WE ARE LONELY, BUT NOT ALONEは組織作りに関わるなら必読
自分が読んで面白かった本を、勝手に必読にしていくシリーズ。本書の主題はコミュニティ運営についてなのだが、企業組織も広義でいうとコミュニティに該当する。ぼくはスタートアップ3社くらい経験しているのだが、そこでの経験を引き当てて「こういう事あるあるだわー」と唸っていた。なので、ぼくが唸ったポイントを熱弁していく。
心理的安全性なにそれ?おいしいの?
と内心思っているスタートアップの経営者は多いと思う。Googleがプロジェクトアリストテレスで実証した様に、心理的安全性が生産性向上に繋がることは科学的に証明されてきている。ただ、データや結果で示されても、腑に落ちない事はある。自分が成果を出した時は心理的安全性などなかったぞと、声を大にして言いたい方は多いのでは。
自分がチャレンジした時は心理的安全性などなかったし、コンフォートゾーンから出たからこそ、今があるのだ。退路を断って、狂った様な思い入れを持ち、脇目も振らず価値提供を追求したからこそ、新しいものを生み出せたのだ。心理的安全性って本当に必要なの?
身の安全・心の安心があるからこそ挑戦できる
僕は講談社という安全・安心な場を捨てて、起業したように多くの人は思っている。しかし、僕の中では違った。結婚して家族ができたことで、社会の中での居場所を生み出すことができた。妻との関係は、僕に非常に大きな自己肯定感をくれた。それによって、僕の心理的安心と安全が確保されたから、僕は挑戦してみようという気持ちになった
WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE. (Kindleの位置No.1022-1028).
この考察には膝を打った。結果がどうなっても戻れる場所がある、挑戦が失敗しても他に食べていく手段がある。だからこそ果敢にチャレンジができるのだ。
ポイントは、人によって安全・安心を感じる基準が異なること。スタートアップの起業家・経営者は事業に失敗して裸一貫になっても、自分でなんとか食っていけると思える人種だと思う。反対に、社員として働いている人が安全・安心を感じるためには、より多くのモノ・コトが必要だ。
経営者から従業員を眺めていると「なぜここまで用意してやってるのに挑戦せんのか」と、感じる事も多いはず。ただ「なぜ」を問うても誰も答えは持ち合わせていない。そこには「何が揃えば安全・安心を感じるか」という心の違いがあるだけ。自分が何によって安全・安心を感じるか、実は分かっていない人が多いので、答えを知るには実験・観察・考察をし続けるしかない。
熱狂は身近な人を焼き殺す
このような本や講演で、僕は熱狂的に自分の夢を語る。そして、協力者を募る。僕の熱狂に伝染してくれた人は、それで手伝いに来てくれる。しかし、僕のそばにいればいるほど、その熱狂は長続きしない。自分が、僕ほどの熱狂を持って関われていないことに、無力感を覚えてしまうのだ。かといって、僕が自分の熱狂を押し殺すのは、本末転倒だ。
熱狂とは、太陽みたいなもの。遠くまでその熱を伝えることが 「できる熱狂は、身近な人を焼き殺してしまう。それも仕方がないことだと割り切っていた。
WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE. (Kindleの位置No.990-997).
ここが本書で一番唸った部分。焼き殺された事もあれば、逆に自分が周りを焼き殺した事もある。周りを巻き込もうと自分が熱を発すれば発するほど、空回りして周りに無力感を与えていたのか。この一節を読んだ時に「言語化してくれて佐渡島さんありがとう」という感謝と、「今まで自分はなんと愚かな振る舞いをしていたのか」という絶望が、両方いっぺんに湧いて何とも言えない気持ちになった。
コミュニティには熱を「保温」する仕掛けが大事
当事者の熱狂は炎だ。距離が近すぎると焼死or火傷をしてしまうが、その熱を適切に扱えばみんなを暖めることができる。建物が炎の熱を暖炉・断熱材・空調で住空間にうまく伝えているように、コミュニティにも暖炉・断熱材・空調に相当する仕掛けが必要だ。本書は、佐渡島さんが試行錯誤の末に発見した、コミュニティを上手に保温する仕掛けを披露してくれている。
その仕掛けの一端が「オンラインで先に仲良くする」とか「古参と新参が両方安全・安心を感じるには」とか。もう詳しくはWE ARE LONELY,BUT NOT ALONE.を読んでください。読みやすくてそんなに文章量多くないのに、唸る部分が多くて、付箋をいっぱい貼った。一読の価値ありです。
ちなみに、ぼくがたまに顔を出してたコミュニティのコンセプトが「若手社会人の情熱の魔法瓶」なことを思い出した。今考えると、コミュニティの本質を突いた素晴らしい言葉だ。