ポストコロナの勝者と敗者 - デジタル化によって広がる格差
会社を5年前に立ち上げてから今まで、産業のデジタル化の必然と緊急性についてイベントやミーティング等で散々話しをしてきたけど、今回はその時流の変化を理解して行動に移した会社と、日和見主義的に決断をしてこなかった会社との間で広がった情報格差、そしてポストコロナによって決定的になる今後について。
(今までの投稿でIIoTや現場におけるデータの質など、基本的なところは話したので、今回はその辺はもう読了いただけているという前提で話します。)
5年前から今まで一貫して、お客さんには3通りあるなと。
1) 時代の変化を対岸の火事のように感じ、情報収集はやるけど、まったくなにも手を打たない。
2) とりあえずなんかやらないと不安だから、少ない予算で、”研究開発”という名目で、PoC(実証実験)を繰り返すが、その先がなく単なる”実験”で終わっている
3) 時代の変化の速さを機敏に感じ取り、危機感をもって予算と人をアサインし、PoCをすぐに済ませて現場に導入し、走りながら適応方法など調整する
そして日本の場合、自分が今までお話させて頂いた会社数から上記1), 2), 3), に当てはまる会社の数の比率を考えると、
70 : 25 : 5
という残念な結果になっている。
シリコンバレーにいるとこれがより鮮明にわかる瞬間があって、それは何かというと、日本からよく”情報収集”というノリで、単に話を聞きに来る団体や会社が通年通して山程ある。
そしてそういう人たちは、情報をとるだけとって、何のGiveもなく去っていく。
しかしそのしっぺ返しとして、苦境に立たされている日本企業が今年に入って増加している。
それは 1), 2) に該当する会社が、このコロナによって今までのやり方でオペレーションを回せなくなってきてしまっている。また今後大幅にやり方を”変えざる得ない” 状況になってしまった。
そういう会社はもともと贔屓目に見ても、これから緩やかに終わっていく会社だったのだが、コロナの到来で残念ながら即終了という流れになった。
一方 3) の企業は、コロナの到来がさらなる差別化のチャンスとなり、現在一層のシェア拡大を狙っている。3) の企業は、当時IIoTなどを活用した、デジタル化重要性を理解し、短期的にROIが赤でも企業戦略として大きく予算をつけ、プロジェクトを前に進めた。
当時は保守的な反対勢力が社内にいたが、強力なリーダーシップのもと推し進めていった。こういうときにリーダーの資質が問われるな、と改めて勉強になったものである。
そういう企業とはがっつりやるし、あまり表に出てこないシリコンバレーの最新の技術や状況などもどんどんインプットしていく。だから、彼らは基本情報収集なんてする必要がない。そんなことに無駄な時間と費用を費やす必要がない。
冒頭に "今までのやり方をデジタル化してUpdate" と書いたが、産業のデジタル化には2つある。(いまさらだが...)
1) 一般業務(IT)のデジタル化
2) 現場業務(OT)のデジタル化
1) はZoomとか、Docusignとかに代表されるような、働き方のデジタル化であるが、我々が話しているIIoTとは 2)の産業のデジタル化の核となる手段である。
IIoTがもたらした産業のデジタル化の可能性と重要性に関しては、以前の投稿で述べたのでここでは割愛するが、これからのWith コロナ、そして Post コロナの時代、一般業務のデジタル化と同等かそれ以上に、現場のデジタル化は急務である。
なぜなら現在そういう現場こそ高齢化が進んでおり、コロナのハイリスクカテゴリーの人たちが多く、また海外からの労働者に作業を依存している。そして作業現場は非常に音も大きくお互いの声が聞こえないため、様々なすり合わせやトレーニングを行う際、否が応でも密接に会話をしなくてはならないケースが多い。(それに加えて現場によっては換気の悪いところも多々)
万が一もし今回のコロナで海外からの労働力に頼れなくなってしまった場合、より一層のデジタル化が必要になることは論じるまでもない。
デジタル化出来ていないところは旧来のやり方でやらざるを得ないから、結果コロナが蔓延してしまい、重篤化する罹患者が増える。そしてさらなる問題は、そういう高齢者の方の貴重な経験やノウハウが、コロナによって瞬時に消えてしまう可能性を拭い去れない。再雇用とか、そんな悠長なことを言っている場合ではない。そういう人たちがいなくなってしまう危険性が、大幅に増えてしまったのだ。
すでにデジタル化を推進しているところは、現場の経験やノウハウをデジタル化し始めており、現場の方はそれらデジタル化されたものをベースに作業に従事でき、また高齢者や基礎疾患のあるハイリスクカテゴリーの人は、安全な場所からデジタル化したノウハウをモニターしたり、改善を加えたりしていくことが出来る。
すでに良い循環が生まれている。
結果、1), 2) の敗者は、現場の人や家族を生命のリスクに晒すだけでなく、企業の生命線として不可欠な現場の経験やノウハウ、ひいては生産の効率化を捨てている。
3) の勝者は、そういう敗者を尻目に、今後の回復とシェア拡大に向けて、虎視眈々と準備をしている。具体的な数字をあげると大阪のある会社は、OTのデジタル化によって誰もがそれら情報にアクセス出来る環境を整え、1年間で生産数が1.5倍近く、そして不要な作業を5000時間以上削減した。
これはここで終わりではなくどんどん広がっており、毎年昨年対比で効率が上がっている。
これが情報による企業格差となって、今後巻き返すことのできない差になる。もともとそういう時代に突入していたところ、今回のコロナがその現実を突きつけただけに過ぎない。
そしてこういう感染症はポストコロナ後も起こりうる問題として、デフォルトで想定すべきだ。
An Idea means nothing. No excuse, just execute.