![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/73156180/rectangle_large_type_2_2ac5c1d2d36f1e25c9c6d55fed2215f9.jpeg?width=1200)
飛行機はなぜ揺れるのか?飛行機を揺らす「原因」を学ぼう
「飛行機は揺れるから怖い」
という方は結構いらっしゃるのではないでしょうか。
私たち客室乗務員は常に飛行機の中で上下左右に揺らされながら立ち仕事をしていますので揺れには慣れっこですが、飛行機に乗り慣れないお客様からすると目に見えない揺れが不意に襲ってくるというのは、あまり気持ちのいいものではないのかもしれません。
ですが、飛行機の事を知っていくと「なぜ今、揺れているのか?」が少しずつですがわかってきます。これだけでも安心感がかなり違うものです(^^)
今回は自身の体験をもとにして「飛行機が揺れるポイントと原因」を自分なりに学び、ピックアップしてみました。
離陸・着陸時
自転車に乗っている時、速度が速い時と遅い時どちらのほうが姿勢が安定しているでしょうか?当然、速い時ですよね。飛行機も同じで、離着陸時は速度が遅く姿勢が不安定です。風の影響を受けやすくなりますので、強風の日などは風にあおられて揺れる時があります。
空港上空に発達した積乱雲があると、その下では突発的に風向が大きく変化する「ウインドシア」や、強力な下降気流「ダウンバースト」といった飛行機の運航に影響を与える乱気流が発生することがあります。
羽田空港などの基幹空港に接地されている空港気象ドップラーレーダーは、局地的なダウンバーストである「マイクロバースト」の発生地点を探知ができるため、発生した場合は航空管制官やエアラインの運航管理者に速やかに情報が提供されます。
また、飛行機の機種によってはウインドシアを感知する「ウインドシア警報装置」が装備されており、飛行機のセンサーが強い下降気流や追い風を感知した場合、パイロットに警報を発せられます。
ダウンバーストの仕組みについては気象庁のwebサイト、ウインドシア警報装置についてはJALのwebサイトに詳しい情報があります。
雲の中
一番わかりやすい揺れポイントが「雲の中」ですね!揺れることが分かっている分、気持ちの準備ができます。
上昇・下降気流が存在する雲の中には「雲中乱気流」があり、この乱気流を伴う雲の中に入ると飛行機が揺れる時があります。
積乱雲や乱層雲(雨雲)など、地上に雨を降らせる降水現象を伴う雲の中には乱気流があることから、到着地の天候が悪い時は雲中乱気流による揺れに備えて早めにベルト着用サインを点灯することもあります。
この降水現象を伴う性質を利用し、飛行機の鼻に装備されている気象レーダーは水分に反射する電波を照射してその反射の強さによって悪天域を探知しています。
なお、雲の中でも最も警戒すべきものの1つが積乱雲です。「入道雲」とも呼ばれる積乱雲の中には飛行機をも破壊してしまうような強烈な乱気流が存在するため、針路上に積乱雲がある場合パイロットは回避しています。
巡航中
雲の無い空を水平飛行している時も、飛行機は急に揺れるときがあります。「ベルトサインが消えている間も、ご着席中は常にベルトをお締めください」と乗務員がしつこくお願いするのには、ちゃんと理由があるのです。
富士山や山岳地帯などの大きな山の風下には「山岳波」と呼ばれる乱気流が発生するときがあります。風向きによっては、富士山によって発生した山岳波が羽田や成田空港を離着陸する飛行機に影響を与えることもあります。
また、飛行中のジェット機の後方には「後方乱気流」という渦状の乱気流が発生します。この乱気流は英語では「Wake turbulence」と呼ばれ、「航跡」を意味する「Wake」の言葉通り、飛行機が通過した航跡上に発生します。この乱気流に遭遇すると飛行機が直下型地震のように揺ることがあります。
この乱気流は先行機の位置によって発生空域が予測できるので、後続機のパイロットや航空管制官はこの乱気流に巻き込まれないよう針路や高度を調整しています。
ちなみに、以前私が飛んでいた時に急に飛行機が揺れたことがあり、後で機長に聞いてみるとエアバス380型機という大型旅客機の後方乱気流に入ってしまったということでした。
後方乱気流については、JAXAのwebサイトに詳しい情報があります。
![](https://assets.st-note.com/img/1645943096068-9BV7seyi4b.jpg)
山岳波や後方乱気流などは場所や位置がある程度予測できるのですが、厄介なのは「晴天乱気流」という乱気流です。
晴天乱気流とはその名の通り、雲などの視覚的兆候を伴わないやっかいな乱気流で、目視やセンサーでの探知ができません。巡航中はベルトサインが消えている場合が多いので、この状態で不意に強い晴天乱気流につかまって機体が大きく揺れると、ベルトをしていない乗客乗員がケガをしてしまう事があります。
現在、晴天乱気流を正確に探知するセンサーはありませんので、パイロットは出発前に気象データや同じ路線を飛んだ便のレポートなどをチェックしたり、飛行中も周囲の状況を監視したり、周辺を飛ぶ飛行機と会社の枠を超えて情報共有をしあったりしながら、目に見えない乱気流を探っています。
晴天乱気流は、対流圏と成層圏の間ある対流圏界面(トロポポーズ)に発生しているジェット気流の付近で発生することが多いらしく、晴天乱気流を避けるためにこの付近の高度は避けて飛ぶのがパイロットの常識なのだそうです。
降下中
降下中、機体が小刻みに振動することがあります。もしそんな振動を感じたら窓から飛行機の主翼を見てみてください。きっと主翼の形が下の写真のようになっているはずです。
![](https://assets.st-note.com/img/1645943096064-mBCFIMpraj.jpg)
これは「スピードブレーキ」という装置です。作動させると写真のように主翼上の一部が立ち上がり、主翼の面に沿って流れる空気を意図的に乱す事で、飛行機を減速させたり降下率を増やしたりすることができます。
機体の小刻みな振動は、スピードブレーキが主翼上の空気の流れを乱すことで発生しています。その証拠にパイロットがスピードブレーキを解除して主翼が元の状態にもどると、振動が止んで機内が急に静かになりますよ(^^)
スピードブレーキについてはANAのFacebookの記事に詳しい情報があります。
最後に
きっと調べていくと、もっと色々な発見があるでしょうね!これを読んだ方が、少しでも揺れに対する恐れが軽減されてフライトが楽しめるようになってくれたら嬉しいです。
では、最後に心を込めて。
「揺れましても飛行の安全性には影響はございませんので、ご安心ください」