ラッコ
自然界のラッコは、寝る時に漂流しないように昆布などの海藻をを体にまきつけて寝る習性がある。そして水族館のラッコは海藻がない為にお互いの手を繋ぎあって寝るらしい。私も隣で寝ている彼女と手を繋ぎあって「ラッコみたいだね」なんて笑いあって寝たいものである。(バツイチ30歳男性)。そんなラッコに必要不可欠な昆布などの海藻が近年岩手県沿岸で減少している事を皆さんはご存知だろうか。
今岩手県沿岸では「磯焼け現象」という現象が起きている。とっても簡単に説明すると、今まで海藻が覆い茂っていた岩肌に海藻が生えず岩肌が露出した状態の事を言う。別名「海の砂漠化」と呼ばれるこの現象だがこの現象は今海の生物に大きな打撃を与えている。
この話を進めていく為には海藻の役割を説明しなければならない。海藻は海中の炭酸ガスや栄養塩を吸収分解して酸素を供給すると言う海水を浄化する役割を果たす他、生物の稚魚の産卵場所や隠れ家の役目も果たしている。またウニやアワビをはじめとする様々な生物の餌としての役割もある。上記に挙げた「栄養塩が過多」になると赤潮が発生し生物に甚大な被害を与える。まぁ要するに磯焼け現象が起きているのは中長期的にみてなかなかヤバイと言う事はご理解頂けたであろう。ではその原因はなんなのだろうか、、、、
実は私の主な収入源の一つであるウニが大きく関わっており、もっと根本的な所を辿っていくと地球温暖化に繋がる。
ウニは食欲旺盛だ。腹が減ってたらコンクリートでも食べてしまう。磯焼け現象はこのウニ達の海藻の食べ過ぎによって引き起こされる。ウニは通常冬場の海水温の低い時期には活動的ではなくなりあまり食べなくなる。しかし近年の温暖化の影響により海水温が上昇し冬場でもウニが活動的になってしまっている。それもその時期は丁度海藻類の芽生えの時期と重なるのだ。まだ大きくならないうちにウニ達に食べられてしまった海藻は大きくなる前に姿を消してしまう。そうして磯焼け現象が引き起こされるのである。また海藻を食べなくても生きていけるウニはどんどんその数を増やし海藻をさらに食べ尽くすという負のループを生んでいる。ちなみに海藻を食べてないウニは可食部が殆どなく痩せ細ったウニになる。そうすると磯焼けが起きた場所は漁師も取らなくなり(商品に適さない為)さらにウニが増える。これが続けば近い将来、今この記事を見ている皆様にウニが届けられない日が来ると言っても過言ではない。 ではどうすれば良いのだろうか。
今岩手県では磯焼け対策としてダイバーが海に潜りウニを駆除、または別の場所に移転し、昆布などを食べさせて出荷するといった事が行われている。そこに関しても思うところは多々あるが今の岩手県及び漁協のルール上それしかできないのが現状である。ダイバーに潜って貰うにも多額のお金がかかる。だから私個人として昨年、この現状を知らせながらウニを剥いて食べてもらうスタディーツアーを組み、その収益の一部をダイバーの団体に寄付するという試みをしたのだがコロナの影響もあり鳴かず飛ばず。今年もう一度やろうとするも海の状態が悪すぎてそれどころではなかった。
では私に出来る事はないのだろうかと考えた時、漁師である私が積極的にこの現状を発信するのが私が今取れる最善の策ではないだろうかと思いこの記事を書いた次第である。「何を話すのかではなく誰が話したか」という言葉があるように、漁師の私が漁師として実際に経験してる事を話すから意味があるのではないだろうか。
だから今日この記事を読んだ人は是非「磯焼け」という言葉を覚えてもらい、皆様が食べているウニが食べられなくなる将来が来るという事を自分事として捉え、環境問題について興味を持ち続けてほしい。興味を持つのではなく興味を持ち続けるのが重要である。
磯焼け現象から派生する海の環境の変化やその他の課題についてはまだまだ思う所があるのでこれからも時々発信していこうと思う。