平塚海岸の樹林帯はPark-PFI制度の犠牲になろうとしている
Park-PFI制度
簡単には、次のように説明できる。
都市公園を造るための制度。
平成29年(2017年)の都市公園法改正により新設された。
民間企業が設計、建設、運営することを前提として、地方公共団体が国から補助金をもらうことができる制度。
公園整備事業という名目で工事を請け負う民間企業を公募・入札にて選び、都市公園の運営・維持管理費を地方公共団体が出しながら、運営を民間企業のノウハウに任せ利益の一部を維持管理費にも還元してもらうなど、一定期間の運営条件つきで合理的に推進する仕組み。
隠され続けた海岸林の伐採計画
平成29年(2017年)11月、平塚市(落合克宏 市長)は、「湘南海岸公園龍城ケ丘ゾーン整備・管理運営事業」として国道134号線沿いの海岸林の伐採を含む公園整備計画を発表した。
当時、港・花水・なでしこ地区を対象に平塚市主催の説明会が開催され、それまでに実施されていたパブリックコメント等を通じて要望のあった龍城ヶ丘プール跡地の整備に加え、要望には無かった隣接区画の海岸林エリアまでが開発対象に盛り込まれることが初めて明らかにされた。
計画によると、伐採対象の海岸林エリアはプール跡地7,000平方メートルの2倍の敷地面積を有しており、合計すると開発面積は30,000平方メートルに達していた。
このとき、住民は初めて海岸林の伐採について知らされた。
この開発計画には、Park-PFI制度が利用されることも特徴的である。
平塚市が利用を決めた当時、Park-PFI制度を利用するためには、一定以上の開発面積が必要であった。
プール跡地の整備だけを求める住民の思いとは異なり、龍城ヶ丘の海岸林の伐採面積を加えることで開発面積の基準をクリアする計画案。
平塚市は龍城ケ丘ゾーンの公園整備に対し、Park-PFI制度を活用することを念頭に置く一方で、海岸林の大規模伐採が付随してくることについては積水ハウスによる設計図案が市民に公開されるまで、一度たりとも明言することはなかった。
Park-PFI制度の特徴
Park-PFI制度は、地方公共団体の財政負担を軽減することが目的の一つである。このため、Park-PFI制度により選定された民間企業への報奨として、以下の特例措置が適用される。
・建ぺい率が2%から12%にアップされること
・運営期間が10年から最長20年に延長されること
敷地内により大きな施設を建設できることや、初期投資額の回収向上を見込める運営期間の長期化は、都市公園を運営し利益を追求する民間企業にとって魅力的な条件の一つとなる。
すなわち、整備後の都市公園を民間企業が運営し、その利益の一部を公園管理者(ここでは平塚市)の負担する公園整備費用に還元するというサイクルを回すことが可能となる。
参考資料
「公募設置管理制度(Park-PFI)について」、令和2年2月12日 PPP/PFI推進施策説明会、国土交通省 都市局
Park-PFI制度の問題点
Park-PFI制度の特徴である利益の還元については、実際上、還元率が不透明であること、赤字経営に近い運営実態の場合に地方公共団体にのしかかる経費負担が問題視されている。
植村 公一 氏(インデックスグループ代表、愛知県政策顧問、東京農工大学理事)は、Park-PFI制度の問題点について、「全体のコスト増、PFI事業で起こりがちな利益相反、安価な初期コスト高価な総費用、PFI法と地方自治法の整合できない点」など、複数の点を深掘りしている。
この点においてPark-PFI制度を利用した平塚市の龍城ヶ丘プール跡地整備計画も同様であり、その末路は金利高の借金返済と近い状況にある。その理由は、以降に示す平塚市によるPark-PFI制度利用の段落において示す具体的な事業性の数字に明確に表れている。
参考サイト
日本でPFIが普及しない理由を考える (linkedin.com)
日本でPFIが普及しない理由を考える、植村 公一、
インデックスグループ代表|愛知県政策顧問|東京農工大学理事
2020年11月6日
さらには、全国で訴訟問題にまで発展し、地域住民が勝訴する事例まである。日弁連が平塚市によるPark-PFI制度の利用を問題視し、豊かな海と暮らす平塚市民の会に面談を申し込んでいる(後述)。
事業性・資本の切り売り・地元産業への還元性の低さ・開発という名の破壊に代表されるPark-PFI制度の諸問題が、平塚市にも災難として降りかかる。
そして、これらの利用を進めているのは、現職の市政(市長・市議)であることも、地元住民は深く反省しなければならない。
正しい市政への見張り役として、市民こそ普段から気を引き締めておかねばならないことを教訓として残している。
Park-PFI制度の利用を発端として、全国的に開発による地域の破壊が頻発しており、訴訟問題、市長や市議の入れ替えが起きている。
平塚市によるPark-PFI制度利用~手段の目的化
Park-PFI制度に対する国の交付金の事業要件
事業費用負担及び事業性(一部抜粋)
負担額
最初に公園や施設を造るための費用
積水ハウス等事業体の負担 :1億円、初期費用のみ
平塚市の負担 :9億円
内訳:4.5億(国庫)
4.5億(平塚市)
事業性
平塚市の収入 :370万円/年(賃貸料、積水ハウス等事業体から市へ)
20年間で7,400万円
積水ハウス等事業体の収入:運営による全収益(含、駐車場収入全額)
運営・維持費
平塚市が積水ハウス等事業体へ支払う管理維持費:3000万円/年
20年間で6億円
まとめ
・15億円を投下(16億円の予算から事業者負担の1億円を差引く)
・平塚市の収益は 年間 370万円、20年間で7,400万円。
・平塚市が積水ハウス等事業体へ支払う管理維持費は20年間で6億円。
・上限20年間で終了し、その後の用途は未定
模式図(お金の動き イメージ)
・公園整備費用
・管理維持費
・収益
手段の目的化
平塚市がPark-PFI制度を利用するためには、「公園面積が25,000平方メートル以上」の要件を満たす必要があった(検討開始当時)。
しかし「湘南海岸公園龍城ケ丘ゾーン整備・管理運営事業」を完遂するには、着目した龍城ヶ丘プール跡地7,000平方メートルだけでは全く足りていなかった。
そこで平塚市は、プール跡地が隣接する海岸林が神奈川県による保安林指定を受けていないという理由から、住民安全を考慮することなく開発対象に組み込み、公園面積を計30,000平方メートルまで引きあげた。
平塚市は、住民要望を聞いてから海岸林伐採を伴う公園開発とPark-PFI制度の利用を決定したのではない。
Park-PFI制度の利用要件の一つであった開発面積の基準値を満たすために、「龍城ヶ丘の海岸林伐採を必須」とする公園開発計画として、まとめ上げていったのである。
「開発面積が必要だから、海岸林を犠牲にする」
これは、本来「手段」であるはずのPark-PFI制度が、平塚市によって開発遂行のための「目的」として置き換わっていった可能性を示している。
平塚市による巧妙な進め方
Park-PFI制度を利用するためには、開発面積が必要である。
開発面積が必要となれば、ターゲットである龍城ヶ丘の海岸林を、大規模伐採しなければならない。
住民安全などどこにも考慮されてはいない。
当初目標とした30,000平方メートルの開発候補地には、すぐ陸側に、虹ケ浜、龍城ヶ丘、袖ヶ浜が位置し、さらにその陸側~JR線沿線まで、高層階の建物が少ない広く平面形状の区画が広がる。ここは、海岸林の存在によって、日常的に塩・砂・風の被害から広範囲に守られている住宅街だ。
龍城ヶ丘の海岸林の大規模伐採となると、海岸林によって生活安全を守られている地域住民は黙っていない。
平塚市は、計画推進にあたり、着工を決定的にする整備事業者との「実施協定締結」が無事に終了するまで、これらの地域住民に、決して海岸林の大規模伐採を気取られてはならなかった。
こうして、平塚市によるPark-PFI制度の利用はその計画の具体的な内容を地域住民に知らしめることなく、着実に固められていった。
そのあまりにも静かな隠し方が、初期の計画の草案に残されている。
平成25年(2013年)、平塚市によって「湘南海岸公園再整備計画(案)」が公開された。本資料中、「龍城ヶ丘プール跡地」について整備の必要性が述べられる一方で、海岸林の伐採については一切明言されていない。
同時に、駐車場の必要性が述べられる一方で、海岸林の大規模伐採に至ることを住民が明示的に理解しえない文章及び図の構成となっている。
本資料を起点とした、平塚市の本計画の巧妙な進め方については、
別記事「平塚市による進め方」にて詳述する。
(PDF資料はこちら)
湘南海岸公園再整備計画(案)、平成25年6月、平塚市
表紙及び本体
業者選定と費用負担額の増加は入札制度の公平性を欠いている
Park-PFI制度は公募・入札制度で請負業者を選定する仕組みであることから、業者の選定方法には一般的な入札の概念が当てはめられ、そこには競争原理が生じる。すなわち入札事業者らは、自社が請け負った場合の経費(平塚市が負担する管理運営費、年額)をそれぞれ提示し、この提示額を最安値に設定できた事業者が審査を通過する。ここでの提示額とは、公園整備において、運営期間の20年間、平塚市が継続して事業者へ支払い続ける必要経費の年額を指す。
龍城ヶ丘プール跡地整備計画に際し平塚市が活用したPark-PFI制度では4社が入札し、管理運営費用として最安値である年額およそ2千万円を提示した積水ハウスが審査に通過した。
積水ハウスが最安値で提示したにもかかわらず、審査終了後、平塚市は、選定された積水ハウスに対して支払う管理運営費用の年額を3千万円に上方修正することを市議会で突如表明した。
年額3千万円というと、図中で確認できる入札4社のどの提示額よりも高い(最高額でもおよそ2千5百万円(G3) )。
平塚市はこの金額の増加理由を、経費として掛かると思われるため支払うとした。すなわち、入札制度で競わせた管理運営費用こそ業者選定の根拠になる数値であるにもかかわらず、「その管理運営費用の額は実際にはどうでもよかった、払うものは払いますよ」という姿勢である。事実、入札4社のどの提示額よりも高額な年額3千万円を平塚市が自ら提示し、20年間支払うと明示的に述べた。
この入札制度の競争原理を無視した平塚市独自の判断は、一般的な入札の概念を無意味化するものであり、入札制度の公平性・公正性を覆し、正当な競争原理を著しく阻害すると考えられた。
もし、管理運営費用の年額3千万円を払えるというのであれば、同項目に対して最安値を提示した業者の審査通過にもともと意味はなく、入札時点で最高額(およそ2千5百万円)を提示した別の候補事業者(G3)でもよかったはずである。
Park-PFI制度を利用した積水ハウスの選定劇はいったい何だったのか。
同時期、積水ハウスが一般家屋の建設以外に都市公園の整備事業で実績を挙げたいと考えていることは周知の事実であった。
視点を変えれば、平塚市は、龍城ヶ丘プール跡地整備計画のPark-PFI制度を利用することで積水ハウスを選定する一連の流れを踏み都市公園整備の実績作りを手助けすることもできる立場にいたことになる。
たて方向にも考えよ~建設発生土の問題
建設発生土(いわゆる建設残土)の受け入れについても議論の対象となる。
平塚市が自主的に言及していない開発課題がある。
「深さ方向(たて方向)」の議論である。
ここには、土木業界で常にトラブルを起こしている「建設発生土」処理の問題が深く関与している。落合克宏平塚市長は、この点に関する一切の課題を市民に公開したことはない。
平塚市の場合、龍城ヶ丘プール跡地整備計画における開発対象区画は、「窪地」である。現場は、国道134号線の南側に面している。駐車場を造るため国道134号線からの車両の誘導路を平面続きとするには、この窪地の「埋め立て」が必要となる。
当然ながら、開発対象面積が広範囲であればあるほど、その埋め立て「容積」も増す。この容積が、別の開発を助けている。
すなわち、残土処理に役立っている。
通常、埋め立てには別の地域の建設発生土が用いられる。建設業界では、国内で繰り返される開発・建設によって常に残土処理の問題が発生している。一か所の土地開発をして残土が出たら、別の新しい土地開発をしなければ、その残土処理に困り続けてしまう。開発の連鎖が止まらず、残土処理にときおり不法投棄や不純物混入が問題となるのはこのような背景から処分場が少ないためだ。
非常にざっくりとした別途試算では、龍城ヶ丘プール跡地整備計画で開発対象となる面積から試算される容積は概算で4~5万立方メートル(トン)。
受け入れ単価は、単純土壌か、不純物(混合廃棄物)かによって異なる。
処理料金は、
最低単価の場合、概算で1億円。
最高単価の場合、概算で23億円。
平塚市はこれまで幾多の土地開発を平塚市内で経験済みである。
龍城ヶ丘プール跡地整備計画のPark-PFI制度利用で、市の支出が10.5億円で済む一方、残土受け入れの側面からはそれを上回る金額が動く可能性について、平塚市が予め知らないわけがない。
建設発生土にまつわる問題についてはPark-PFI制度と少し離れた議論となるため詳細は別記事で述べる。
以下に、平塚市の龍城ヶ丘プール跡地整備計画における海岸林伐採で想定される埋め立てに関して、2つの問題点について特記する。
建設残土に含まれる有害物質の混入を防げるか
建設残土には種類がある。
単に地面を掘り返しただけの土壌そのもの、
がれき処理などでコンクリート等の混入があるもの、
有害物質に汚染されたもの、・・・
ひとたび有害物質に汚染された残土で埋め立てられると、降雨等により地中から海浜へ、永続的に有害物質が流出し続ける。だからといって、埋め立て前にすべての土に対し、有害物質の成分分析を行うことは非現実的な要求であり、実際に不可能である。また、サンプリング用の残土を成分分析にかけることができたとして、サンプリング用の残土と実際の残土が同等である保証もなければ、それを実証する方法もない。
残土の発生源として、とくに現代的なところでは、リニア開通工事で発生する膨大な量の建設発生土が挙げられる。掘削の都合上、化学物質を投下して土を軟化し、掘削しやすくする工夫が施されている。各自治体で、建設発生土の受け入れには大きな問題が付随している。
参考記事
有害残土はどこへ? ウラン鉱床の間走るリニアトンネル:朝日新聞デジタル (asahi.com)
迷走を続けるリニア中央新幹線の残土処分 | 論文 | 自治体問題研究所(自治体研究社) (jichiken.jp)
リニア工事の残土処理どうなる? 条例施行で注目|あなたの静岡新聞|深堀り情報まとめ〈知っとこ〉 (at-s.com)
残土受け入れのための処理業者の選定は公正に行われるか
残土の処理業者は、より多くの残土を処理できる広い埋め立て場所が欲しいと思っている。処理対象となる残土は国内開発に伴い増加する一方だが、埋めて地となると、そう簡単に都合よく見つからない。この実情から、お金を払ってでも引き取ってもらいたいと処理業者に言わしめるほどに「処分場」としての新規の開発地面の需要は高い。容積の大きな「処分場」はそれだけで魅力度が高い。
平塚市もこの実情を深く理解している。
先述の開発計画案から始まり、残土受け入れの件は一度も触れられていない。
残土の受け入れの問題に対し、平塚市が誠実に公正な業者選定を行うことができるのか。
また、残土持ち込み業者との公正なやり取りは公開されるのか。
平塚市は、すでにPark-PFI制度での業者選定にまつわる管理運営費用の上方修正を行い、入札制度の公正性を打ち消すほどの不誠実さが問題視されている。
このPark-PFI制度の利用を是が非でも推し進めたかった平塚市の背景に何があるのか。クリーンさを失った市政がまともな判断をするとは、市民は考えていない。
熱海土石流は人災? 逮捕歴もある「盛り土」業者の黒歴史、太陽光発電トップにも前科 | デイリー新潮 (dailyshincho.jp)
平塚市の進め方に疑問~聞かない対話「平塚方式」
落合克宏平塚市長によると、市民との対話により市政を進めることは「平塚方式」と呼ばれる。
これは市民意見が事業推進に反映される仕組みであるという。
落合かつひろと平塚をつくる会 (katsu-ochiai.jp)
本当に市民対話により事業を推進することができているのであれば、
なぜ、海岸林伐採反対の署名が一万筆を超え、なお増え続けているのか。
なぜ、海岸エリアの自治体と市民団体とが協力して署名を集めたり、専門家を招聘して講演会を開催したり、住民説明会を開催したりといった、一連の市民活動が止む気配がないのか。
このギャップを、落合克宏平塚市長はどのように説明するつもりだろうか。
平塚市は、龍城ヶ丘プール跡地整備に向けた具体的な計画案の公表に際し、
パブコメの実施(平成25年)
近隣住民への説明会(平成28年)
Park-PFI制度を盛り込んだ都市公園条例の一部改正案を可決(平成29年)
予算16億円の取得、
と進めていった。
一見すると、対話が行われたように見える。
しかしここに平塚市の不透明な進め方のカラクリがある。
当初、平塚市が「ひらつか海岸エリア魅力アップチャレンジ」として住民に説明したのは、プール跡地の公園整備についてであった。
先立って実施されたパブリックコメントでは、平塚市は事前に市内5つのゾーンを対象とした開発計画の大枠を「湘南海岸公園再整備計画(案)」の中で示し、そのうちの一つである龍城ヶ丘ゾーンについてプール跡地整備と記された資料を市民に提示した。
パブコメでは、プール跡地自体の活用方法について市民から活発なアイディア・意見が抽出された。しかしその後、平成29年、平塚市は住民の要望にはなかった海岸林の伐採を突然発表する。
この発表を受け、地域住民は、「要望しているのは廃墟となっているプール跡地の開発だけ。住民の安全な暮らしを守る海岸林を切れとは一言も言っていない。生活に重大な影響が出て困る。」と、計画案の見直しを求める声を上げた。
地元自治会長は、この新規計画の表明に際し「寝耳に水」と言及している。
駐車場は本当は何台ぶんを造るのか、どこまで樹を切るのか。
地元住民の度重なる樹林帯保全の要望が平塚市に出されるも、平塚市は数回の小規模なミーティングを行うたびに、公開資料内容の朗読を繰り返すのみで明言を避けてきた。
「業者が決まってないから答えられない」
「東西の樹林帯に、80台分くらいはみ出します」
自治会、瀬谷、花自連会長
「樹林帯に80台はみ出したら認められないから、案を書き直してこい」
伐採に対して反対を表明する署名は2023年2月時点で一万筆を超えている。住民が求めているのは、龍城ヶ丘プール跡地だけの整備である。
落合克宏平塚市長は2023年3月現在に至るまで、本開発計画の進め方の不誠実性、海岸林の伐採に関する住民安全に対する不整合性、自ら掲げる「平塚方式」の在り方とのギャップについて、一切説明に現れたことはない。市民とのコミュニティーミーティングの場において、市民から訴えられる「樹林帯は切らないでください」との声に対しても、ミーティング会場に居合わせた市の職員が、原稿を読むように計画公表時と同じ言い回しを何度も繰り返し続けた。余計なことを言って言葉尻を捕らえるのを恐れているかのように見えた。
現場の声に傾聴し、実態を深く理解し、多様な意見を尊重するのが市政の在り方ではないだろうか。そのための対話の必要性が重要視されているのではないだろうか。
「平塚方式」とは、どうやら、市政に対して肯定的な意見のみに耳を貸すスタイルのようである。
住民安全を守るために海岸林の伐採だけはやめてくれと懇願する現地の声は、聞かない対話「平塚方式」によって遮蔽されているようにみえる。
安全は何においても優先される。
平塚市政には、住民安全を考え、多様な意見の中から優先順位を合理的に判断する姿勢が必要である。
日弁連もPark-PFI制度の現状を疑問視
日本弁護士連合会(日弁連)は、Park-PFI制度の在り方を疑問視し、豊かな海と暮らす平塚市民の会に平塚市のPark-PFI制度活用事例の問題点について詳細な情報を求め面談を申し込んだ。2弁連がとくに問題視したのは、平塚市と請負業者の支出と収入の差である。全国でも同様の問題から訴訟問題に発展しており、平塚市でも同様の疑いがあるとのこと。
Park-PFI制度利用の果てには、市と市民に損害を与えるという結末が待っていること。
「市民が裁判を起こせば勝てますよ」。
訴訟の可能性についても触れられた。
2022年4月27日、市民の会から広報担当の有川氏が詳細なプレゼンを実施した。
日本弁護士連合会:HOME (nichibenren.or.jp)
日弁連へのプレゼンテーション概要
Park-PFI制度を活用して整備された公園を巡っては、各地で行政と住民とのトラブル・訴訟が発生しており、住民側が勝訴した事例もある。
Park-PFI制度の良好な活用例
Park-PFI制度を有効に活用した地方公共団体がある。
岩手県盛岡市。
市民が望むものを行政が形にする。そのための連携が十分に機能した。
市民にヒヤリングを十分に実施し、望まれている施設を調査した。
その後行政は、Park-PFI制度を利用し、請負い企業を募集した。
予算1,900万円が充当され、盛岡駅そば、3ヶ所の都市公園が、同時並行で整備された。
盛岡市の事例、詳しくはこちら
http://www.kensetsu-plaza.com/kiji/post/28338
盛岡市への視察
2022年7月下旬。岩手県盛岡市。
平塚市議会の都市建設常任委員会が、岩手県盛岡市におけるPark-PFI制度の運用事例について、視察のため現地入りした。既述の通り、1,900万円で3か所の都市公園が住民の要望通りに完成し活用され、住民の充実度を向上させている。費用対効果のみならず、推進の在り方が健全である。
視察メンバーは衝撃を受けた。
盛岡市と平塚市のクオリティーの差が歴然である。
視察に同行した江口友子平塚市議がPark-PFI制度について尋ねると、盛岡市職員はこのように返答した。
盛岡市職員は、2022年現在で、問題の多いPark-PFI制度の活用のされ方にすでに正しく評価を下していた。
手段の目的化が横行する平塚市の実情を見透かされた気がした。
後日、江口友子市議はこう述べている。
平塚海岸の樹林帯は、Park-PFI制度の犠牲になろうとしている
盛岡市の事例において特記すべきは、行政が公園整備の前に住民の要望を十分にヒヤリングし、本当に必要な整備に絞り込み、それに対して工事を受注してくれる請負い企業を公募したという活用の段取りが、妥当であったこと。
対して平塚市は、そうではなかった。
16億円を投じ海岸防砂林を破壊して駐車場を造ろうとする平塚市の開発計画。その敷地面積の妥当性は2023年3月時点でも説明されていない。
計画の推進のしかたにおいては、平塚市は、Park-PFI制度による請負い企業が決定され計画案が公表されるまで、海岸林の伐採に関する情報を地域住民に一つも漏らすことなく積水ハウスに設計図面まで描かせている。
市民団体らは、落合克宏平塚市長に対し、海岸林を伐採する妥当性についてきちんと話をしてほしいと再三求めてきた。
手段の目的化が露骨に示され、予算を組んだ以上は中断しないというのが平塚市のスタンスである。
2023年3月現在、平塚市は、海岸林を管理する県との占用協議に向けた準備を着々と進めている。
平塚海岸の樹林帯は、Park-PFI制度の犠牲になろうとしている。
平塚市民にできること
市民一人一人ができるアクションを、下記ページにて紹介している。
とくに市政のリフレッシュはいまこそ必要だろう。
住民の暮らし、命が脅かされている。
平塚市 海岸公園整備計画への反対の声、一万筆を超えて増えつづける署名・・「プール跡地だけの整備を。樹林帯は切らないで!」
をご覧いただきありがとうございます。
「龍城ヶ丘プール跡地」だけを整備・整美する。
これを可能にするため、わたくしたちは平塚市と共に創造する方向性を求めて、平塚海岸の樹林帯を伐採しない公園整備の在り方を尊重していきます。