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麗らかに…episode2『きっかけ』

とりあえず大学へ…特に目指す将来も無かったが、何かしら資格でも取れれば潰しが効くだろうと、教育学部へ進んだ。物理を専攻していたが、正直に言えば、代返と追レポで単位を拾ってきた。「ポン」とか「チー」とか、もっぱら中国文化ばかり研究していた。

転機が訪れたのは2年生の時。悪友から怪しいネットサイトを紹介された。
『トゥインクルシリーズ』
女の子達がレース場を走り、その結果を予想する。もちろん表向きには「応援するだけ」なのだが、純粋に競う者に群がる不純な輩は、いつの世にも存在する。私も初めは不純な輩の1人だった。

年末最後の大一番『有マ記念』私は1人のウマ娘の夢を買った。彼女はこのレースでの引退を決めていた。テレビに映る彼女は、ただひたむきに、前だけを見て走っていた。

彼女の夢、私の夢は、叶う事無く、儚く散った。
「正月の餅代が無くなったわ」
などと悪友と笑った。テレビはそのままウイニングライブを中継していた。

驚いた。つい先程、倒れ込むほど本気で走った彼女達が、休む暇もそこそこに、全力でパフォーマンスをしていた。勝った者も敗れた者も関係なく、全てが光り輝いて見えた。

その中にはもちろん彼女もいた。ウマ娘ならば誰もが憧れるセンターのポジションから離れた所で、1人のバックダンサーとして。全力で。輝いていた。

それから少し時が過ぎ、まわりが就活一色になって、まだ私は自分の道を決めかねていた。このまま卒業すれば教員免許は自動的にもらえるが、教職に特に思い入れがある訳でもなかった。教採試験はとりあえず受けたものの、何をやりたいのか自分でも分からなかった。

卒論資料を探しに行った図書館でたまたま目に留まったのが、『トレセン学園』の募集案内だった。噂は耳に入っていた。学園の性質上、あまり居心地の良い職場環境ではなく、教員は慢性的に不足していると。

有マ記念の彼女を思い出した。ここなら少しはモチベーションを持てるかも知れない。

問い合わせてみると、学園の採用担当はあっさりと噂を認めた。その上で、是非面接だけでも受けてほしいとの話だった。
(縁があるのかも知れないな)
おそらく初めて、私は将来について前向きに考えていた。

前述の通り、私の専門は物理だが、理科の他に数学の免許も取得予定だった。面接では私の成績や熱意よりも、複数教科の指導が可能だという部分が評価された。

こうして、一生に何度もないだろう「本当の出会い」のきっかけ、私はを手にした。

(To be continued)

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