証券業の分別管理
載っていること
Ⅰ,分別管理の定義
Ⅱ,保管方法
Ⅲ,会計処理
Ⅳ,なぜ顧客分別金信託しなければいけないのか?
Ⅴ,顧客分別金信託で利用できる信託の種類
現時点の疑問点(誰か教えて)
参考文献
お詫び
Ⅰ,分別管理の定義
分別管理とは、金融取引業者(話したいのは証券会社なので以下証券会社と言い切ります)が顧客から預託を受けた金銭・有価証券について証券会社の自己資産とは分別して管理することです。
もし証券会社が倒産した場合に顧客の資産が返還されないことがあったら大問題だからです(銀行は顧客からの資金を元に貸出等を行うため顧客の資金を分別管理する必要はありません。なので銀行が倒産したら…ゴニョゴニョ)。
Ⅱ,保管方法
①金銭等:顧客分別金信託として金銭or有価証券を信託銀行に信託する義務がある。
②有価証券:証券会社の自己ポジション分と区分して管理する必要がある。主に振替法に基づく振替口座簿において顧客分と自己分を分けて管理している。
そのため、実務ではほふり(証券保管振替機構)に残高確認を行なって監査を行なっていると思う。
Ⅲ,会計処理
①金銭の信託(意味は↓)
(借)顧客分別金信託 (貸)現金預金
②有価証券の信託(意味は↓)
特段処理は不要
ただし、帳簿上、「トレーディング商品」「投資有価証券」勘定等で所在を明らかにする必要がある。
また、注記として顧客分別金信託として信託した有価証券の時価額を記載する必要がある。
Ⅳ,なぜ顧客分別金信託しなければいけないのか?
金銭の所有は占有と一致すると考えられている(※1)ため、通常の保管方法では破産法制上の取戻権(※2)の対象にならなく、顧客に優先的に返戻されない(債権者として返還請求権はもちろんある)。
そこで、投資者保護の観点から証券会社が破綻した際に顧客に返還すべき金額を全額円滑に返していくために現在の日本の法制度の中で一番安全と言われている信託契約を利用する。
※1 最判昭和29年11月5日刑集8巻11号1675頁、
最判昭和39年1月24日裁判集民事71号331頁
によると、金銭の所有権は常に金銭の占有者に帰属するとされる。
※2 ある財産が破産した企業に取り込まれている場合に、第三者が、それは破産者の財産ではなく自分の財産であり、返還又は引渡しを請求できる権利。
Ⅴ,顧客分別金信託で利用できる信託の種類
①金銭の信託
信託設定時に金銭で差し入れる信託。次のものに限って運用できる。
1.保有できる有価証券
→国債、地方債、担保付社債…等
2.預金できる金融機関
→銀行、信用金庫…等
ただし、元本補填の契約をした金銭信託とする場合は、信託契約により自由に有価証券を運用対象とできる。
-具体的な信託の種類-
a,特定金銭信託
委託者が運用方法、銘柄を特定する信託。
信託銀行に元本、利益の保証義務はなく、信託期間が終了すると現金償還する。
b,合同運用指定金銭信託
複数の金銭信託のうち、運用方法(約款の範囲内である程度指定することができる)が同じ金銭信託を合同して運用する。
もし元本に損失が生じた場合、受託者は元本補填の必要がある。
②有価証券信託
信託設定時に有価証券で差し入れる信託。運用できない。
信託できる有価証券及び時価に下記の掛け目を乗じた額を評価額とする。
a,上場株:70%
b,国債:95%
c,地方債:85%
d,外国or外国法人の発行する上場円貨債:85%
e,投資信託の受益証券、投資証券
公社債投資信託の受益証券:85%
それ以外:70%
#投資信託 、受益証券とは
投資信託:資金を集め、運用をプロに任せる投資商品の一つ。投信、投資ファンドとも。分散投資できるためリスクを抑えることができる。
受益証券:信託財産の管理、運用などの成果を享受する権利「信託受益権」を表示する有価証券。
以上、とりあえず分別管理で必要な知識をまとめた。答えがあれば是非教えてください。
現時点の疑問点
①合同運用指定金銭信託について、金商法に預金と同様の性格を持つなら帳簿価額でよい、と書いてあるけど預金と同様の性格とは……?
②信託銀行、つまりは受託者側での会計処理はどうなっているのか?簿外?
参考文献
・日本証券業協会 平成23年2月 顧客資産の分別管理Q&A(改訂第3版)
・金融取引における預かり資産を巡る法律問題研究会 顧客保護の観点からの預かり資産を巡る法制度のあり方
・日本証券業協会 自主規制関連用語集 消費寄託
・大和証券 金融・証券用語解説 特金
・一般社団法人全国銀行協会 金銭信託
・新日本有限責任監査法人 業種別会計シリーズ 証券業(Amazon購入ページ)
↑これにはとてもとてもとてもとてもお世話になってます。ありがとうございます。
お詫び
今回、わかりやすさを重視するために文中に参考文献を参考に書いたところも特に注釈等記載していませんので、どこまでが参考文献の引用で、どこからが私見かわかりにくいかもしれません。
これは各ホームページによって定義がまちまちだったり、微妙にわかりにくかったりするので少しかいつまんだりしたことも理由の一つです。
定義等、不安な方は参考文献を読んで実際の定義を確認してください。
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