おっさんとピアノ『死闘!きらきら星✨』編
※前回までのあらすじ(筋トレのようにピアノを始めよう)
思い立って5月に始めた電子ピアノ。夜、家にいて泥酔していない(まだビールとワインを2〜3杯しか飲んでいない)時は、ヘッドフォンを着けて1日15分くらいずつ弾いている。約3ヶ月たった今も続いているので、習慣化しつつあるようだ。人格とは習慣の積み重ねに他ならないので、俺はピアノ属性を手に入れたと言っても過言ではない(かもしれない)。
ピアノ教室にも通って、シニア向け教本『おとなのためのテクニック・マスター』に沿ってレッスンを続けている。初心者向けなので最初は「ド・ド・ド、ド・レ・ミ」みたいな単音から始めて、徐々に両手で音を出す。水泳で言うとプールに顔をつけて“水に慣れる”みたいな、“音符と鍵盤に慣れる”ステージだ。この教本がよくできていて、1項目進むごとにすこーしずつ難度が上がる設計になっており、初見では全滅した相手に経験値を溜めて勝利するロールプレイングゲームのような感覚でピアノの旅を進むことができる。おっさんになっても「昨日できなかったことが今日できるようになった!」感覚を味わえるのは、喜び以外の何ものでもないわー
そんなある日、先生から“そろそろ曲も弾いてみましょうか。次のレッスンまで2週間空くので、これを練習しておいてください“。と渡された譜面のタイトルは『きらきら星』。これはアレか、小学生低学年くらいの子供が初めての発表会で弾く曲だな。右手を見ると「ド・ド・ソ・ソ・ラ・ラ・ソ〜」とおなじみのメロディが書いてあり、これなら俺にもできそうだわいと安心したのもつかの間、左手を見ると「ドー・ミ・ド・ファ・レ・ミ・ド」と記されている。ん?なんだこりゃ。今までのレッスンで左手の譜面といえば主旋律のユニゾンや「ド・ミ・ソ〜」「ド・ソ・ミ・ソ〜」みたいなコードをなぞったアルペジオだったのに、いきなり右手と全然違う動きが要求されている!しかも♭や♯が振られて、今まで使ったことがない黒鍵も駆使されているではないか!初めて曲を弾く者向けとは思えない左手の独立感、これ編曲したの誰?バッハか?
とりあえず鍵盤に向き合うも、右手は楽勝ながら左手が全滅で、弾ける気がしない。鱗滝さんに「この岩を斬れたら“最終選別”に行くのを許可する」と命じられた炭治郎のような気分だ。とはいえまったくできませんでしたと降参するのも癪なので、左手パートだけ超ゆっくり音符を辿って、2小節できたら右手と合わせてみる。と、最初は不可解だった左手の音符と右手の旋律が絡み合って、なんか意外なハーモニーが現出してくる。これはただ無邪気にキラキラしているわけではなく、人生の苦味や侘び寂びを通過した大人が弾いても可笑しくないバージョンの「きらきら星」かもしれない。まだまだうまくは弾けないけど、ちょっと現状を記録しておこうかな。やっぱピアノ、いいかもしれない
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