ひと月の3分の1は出張している私が、出張先で大切にしていること。
一か月の内、10日は東京を離れている。主に支社のある都市への出張だ。
◆首都圏以外の都市に支社を置く理由
事業承継の支援を必要としている経営者は、東京よりも地方の方が多い。だからここ数年、私の会社では首都圏以外の地方都市に支社を増やしてきた。大阪、名古屋、福岡、静岡、京都、沖縄……現在6つの支社がある。
支社を設立するのは、その地域において信頼される存在になる、という目的がある。
何かあった時にすぐに駆け付けられる地元に拠点を持っていることは、お客様にとって安心感につながると考えている。東京にいてオンラインや出張対応でコンサルティングをすることも可能ではあるが、物理的な距離は心理的な距離にも影響する。
実際支社のある都市へ赴くと、その土地ならではの空気感に触れることになる。地域に根付く文化や歴史、そこから生まれてきた特性が、どこの地域にも存在している。
その土地に生活して初めて理解できるものや、得られる感覚が必ずあり、それは同じ場所で根を張って生きてきた企業を理解する上で必要なものだと考えている。
故に私の会社のコンサルタントは、できるだけ同地域の中で採用したり、東京にいてもその土地の出身者を優先的に配属している。今後も政令指定都市を網羅するぐらいには、支社を展開していきたいと構想している。
◆地方に行ったら、これをする! 大切にしていること。
そんなわけで現在6つある支社を中心に、私はひと月の3分の1ほどは地方へ出向いているのだが、その中で大切にしていることがある。
何かと言うと、ローカルな部分に深く接するということだ。
先ほども書いたように、地方に行けばその土地ならではのものが必ずある。ただお客様と打ち合わせだけをして帰ってくるのではなく、時間の許す限りその土地の特性を理解するよう努めている。
観光客のように表面を一通りさらって帰るのではなく、その土地に暮らしている人たちが受け止めている空気を共感したい。そのため、支社を置いている場所にとどまるのではなく、そこからローカル線で一駅、バスで一駅、レンタカーで隣町へ……という具合に、足を延ばすようにしている。
支社を置いている街は、比較的その地域でもにぎわっている街であることが多く、自分と同じように出張で来ている人間も少なくはない。また軒を連ねる飲食店にも、チェーン店が目立つ。そういった街には地域の特色が出辛い。私が求めているローカルな空気感は、そのような都市のハブとなるような街から、一歩奥に入らないと得ることができない。
大阪の梅田にしか行っていないのに、大阪を知っているような話し方をしたら、きっと大阪の中小企業経営者に叱られる。環状線にのっていける範囲から飛び出してみると、見える景色は大きく変わる。
例えば難波から、南海線に乗ると、堺市に出る。たった数分で、一気に建物の高さが軒並み低くなる。
駅からでて、商店街を歩くと、個人商店が多い。鋳物だけを取り扱っている店や、仏具だけを取り扱っている店など、専門店が目立つ。
平日の昼間でも活気が感じられ、日常使いされていることが伝わってくる。
また自転車のユーザーが非常に多いことにも驚かされる。駅の自転車置き場が充実しているのはこのためか、と考えさせられたりもする。
こうした一歩踏み出したところにある街が、大阪で暮らす人の生活、実体経済を表している。もちろん支社のある街にも見どころは多いのだが、本当にその地域に根差して生きてきた人たちの生活圏で、リアルに使いこまれた街からの方が得られる情報が多いし、質もディープだ。やはり足で稼いだ情報というのは、肌で感じるものも含め、他では得られないものだと思う。
◆自ら赴くことに意義がある。
月に10日、ひと月の3分の1を東京から離れているとはいえ、どの土地に関しても当然のことながら、住んでいる人ほどに理解するということは難しい。だがしかし自ら赴き、その土地に身を埋めてみるということには大きな意味があると感じている。
経営者の方々とお会いして、実際に顔を見ることの大切さ、というのもある。
コロナ禍には叶わなかった対面での打ち合わせ。
できない時期があったからこそ、良さを強く感じるところもある。実際に出向いてお会いすれば、会話が弾むし、オンラインでは起こりえない展開や広がりが生まれることも少なくない。
一例を挙げれば、クライアントである経営者が、地元の友人経営者を紹介してくださり、交友が広がるということもある。それが仕事につながることもあるし、趣味の世界でつながることもある。
少し前の話にはなるが、沖縄で琉球アスティ―ダの早川さんとお会いし、対談をさせていただいた(https://mmac.cc/press/press-7790/)。
その後の会食にて、株式会社上間菓子店社の上間様、会計士の武田雄治様、弁護士の久保以明様をご紹介いただいた。この出会いを大切に、何か新たな取り組みでご一緒させていただけたらという話も出ている。
もしあの時、実際沖縄までいかずZOOMを使っていたら、その後の会食などにも発展せず、新たな出会いには繋がらなかったことを考えると、足を運んで人と対面し話をするということには、目の前にあるもの以上の意義を感じる。
これは一例にすぎず、東京にいてオンラインでのみご相談に乗っていたり、地方へ行っても打ち合わせだけでとんぼ返りしていたら知り合うことのできなかった人が、この1年を振り返っただけでもたくさんいる。
地域への理解を深めたいという想いを行動にすることで、安心感や信頼感を抱いてくださった経営者の方も多く、ご紹介にも繋がったと自負している。
出会いが増え、知見が増え、会話が盛り上がる……そうした繋がりや広がりが私はとても好きで、単純に楽しくもある。
今後も積極的に地方へ足を延ばしたい。そしてまた興味をもって地域を深堀りする時間を作っていきたい。東京での時間も大切にしたいが、地方で過ごす時間の割合はもう少し伸びていきそうだ。