絶対8話までは見るべきアニメ「正解するカド」が面白かった話

※ネタバレあります

8話までのよく練られたシーン満載でおもしろい

一辺2kmの立方体とともに地球外の知的存在がコンタクトをとってきたら、何が起こるのか、よくねられたSF考証とそれを表現するシーンの数々がとても楽しめる作品でした。この記事ではそれをいくつか語りたいと思います。

簡単なあらすじ

突如一辺が2kmの巨大な立法体「カド」が突如羽田空港に出現する。凄腕タフネゴシエーターの主人公「真道」は、たまたまカド出現時に内部に取り込まれた飛行機に乗っており、カドに内部で異方存在「ヤハクィザシュニナ」と出会う。それをきっかけに人類との間の交渉役となる。ヤハクィザシュニナ に敵意はなく、人類を進歩させるためやったきたことを、真道を介し人類との認識の齟齬をなるべくなくすように工夫しながら交渉をすすめる。オーバーテクノロジーを人類にもたらし、それが原因で混乱する世界情勢を政府と真道とともに正しく使われるよう「正解」へと導いていく。

自分をクビにしてくれという主人公真道

政府代表の交渉役として辞令が下る真道だが、一瞬だけ考え込み、それでは自分が動きづらく、スムーズにことが運ばないと結論づける。自分は異方存在側のネゴシエーターとしてつくほうが今後の流れがスムーズにいくと考え、そのためには政府に所属できないので、上司に「僕をクビにしてくれませんか」とユーモアある提案を下す。上司を一瞬とまどうが、それが現状の最適解と理解し、「わかった、退職金は用意するよ」とこれまたユーモアある返事を返す。単純に考えれば、辞令がおりて「はい、わかりました」といって話が進むものだけれども、官僚組織の構造までしっかりと考証し、出来上がったであろうこのなにげないシーンにとても関心しました。

無限のリソース「ワム」。無限なのに独占されちゃう

異方存在からのギフトして無限の電力が提供できる「ワム」が日本へプレゼントされる。お手軽にいくらでも電力を提供できる「ワム」はこれまでの世界経済のバランスを崩壊させる危険なもので、日本所有から国連が保有すべきだと結論づけられる。国連が保有するとその扱いは世界に平等に行き渡ることはなくなる。そもそも無限のリソースなので独占保有する意味がないはず。全人類へと共有できるはずのワムが、結局格差を生んでしまうという社会構造を再現したシーンはかなり面白い。

ワムについてヤハクィザシュニナと政府の決断

無限のリソースなので全人類に行き渡らせることは可能。しかし国連が保有してしまっては意味がない。そこで、ヤハクィザシュニナから新たな技術の伝達が行われる。じつは「ワム」は構造さえわかっていれば、ただの紙からもつくることができる。現状日本が保有しているワムは国連に引き渡すと同時に、全世界にワムの作り方の動画を放送する。これによって、全人類の手元にワムが行き渡ることになり、人類は無限のリソースを手に入れる。国連が独占してしまう現実にありえる問題を、じつはだれでもワムをつくれるという展開で、解決を策を提示したシーンは見応えがあった。

ワムがあればなにができるか想像するが楽しい

作品上では、ワムが普及することでどういう変化が社会に訪れたかは明確に描かれていない。そこを想像するのはかなり楽しい。たとえば、基本的に燃料はすべて電気に置き換えることができるので、石油がいらなくなり、おそらく全国のガソリンスタンドが廃業し、化石燃料に価値がなくなる。車はすべて電気自動車に置き換わる。おそらく一部の愛好家がガソリンでうごく車を保有する世界になる。他には電力が問題で実現しえなかった兵器が運用可能となる。ペースメーカーの定期的な電池交換のための手術が必要なくなる。あらゆる電子機器の充電が不要になる。火力発電、風力発電、原子力発電所が不要になる。等々ちょっと考えただけでも社会が大きくかわり、何が起きるのかワクワクさせる内容になっている。

カドの大きさを実感できる描写がすごい

報道のため立方体に近づくヘリの中で、「おい、近すぎるんじゃないか」と搭乗している報道マンが操縦士に言うシーンがある。実際は適切な距離をとっており、操縦士が「デカすぎるんですよ」と返す。ただセリフで「でかいなー」と言わせるのではなく、実際に一辺が2kmの立方体があり、そこに近づいたときに大きすぎて距離感が狂う感覚になるという描写から、カドの大きさを感じ取れてとても好きな描写。

カドが大きすぎて困っちゃう、移動はなるべく接地面積少なめに転がってほしい

羽田空港の滑走路に2立法キロメートルの物体が鎮座していると、空港の運用もままならないので、カドの移動計画が立てられる。浮遊して移動することができないカドはサイコロのように転がりながら、移動するしかない。移動の際に物体は透けて移動できるのでほぼ被害はでないが、念の為なるべく接地面積を減らしたい真道は、カドの転がし方を工夫して一辺だけ接地するように転がすアイディアを提案する。いよいよ移動の日には移動予定ルートの地域には避難勧告が出される。一度転がるたびに現場と司令室とで現状の確認と情報連携を行い、朝から夕方にかけて慎重にカドを移動させ目的地に到着させる。移動のシーンでは遠くからゆっくりと移動するカドを見守る市民の視点からも、カドの大きさがわかり、その画から非日常を感じることができるシーンになっている。物語上簡単にしようとすると、ふわ~っとカドを浮かせて移動させてしまえば楽だが、それが敢えてできない設定にして、なるべく工夫をして、移動を完遂するこのシーンもこだわりを感じるお気に入りの一つ。これだけ大きな物体の移動をするなら、けっこう気にすることも多いよなと思うので、その苦労をしっかりと描写してるところに面白さを感じた。

たくさんのこだわりシーンが盛りだくさん

このように、宇宙の外からすごい技術をくれる存在が日本にくる。という話のなかで、SF考証がしっかりとされていて、こまかいシーンでこだわりが見えてとても楽しめる作品になっている。9話からは作風が大きく変わるのですが、とりあえず8話まではそれらを楽しむことができるので、まだ未視聴の方がいれば、とりあえず8話まではおすすめの作品です。

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