ヨーロッパSAKE事情 ~エストニア編~
こんにちは。
株式会社小林順蔵商店の小林佑太朗です。
今回は、ヨーロッパSAKE事情~エストニア編~を語っていきたいと思います。
エストニアの概要
エストニアはフィンランドやロシアと共にフィンランド湾に面する3つの国の一つで、バルト三国の中で最も北側に位置する国です。
首都はタリン、公用語はエストニア語で、共通通貨はユーロとなっています。
エストニアは、歴史上デンマーク、ドイツ騎士団、スウェーデン、ロシア帝国、ソビエト連邦、ナチス・ドイツなどから様々な支配を受けてきています。そのため、人々の暮らしや文化も様々な国の影響を受けて進化してきています。例えば、食文化などはドイツ料理やスウェーデン料理などの影響を色濃く受けていますし、民族的にはロシア人が全体の約3割弱居住しています。
また、経済はバルト三国の中で最も良好です。フィンランドから高速船で1時間半という立地と、世界遺産に登録されたタリン歴史地区を背景に、近年では観光産業が発達してきており、1年間の観光客数は500万人を超えるそうです。
一方ではIT産業が盛んで、あの有名な「Skype」もエストニアの企業です。また、政府が「e-residency(電子居住)」を推進しており、2015年に日本の安部首相もエストニアの電子居住民となったことは皆さま意外とご存じないかもしれませんね。
エストニアのアルコール全般に関して
エストニアでアルコール飲料といえば、まずはビールです。この辺は、ドイツ文化の影響かもしれません。エストニアのビールメーカーはいくつかありますが、「サクビール」と「ア・ル・コックビール」が2大大手です。
「サクビール」は、サクというタリン近郊の町で製造されているビールで、200年くらいの歴史があるそうです。このサク市ですが、実はサク市で作るから「サクビール」という名前になったのではなく、サクビールを作っているからサク市となったようです。サクビールの影響力はすごいですね。
ビール以外でいうと、ロシア文化の影響からかウォッカもよく飲まれます。もちろん、ワインや地酒のリキュール類も豊富で、「Vana Tallinn(ヴァナタリン)」というリキュールはお土産としても人気です。
ヴァナタリンとは、「タリンおじさん」という意味で、ジャマイカ産のホワイトラムに、バニラ、オレンジ、シナモン等を漬けこんで樽で熟成させたものです。甘くて、フルーティな芳醇な香りがしますが、アルコール度数は40-50度とかなり高いので、飲みすぎにはご注意ください。
また、エストニアは物価が安いうえ、フィンランド等の北欧では酒税が高くアルコールの購入制限も厳しいので、フィンランド人が毎週末のように大量にエストニアまでアルコール飲料を購入しに来るようです。エストニアの酒とタリンと、フィンランドの首都ヘルシンキは高速船で1時間半なので、気軽に来られるようです。
ある調査によると、エストニアで売られたアルコールの30%超はフィンランド人が購入して、フィンランドへ持ち帰っているみたいです。そのせいか、町中と港付近では、お酒の置いてあるラインナップも全然違うようです。
エストニアのSAKE事情
さて、本題のエストニアでのSAKE事情をお話させて頂きます。
エストニアにおける日本食レストランは、中央ヨーロッパと比べてまだまだ多いとは言えません。非日系人の経営する日本食「風」レストランも多いのが現状です。しかし、諸外国と同様に日本食や日本に対する興味が高まっているのは事実だそうです。この数年で、日本人の方が経営されるレストランもググっと増えてきているそうです。
首都タリンに現在5店舗出店している「麺やTOKUMARU」も日本人の方の経営されるレストランの一つです。店主の高木さんは大学院在学中のある出会いからエストニアへ留学され、その後本格的な日本食レストランの開業を目指され。そのために、ご自身で日本食材から輸入もされているそうです。
高木さんや、その他日本人のレストランオーナー様と色々お話させて頂きましたが、まだまだエストニアでの日本酒に対する知識や認識は高いとは言えないそうです。
基本的に日本食レストランに行くのは、デートや特別な日ということで、「大好きだから日本酒を飲む」というよりは「せっかく日本食レストランに来たから、一杯だけでも日本酒を飲んでみよう」といった感じです。
また、まだまだ日本酒に種類があるということをご存知の現地人は少なく、「日本酒といえば熱燗!」と熱燗をお猪口と徳利で楽しまれる方がほとんどだそうです。
オーダーのやり方も、「とりあえず高いもの!」といった風で、今後エストニアで日本酒の飲酒文化を根付かせるためには日本酒の歴史や楽しみ方など色々教えていくことが大切だと感じました。
現地のスーパーを見てみても、まだまだ日本から直接輸入された日本酒を見つけることはほとんど無いのが現状です。日本国外で製造された商品を1,2種類発見することができる程度で、ハードリカーの隣の棚に常温で保管されています。
今後、現地人が気軽にフレッシュな日本酒を手に入れられるようにするには、我々も頑張らなければなりませんね。
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