記者クラブ批判でネットが炎上し、しかたなく規約を改正

 2024年11月18日に東京地裁(衣斐瑞穂裁判長)で開かれた「記者クラブいらない訴訟」第8回口頭弁論。私は、「陳述書(前編)」「陳述書(中編)」「陳述書(後編1)」「陳述書(後編2)」「陳述書(後編3)」の5通を提出している。そのうちの「陳述書(後編3)」(証拠の番号は「甲80の1」。「甲」は原告が提出した証拠。「乙」は被告が提出した証拠)の全文を公開する。

陳 述 書(後編3)

2024年11月18日

原告 寺澤有(1967年2月9日生)

【1】

 2020年7月14日16時すぎ、私はフリーランスの訴外畠山理仁さんへメッセージを送り、同月28日の塩田康一鹿児島県知事の就任記者会見に参加して質問しないかと誘いました。すぐに畠山さんから返信があり、「そうですね。行きましょう」とのことでした。

 同日21時すぎ、フリーランスの訴外有村眞由美さんから青潮会幹事社の被告共同通信社の被告久納宏之氏と電話で話したとして、その内容がメッセンジャーで送られてきました。久納氏は「(鹿児島県知事の記者会見にフリーランスは)オブザーバー参加という規約があると思うので、基本的にはそれに則ることになる」と説明し、有村さんが「青潮会からは、本当は(フリーランスの)質問(は)当然だと思うが(鹿児島県の意向で)禁止せざるをえない。(フリーランスが質問できるよう鹿児島県に)働きかけていく、という話だった(甲10)」と問いかけると、久納氏は「4年前(三反園訓知事の就任記者会見)、8年前(伊藤祐一郎知事の再任記者会見)の当時の者に確認したうえで判断する」と答えたとのことです。私は有村さんへ「まだ、こんなこと言っているのかと衝撃」と返信しました。

 同日22時すぎ、畠山さんから「(フリーランスの訴外)木野龍逸さんも(塩田知事の就任記者会見へ)行くって言っています」とメッセージが届きました。そこで、私は上記の有村さんのメッセージを畠山さんへ転送しました。畠山さんは「明日私も(青潮会へ)電話してみます」と返信してきました。

【2】

 7月15日早朝、私は27日から29日までの2泊3日で鹿児島を訪れるための飛行機とホテルを予約しました。

 同日19時42分、有村さんは以下の文章をTwitter(現X。以下、Twitter)へ投稿しました。

〈鹿児島県政記者クラブ(青潮会)幹事社の共同通信から電話がありました。塩田康一新知事の就任記者会見で、フリーランスはオブザーバー参加(質問禁止)とのこと。理由は、青潮会の規約上、フリーランスは質問禁止で、それは新知事の意向とは無関係ということです。もちろん納得していません〉(甲80の2)

 なお、19時7分には、畠山さんから私に、有村さんと同様の電話があったとのメッセージが届いています。

 Twitterなどネット上で「規約を変えればいいだけ」などと青潮会を批判する投稿がドンドン増えていきました(甲80の3)

【3】

 7月16日、私は有村さんと畠山さんに、「せっかく鹿児島まで行くので、27日の夜に『鹿児島県知事の記者会見を考える』という市民集会を開きませんか」と提案しました。2人とも快諾してくれ、有村さんが鹿児島中央公民館の会議室を予約してくれました。

【4】

「青潮会主催の記者会見に関する規約」(乙2)には、以下の文言があります。

〈青潮会が主催する記者会見について、青潮会非加盟の記者であっても、次の1~8に該当し、青潮会幹事社を通して事前申請を行い、参加が認められた者は、オブザーバーとして参加できる。ただしこの取り扱いは、2012年3月から1年間、トライアル(試用期間)で実施し、期間中および期間終了後に見直しを行う。本施行および内容については、トライアル終了後にクラブ総会を開き、決定する。質問権を持った会見参加については、県と協議を続け、合意が得られた段階で規約を見直す〉

乙2

 7月17日、畠山さんは鹿児島県広報課へ電話し、フリーランスの質問権を持った会見参加に関する鹿児島県と青潮会との協議について問い合わせました。広報課は「2018年以前は確認できなかったが、少なくとも2018年以降は1度も行われていない」「青潮会から申し入れがあれば協議の場を設ける」と回答しました。

 広報課の回答は畠山さんのFacebookで公開されました。そのさい、畠山さんは「現在、フリーランス記者の質問権を認めるかどうかの問題で、最大にして唯一の障壁が記者クラブである。同じ報道を生業とする『記者クラブ』だけが反対している。極めて前時代的であり、異常である。青潮会は直ちに県側に『協議』を申し入れるべきではないか」と青潮会を批判する意見を述べています(甲80の4)

【5】

 7月19日、私はフリーランスの原告三宅勝久さんへ、「28日(火)午前中に塩田康一鹿児島県知事の就任記者会見が開かれます。ところが、記者会見を主催する『青潮会』(記者クラブ)はフリーランスの参加を制限、質問を禁止するとしています。これは大問題です」などとして、塩田知事の就任記者会見と前日の27日の夜に開かれる市民集会「鹿児島県知事の記者会見を考える」に参加してくれるよう依頼するメールを送りました。

 同日中に三宅さんから「おもしろいですね。行きます。記者クラブメディアとそれを利用して世をあざむいてきた権力構造の落日の象徴のような出来事です」と返信が届きました。

【6】

 青潮会が塩田知事の就任記者会見でフリーランスの質問を禁止しようとしていることについて、有村さんや畠山さんはTwitterやFacebookで批判し続けました(甲59の1~8、甲60の1~25)。これらの投稿は多数の人たちにより拡散されました(甲80の5)。ネットでは、有村さんや畠山さんに同調し、青潮会を批判する投稿があふれ、「炎上」と呼ばれる状態となりました。批判の中には、朝日新聞社サンフランシスコ支局長(当時)の尾形聡彦氏、新聞記者の湊日和(ペンネーム)氏、NHK記者の籏智広太氏など、青潮会の「身内」といえる人たちからのものも多くありました(甲61甲62の1~4、甲63の1~2)。

 その結果、青潮会は批判に抗しきれず、7月21日、急きょ総会を開き、「青潮会主催の記者会見に関する規約」を改正し、フリーランスの質問を認めることとしたわけです。

【7】

 その後の事実関係については、「鹿児島県知事の記者会見を考える市民集会」の動画(甲22の1~2)で、有村さんや畠山さん、三宅さん、私が話しているとおりであり、「カメラを止めるな! 7月28日(前編)(中編)(後編)」(甲1)に記録されている映像のとおりです。

以上

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寺澤有
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