺澤 いつ来たの?

有村 きのうの夜に。(同夜、有村と畠山、三宅、寺澤は鹿児島市中央公民館で「鹿児島県知事の記者会見を考える市民集会」(甲22の1~2、乙8)を主催していた)

寺澤 きのうの夜でしょ。だから、わかんないもん。だって。

三宅 きのうの夜に来たら、(本日の記者会見に)間に合わないじゃないですか。

久納 きのうの夜、べつに……。

三宅 オレ、見てないし、だいたい、それ。

久納 (三宅や寺澤は青潮会と)コンタクトもとろうとしないじゃないですか。

三宅 知らないし、あなた方のこと。初対面ですよ。あなた、まだ名刺もらってないですけどね。

寺澤 だから、じゃ、今、こうやって、べつに、今、ここで手続きとっちゃ、なんかマズいの? いや、逆に、今、ここで、こうやって、三宅さんが(自著を)示して……。

男性記者A 今回、新たなルールを作って、しっかりしたルールで運営していこうというふうに、ボクらも決めているので、今回、その、事前申請いただけなかった方は……。

寺澤 いや、だって、だって、それは……。

三宅 鹿児島県……。

寺澤 1週間前に(事前)申請とかね、そんなね、もう、あの、今、どこでもやってないようなこと、やめてくださいよ。そんなの。

久納 それは、多少、その、融通をきかせますよって、あの、有村さんには申し上げたんですよ。

寺澤 多少とか、今、べつに、今すぐ、だって、融通きかせりゃいいでしょ。ヤル気があれば。

有村 だって、(青潮会は有村が)報道してる人ってわかっていて、署名記事もオッケーだったから、今だって……。

三宅 (久保田は)本(自著)まで(買ってくれて)、私の愛読者でいらっしゃる……。

久保田 だから、なんで……。

三宅 (自分たちが記者会見に参加できるよう)プッシュしてくださいよ。

久保田 なんで、(事前申請の)手続き、ちゃんとやってもらえないの。

三宅 オレ、(手続きを知らないのに)どうやって、やればいいの。

久保田 あのね、仲よくしたいんですよ。

三宅 青潮会か、せいりゅう会かわからないような男(三宅)に(どうやって手続きをやれというのか)。

久保田 いや、いや。

三宅 「あなた、これ、青潮会なんだから」(と言われるような男に)。

久保田 いや、せいりゅう会か青潮会かぐらいのもんなんですよ。しょせん、青潮会は。

三宅 尊重します。排他的任意団体……。

久保田 排他的じゃなくて。あのね、いや、そういう、ね、ジャーナリストなんだったら、ふつうに、こういうルールなんで、じゃあ、「オマエらな、若造に、オレ、(事前申請の書類を)出すの、めんどくせえけど、しょうがねえな」ってやってくれたら……。

三宅 (事前に)聞いたら、それは、やりますよ。

久保田 「どうぞ」っていう話になると思うんですよ。

三宅 知らないんだから、それは、もう。ここで、初めて知って……。

久納 我々も、(三宅や寺澤が)参加しようとしていることも知らないわけですから。

男性記者A いつ、お仲間(同業者=フリーランス)がいじめられてるっていうのを知ったんですか。

三宅 寺澤さんから……。

寺澤 三宅さんに、だから、電話したときは、先週ぐらいじゃない。

三宅 先週ぐらいかな。

男性記者A その時点で、いろいろ調べれば、こういう状況が起きてるってわかるわけですよね。

三宅 「調べれば」というか、いや、う~ん。

久保田 今日、(塩田知事の就任記者)会見があるってご存じであれば、この会見に主席するには、どうした、どうすればいいかって、少なくとも、ね、(鹿児島)県に問い合わせることもできるわけですよね。そうすっと、それ、「青潮会に言ってください」って話にもなると思うんですよ。

寺澤 いや、いや、いや、だって、そんなのは、だって、我々なんか、どこの(記者)会見行くんだって、いきなり行って参加してるから、そんな、むしろ、こんなこと(事前申請)やらせるのが、今、本当、ないわけで、それはおかしいわけですよ。

男性記者A だから、その状況を知ってるわけですよね?

寺澤 私は知ってましたよ。私は知ってましたけど、べつに、三宅さん(には)、そんな話は本当にしてません。で、きのう、(三宅さんと)会ったときに、なんか、今、(塩田知事の就任記者会見)参加のね、なんか、あの……。

三宅 私は、(塩田知事の就任記者会見に参加するために)手続きがいるんだ、ね、手続きはしてくださいっていうことは知らなかった。

寺澤 まあ、それは、そうでしょ。

男性記者A 手続きがいることを、いつ知ったんですか。

寺澤 だから、それは、だから……。

三宅 今。今、話を聞いて。

久保田 おふたりで違いますよね。

寺澤 いや、ボクは、だから、(事前申請の手続きの存在自体は)知ってますよ。ボクは、だから、(青潮会と有村が)もめてること知ってますから。

久保田 そうですよね。

寺澤 三宅さんは、だけど、ボクが、あの、「(鹿児島に)来てください」っていって伝えて、(三宅が)「わかりました。今、岡山の実家のほうにいますから」ってことで、岡山から来てるから、そりゃ、本当に、三宅さん、(事前申請の手続きの存在自体を)知らないですよ。きのう、ボクに言われるまで、この、事前(申請の)手続きがあって、で、こういうことでね、(塩田知事の就任記者会見に)入れないっていう話は、きのう、ボクが、してますから。

三宅 本当、知らなかった。

寺澤 それは本当です。そこは、三宅さん、言ってるとおりです。

 以上のやりとりから、本件妨害行為の時点で、原告寺澤も同三宅も、2020年7月21日に改定された「青潮会主催の記者会見に関する規約」(乙4)を知らなかったのは明らかである。しかも、その原因は、被告久納が、訴外有村から寺澤と三宅のメールアドレスを提供され、「新しい規約を送ってほしい」と依頼されていたにもかかわらず、あえて送らなかったからだ。

(7)被告共同通信社が加盟する青潮会は、2011年11月に訴外有村眞由美から同人を鹿児島県知事の記者会見に参加させて質問させるよう要求されて以降、フリーランスの基本的人権と取材・報道の自由を蹂躙し続けてきた。そのあげく、2020年7月28日、被告前田晋吾、同久納宏之ら青潮会加盟社の記者が本件妨害行為に及んだのである。しかも、その後、被告らに反省の様子は見られず、原告が本訴訟を提起したあとも、不可解かつ不誠実な弁明に終始している。被告共同通信社が「日本の代表的なジャーナリズム組織としての責務を自覚し」(甲4、2ページ)ているとは、とうていいえない。

 前出の『ジャーナリストの条件』(甲71)の表紙に、「ジャーナリズムと民主主義は『ともに栄え、ともに滅びる』」と記載されている。この言葉をかみしめて、裁判所は判断を示すべきだ。

以上

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寺澤有
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