「拝啓 20代のわたしへ」#06砂子智宏
拝啓 20代のわたしへ
就職したり、結婚したり、転職したり。
20代は人生の中でも激しく動き、楽しいことも多い反面、悩むことも多くあります。
そんな20代の方へ向けて自身の経験を語ってもらう、「拝啓 20代のわたしへ」。
第六回は、スピンスレッド株式会社の代表取締役、書道家として活躍する砂子 智宏さん。
Twitterでも「Webサイトと書を繋げ価値あるサイトをもっと広げたい」と考え、発信をされています。
そんな砂子さんはどのような20代を送ってきたのでしょうか。
それでは砂子さん、よろしくお願いいたします!!
▼孤立した野球部主将時代。後輩の一言がもたらしたターニングポイント。
ぼくは小学校1年生から大学を卒業するまで、硬式野球をやっていました。
ここでの経験が、ぼくの人生にとても大きな影響を与えてくれたので、まずはそのお話から始めたいと思います。
ぼくの人生において、はじめてのターニングポイントになったのが、大学3年生で野球部の主将になったこと。
でも成功体験ではありません。
主将は本来「チームをまとめる人間」ですが、ぼくにはそれができなかった。
当時のぼくは、「後輩は先輩の言うことを聞いて当たり前」と考えていて、相手の気持ちを考えたり、尊厳を守ることができていませんでした。
結果、人が寄り付かなくなり、孤立してしまったと感じていました。
この頃はほんとうに苦しくて、毎日逃げたいと考えていたし、とてもつらかった。
でも毎日を必死で過ごすことで、首の皮一枚つながった状態でなんとか続けていました。
そんなぼくに転機が。
それは、当時臨時コーチとして来てくださっていた方の存在です。
コーチというと選手より遅く来るのは当たり前というイメージでしたが、その方はぼくたち選手と同じ時間に来て、みんなに声をかける。
どんな状態なのかを聞いてまわり、様子を見る。
チームのみんながコーチを信頼し、コーチがいるときには雰囲気がすごく良くなることをぼく自身肌で感じていました。
主将としてチームをまとめるにはどうすればよいかを見失い、深い孤独を感じていたときに言われた「砂子さんも声がけされたらどうですか?」の後輩の一言がぼくを徐々に変えていくきっかけとなりました。
怪我の状態はどうか、調子はどうかなど自分から声がけするようになり、
少しずつ状況が改善していきました。
そのとき「人の意見を聞くこと」「行動すること」の大切さを学びました。
あのとき逃げ出さなくてほんとうに良かったと思うし、その経験がいまにも生きていて、逃げ出すことがなくなりました。
もしあのときやめていたら、いまでもなにかつらいことがあったときには、すぐに逃げ出すようになったのかもなぁと思います。
▼まわりの意見と自分の考えの狭間で。履き違えた責任感。
そんなぼくが就職先に選んだのは、有線放送の飛び込み営業。
特に考えて入社したわけでもなく、野球に打ち込んでいたのでなんとなく決めた就職でした。
結局数ヶ月でやめてしまい、半年ほどフリーターをしていました。
そんな日々が続いていましたが、あるとき「このままでいいのか?自分は何が好きなんだろう。」と、ふと考えました。
当時のぼくは、東急ハンズに行くのが好きだったので「雑貨が好きなのかな」と考え、雑誌を購入し、目についた「Francfranc」へ入社。
入社と言っても何度も落ちたし、直接人事にも電話をし、アルバイトからの始まりでした。
野球部での経験があったので、「もっと人の意見を聞こう」と考えたぼくでしたが、その思いが強すぎて、八方美人になってしまいました。
「相手はどう考えているんだろう」と考えると本音も言えず、ただ相手に合わせていた。
いま思うのは、人の意見を聞くのは大切だけど、自分の意見を持つことも大切だということ。
どちらかに偏るんじゃなくて、両方のバランスを取ることが大切だと思います。
Francfrancでは店長を任せてもらうこともできたのですが、このときもまた苦しい経験をしました。
まわりに仕事を頼むことができず、一人ですべてを抱え込む毎日。
自分で自分を忙しくして、ノイローゼの一歩手前の状態にまでなってしまいました。
その後、本社に異動になり一息ついたことで回復したのですが、もっとうまく力を抜いてやれていたらなぁと思います。
きっと「自分がトップだから、自分がやらなければならない」というように責任感を履き違えていたんだと思います。
▼いろいろな出会い。「繋がり」からいまの自分に。
本社に異動したぼくは、全体を見る楽しさを感じていました。
そこで「もっと全体を見る働き方がしたい」と考え、知り合いが声をかけてくれた会社へ転職。
大きな会社ではなかったので、全体を見ることもできるし、そのポジションにも早く行けると感じていたことも一因でした。
そこでいろいろ経験したぼくは、同僚と会社を飛び出しWeb制作会社を立ち上げました。
知識はまったくなかったので、ハッタリではじめましたが、知識がないことで逆に飛び込んでいけたんだと考えています。
きっといろいろと知っていたら、失敗を考えたりして挑戦できなかったんじゃないかと思います。
その会社は同僚と共同経営でしたが、のちに解消し、2019年にいまの会社を新たに立ち上げました。
Web制作会社として今まで以上にクライアントに貢献したいと思う日々を送っているなかでご縁があり、同い年で創作書道をやっている友人に出会いました。さらにその友人から書道大会で日本一を二年連続で受賞した女性を紹介してもらったことがきっかけとなり、「Web制作×書」を広げていきたいという思いが芽生え、今に至ります。
▼失敗は恥ずかしいことじゃない。挑戦して、視野を広げよう。
自分の会社を立ち上げ、一生懸命に過ごしているぼくから”20代のぼく”になにか伝えられるなら「ありがとう」を贈りたい。
いろんな経験があったけど、それも全部含めての自分だから。
でももしアドバイスをできるのなら、「正解を求めすぎなくていいよ。考えてもわかんないから。やってみて、それに対してフィードバックがある。それで次はこうしようと考えられる。だからどんどんやろう!」と言いたいです。
ぼくは基本的にビビリで、石橋を叩いて渡るタイプでした。
でも何かを成し遂げたいと思うのなら、リスクを負うことが必要です。
きっとぼくのようなタイプの方はわかると思うんですが、まわりの目を気にしすぎていたんだろうなと思います。
失敗したら笑われる、こういうことを言うとこういうふうに思われるというように考えてしまい、挑戦することに二の足を踏んでしまっていました。
でも「失敗を恥ずかしいことだと思ったことが失敗」だと思います。
失敗は決して恥ずかしいことじゃないし、どんどん挑戦してほしい。
まわりの目じゃなくて、自分の心を信じること。
挑戦をすることで、自分の視野も広がります。
まわりの目を気にして、自分らしさを抑え込んでいたんだと思うので、そうした思い込みをなくして挑戦することを推奨したいですね。
▼最初からすべてうまくいく人生は楽しくない。失敗も含めて、自分のストーリー。
まわりの目ばかりを気にしていたぼくですが、最近知った言葉がすごく心に残っています。
それはリーダーシップや行動心理学の研究をし、数々の講演をおこなっている池田貴将さんの言葉です。
「もし自分の思っていることが100%叶う世界があったとします。これやりたいなと思えば、すぐに叶う。それって楽しいですか?」
これを聞いてぼくが思ったこと、それは「そんな人生は歩みたくない」でした。
うまく行かないときがあるからこそ、乗り越えたときに感動や喜びがある。
例えば映画でも、いきなり全部がうまく行ってしまったらきっとおもしろくない。
一度落ちて、そこからのぼるからこそ「良かったなぁ」とか「あのストーリーがここに生きてるな」となって、感動が生まれる。
だから何でも最初からうまくいく世界はきっとおもしろくないなと思い、怖さを考えないようになり、まわりの目を気にせず挑戦できるようになりました。
でも一方でまわりの目を気にすることも大切です。
例えばサービスを提供するときに、「これをしたら相手は喜んでくれるかなぁ」と考えること。
これは相手の気持ちを考え、どうしたら喜んでくれるかを意識するからこそ思い浮かぶことです。
まったくまわりの目を気にしなければ、きっとそうした考えも生まれない。
だからまわりの目を気にしない一方で、まわりの目を気にすることも大切です。
「どっちだよ!」と思うかもしれませんが、本でも「人には嫌われろ」といっているものがあったり、「空気を読め」といっているものがあったりします。
両極端だし、ぼくも悩みました。
でもどっちも正しくて、軸をどこに置いているかという違いがあるだけだと思います。
そうしたものは自分のライフステージだったり、立ち位置で変わるもの。
ただ、もしまわりの目を気にしすぎてしまって、自分を出せないなら注意が必要です。
だからどちらか一方を大切にしなければいけない、ということではなくて、バランスを取ることが大切なんだと解釈しています。
▼始めるのに遅いはない。やりたいと思ったら、そのタイミングがベスト。
もうひとつ20代のぼくに伝えたいことがあります。
それは「何かをやるにしても、今しかスタートできないよ」ということ。
これも池田貴将さんから教えてもらった言葉です。
今が現在地だからやるなら今だし、始めることに遅いというのはないから、やりたいと思ったら今が一番いいんだと思います。
自分はビビリなので、「今からじゃ遅いかな」と思い、二の足を踏んでしまうことが多くありましたし、今でもあります。
例えばWebの知識が足りないので、勉強会にも行きますが、そうしたときに「今からこんなこと学ぶの?」といった思いがありました。
でも今から始めて追いつき、追い抜けばいいだけじゃないかって思います。
早いとか遅いとか、そんなことにとらわれてないで、やりたいときにやろう。
そう思えてから、少しずつですが動けるようになりました。
だからこそ"20代のぼく"に「何かをやるにしても、今しかスタートできないよ」と伝えたいなと思います。
ここまでいろいろと語ってきましたが、今ももがいています。
それは仕事に対しても、生き方に対しても。
ぼくは死ぬときに初めて自分の人生を評価することができると考えていて、そのときに「あのときにやっておけばよかった」「なんでやらなかったの?」とは思いたくないと考えています。
だから後悔しないためにも、どんどん挑戦していきたいなと思っています。
でも怖がりなぼくが顔を出すことも多く、それゆえ今ももがいています。
ただ、今の会社を立ち上げてから特に「自分の人生を生きてるな」って感じることが増えました。
自分の言いたいこと、伝えたいことはしっかりと言うようにしているので、「あの人にこう思われたらどうしよう」と考えることが無くなりました。
その結果、考え方や行動も変わって来ていますし、ストレスもなくなっています。
きっと今のぼくを”20代のぼく”が見たら、「楽しそうにやってんじゃん!じゃあ俺も頑張るよ!」って言ってくれるんじゃないかと思います。
理想の自分には全然届かないけど、イキイキと生きていることは感じてもらえるはず。
それくらいに今のぼくは、楽しく歩んでいます。
だから”20代のぼく”には、ありがとうを伝えたいし、「人として、その生き方は間違ってないよ。直すところはあるけど、本質的には間違ってないよ。でも挑戦はしてね。」と伝えたいなと思います。
▼「繋がり」を大切に、仲間と成長したい。ぼくなりの教育のかたち。
ぼくは小学生の頃に書道をやっていましたが、本格的に再開してからは一年くらいです。
書はすごくおもしろいし、深みがあります。
創作書道をやっている友人に「書って人が出るよ」と言われたのですが、最近すごくそれを感じています。
例えばぼくの場合、大人にとっての良い子であろうと育ってきたので、枠のなかでまとまっています。
本当に自分が表れるなぁと感じますし、もっともっと力を入れて極めて行きたいと考えています。
これからもっと自分を表現して、将来的に「自分らしい字」にたどり着きたいと思います。
そして「仲間を信じて、仕事を誇りに思うこと」を追い求めるチームを作りたいとも思っています。
大学時代、すごく苦しんだけど、振り返るとそれは素晴らしい景色だった。
これをまた味わいたいなと思いますし、みんなにも感じてほしいと思っていて、会社はそのひとつの手段だと思っています。
それだけではなく、教育にも携わりたいという夢もあります。
中学生の頃から体育の先生になりたいと思い教育に力を入れている大学に進学したのですが、結局教職を取ることはありませんでした。社会人になっても、そのことがずっと心のどこかに引っかかっていました。
でも今は教育とは「先生」だけじゃないし、仲間に教えることも立派な教育だと思っています。今後は、若い人たちに何かを伝えていくことにも挑戦したいと思っています。
いろいろな繋がりを大切にして、多くを吸収し、それを共有する。
その繰り返しでぼく自身、そして仲間たちと成長していきたいなと思います!
▼まとめ
いろいろな経験から、挑戦することの大切さを学んだ砂子さん。
自分と向き合い、まわりと向き合い、もがきながらも進む姿はとても力強く、そして輝いて見えました。
インタビューでも何度も笑顔がこぼれ、やさしい人柄が伝わってきました。
今回のインタビューを参考にして、20代の方にはより良く過ごすきっかけを手に入れてくれたらなと思います!
砂子さん、お忙しい中ありがとうございました!!!
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