エヴァ直撃世代のおっさんが若いオタクに聴いて欲しい90年代アニソン⑦
「特撮ヒーローよりも年齢が上になったら大人の始まり」とは僕の言葉ですが、
「エヴァンゲリオンの加持リョウジより年上になったらおっさんの始まり」というのは、やはり僕の言葉です。
みなさんのライフステージは今どこら辺でしょうか?
え、仕事と恋愛と趣味の波乗りとBBQが充実していて、アニメや特撮のたとえはわからない?
そうですか……。
さて、この連載は、90年からオタクをやっている僕が昔をなつかしむ後ろ向きなシリーズです。
・90年代にはまだ物心がついていなかったあなた
・90年代には物心がついていなかったけれど、17世紀ごろの記憶はばっちりのあなた
・90年代は織田裕二の「Love Somebody」以外いっさい聞かないくらいリズムアンドポリっていたあなた
そんなあなたたちも、良曲を紹介してるので、ネットの力を駆使して聞いてください。
けど、動画サイトに違法アップロードされてる動画は絶対に再生しないでください。
熱湯風呂の縁に足と手をかけた体勢でダチョウ倶楽部が「絶対に押すなよ!」って言ってるときも、絶対に押さないでください。
絶対に再生しないでください! そして上島竜兵さんを絶対に熱湯風呂へと押さないでください!
7、菊田裕樹「Quake」1998年
1998年にスクウェアが発売したPS用アクションゲーム『双界儀』。
これはなかなか難しい作品です。
なにが難しいかというと、良い点がものすごく良く、悪い点がほんとうにひどいのです。
まず良い点。
世紀末の日本に謎の巨大石柱が出現し、あわせて妖怪が出没するという、90年代後半的世界観を日本文化の素材で料理した基本設定。
しかも中国の不老長寿の思想や、陰陽五行思想といった、大陸とのつながりの歴史もふくむ。
陰陽五行思想と操作キャラの特色を組み合わせた設定。
中国系の絵を得意とする皇なつきによる至高のキャラクターデザイン。
主要なゲームの舞台が日本各地の霊的なパワーに溢れてそうな土地ばかり。
「白線流し」とかの出演でブイブイいっていたようないっていなかったような気がする京野ことみの声優出演。
といった感じで、ガワだけ見れば、伝奇アクションものとしておおいに期待できそうな要素に満ちているのですが。
にもかかわらず……。
初代プレステであることを差し引いてもガッタガタなポリゴン。
開発中に「やっぱこれダメじゃね?」って言う人がいなかったのが不思議なくらいひどい操作性。
と、いったアクションゲームとして肝心な点が壊滅的な出来栄え。
売れたのか売れてないのかよく分かりませんが、店頭で少しでも動画を見てしまったら購入を控える人が出てもおかしくない出来ではありました。
ですがやはり、ゲーム性以外はおおむね素晴らしいので、がんばって全クリ(全面クリアのことです)しました。
で、双界儀世界に魅了された僕は、もっとも印象的だった「Quake」が日常的に聞きたくて聞きたくて仕方なくなってきました。
なので、池袋や秋葉原などのオタもの専門店のCDコーナーを巡ったのですが……。
当時の時点で、まるで売ってませんでしたね。
お金のない高校生だったので、自転車で都内を走り回ったんですけど。
で、ようやくのことでどこかの片隅で1枚だけ新品をみつけることができました。
現在の中古価格はなかなかイカれた感じの高騰をみせていますが、そもそもたいした枚数出荷しなかったんでしょうね、きっと。
で、曲なんですが。
まず、これ、実際のゲームプレイが始まって最初のエリアのBGMなんですよね。
というわけで、このゲームの世界観を印象付けるのにもっとも重要な役割をはたしている楽曲なわけです。
このエリア1の状況設定がなかなか素晴らしいです。
舞台は能登半島。奥能登と呼ばれる先端よりの「珠洲」という地域。ここにある須須神社(まんまかどうかはさておき、実在します)の境内からゲームプレイがスタートします。
時間帯はちょうど夕方。逢魔が時も間近といったところです。
寄り神という敵をボコりながら目指すは海岸道路です。
夕暮れの能登半島で神社の前から海岸にむけて流れる音楽なんて、もうそれだけで最高じゃないでしょうか。
曲頭が鳴り物(鈴)から始まるのも大変良いです。日本の神域で鳴る音楽にはじつにふさわしい。
鈴でありながら、雅楽的な編成にはいかず、普通のロック的なドラムセットが絡みます。
陰陽五行説を背景としているため、大陸との繋がりが重要であり、コテコテの和風にし過ぎないのが編曲的要諦なのでしょう。適切な選択です。
ボーカルは一聴どころか何度聞いてもわかりません。タイ語だそうです。
おそらく梶浦由記やkokiaならオリジナル言語で作詞したところでしょう。
インド・ヨーロッパ語族の言語なんか採用したらいっきにイメージが現実のヨーロッパないし異世界ファンタジーへと突入してしまうことを考えれば、タイ語の採用は適切だったといっていいでしょう。音の響きも夕暮れにマッチしています。
誰が作詞したのか知りませんが、意味だけでなく聴き心地をも勘案した優れた詞だといっていいでしょう、意味はわかりませんけど。
また、おそらく普通の歌モノよりも、ボーカルリバーブを深くかけているのではないかと思います。
これによって歌い手の不在感が出ている。というか、空間そのものが唄っているような神秘性の獲得に成功しています。まさに空間系エフェクターといったところです。
BLUE SEEDとか京極堂シリーズとか好きな人は聞いてみてもいいんじゃないでしょうか。あと神社オタクとか。
んじゃ、また。
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