保坂展人世田谷区長の記者会見でフリーランスは質問できるのか(3)
2022年10月24日。
14時から保坂展人世田谷区長の記者会見が開かれる。その30分前に世田谷区広報広聴課の大道力(おおみち・ちから)氏を訪ねる約束となっている。
従前、大道氏は、フリーランスが保坂区長の記者会見に参加できない理由として、「スペースに限りがある」とくり返してきた。しかし、これは、役所がフリーランスの記者会見参加を拒否するときの常套句で、ウソであることがほとんどだ。そもそも、「スペースに限りがある」としても、フリーランスのみを排除するのは明白な差別であるし、「取材・報道の自由」の侵害である。
私は、大道氏を訪ねる前に、「スペースに限りがある」というウソを確認するため、保坂区長の記者会見の会場を見ようと思った。そこで、大道氏との約束より15分早く、世田谷区役所に入った。
広報広聴課員を尾行
広報広聴課がある3階へ行き、案内板を見た。
どうも、この階に記者会見の会場はなさそうである。しかし、インフォメーションなどで、「保坂区長の記者会見の会場は、どこですか」と尋ねるわけにはいかない。そんなことをすれば、広報広聴課へ連絡され、こちらのもくろみはパーになる。
私は広報広聴課から少し離れたところで様子を見ることにした。
13時29分、大道氏との約束の1分前。私がやむをえず、広報広聴課へ歩き出すと、同課から男性職員が出てきた。大量の文書を抱えながら。
「記者会見で配布する文書に違いない」と私は確信し、男性職員を尾行した。
「スペースに限りがある」はウソ
男性職員は階段を上がり、5階へ行った。続いて、私も5階へ上がったが、男性職員の姿は見えなくなっていた。しかし、職員数人が廊下で待機している部屋があり、そこが記者会見の会場に違いなかった。
私が部屋に近づくと、廊下で待機していた広報広聴課の岩間茉衣(いわま・まい)氏が「おそれいります」と通せんぼうしてきた。ただし、部屋のドアはあいており、廊下からでも、記者が20~30人、着席できるスペースがあることが確認できた。私は証拠を残すため、スマホで動画を撮影しはじめた。
「広報広聴課にご案内いたします」と言う岩間氏に先導され、私は同課へ向かった。
「取材は妨げていない」と強弁
広報広聴課の窓口の椅子に座っていると、大道氏が現れた。名刺交換のあと、以下のようなやりとりがあった(敬称略)。
寺澤 先に(記者会見の)会場も見てきましたけど、だいぶスペース的には余裕はあったようですけど。
大道 余裕はないんですけど。
寺澤 とにかく、今日は会見に出させてもらいますけど。
大道 区の見解として、記者会見は YouTube で公開している。その内容について取材したいということであれば、随時、受けつけている。(寺澤が)記者会見場にいなくても、(寺澤の)取材は妨げていない。
寺澤 記者会見に参加するのを妨げているんだから、それはダメだと思います。
大道 寺澤さんが「記者会見に参加しなければ、取材ができない」と言っているところ(理由)が具体的に何かうかがいたい。
寺澤 それは当たり前の話。
大道 記者が記者会見に出るのは取材が目的。記者会見に出るのが目的ではない。
寺澤 記者会見で取材するのが目的。寝ごとを言わないでください。
大道 記者会見は区民に向けた情報発信です。
寺澤 だから、記者を排除するというのは、どういうことですか。
大道 排除された具体的な不利益を教えていただけますか。
寺澤 不利益を被っているでしょう、今。ほかの記者は(記者会見が始まる)14時に来るわけでしょう。私は30分以上前に来ています。あなたが(寺澤の記者会見参加を)妨害しなければ、10分前なりに来ればいい話を。
大道 それは認識が異なっていると思います。私は記者会見のルール(フリーランスは参加できない)をお伝えしたうえで、それでも寺澤さんがいらっしゃった。
寺澤 寝ごとを言わないでください。私は、これから(記者会見に)参加します。あなたは実力で排除するしかないんです。わかっていますか。
大道 現状のルール……。
寺澤 ルールとか関係ない。私は、これから(「取材・報道の自由」という)権利を行使します。あなたは妨害すればいい。そのあと、裁判で決着をつけましょう。
大道 権利というのは、具体的に……。
寺澤 説明しません。あなたが勉強してください。
※本記事の寺澤と岩間氏、大道氏とのやりとりの詳細は、以下の動画で視聴できる。
保坂展人世田谷区長の定例記者会見からフリーランスが排除されるまでの生映像(1)
https://youtu.be/kzYR3Gp4Bv4
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