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なぜ日本にSHOW ME THE MONEYが必要なのか?(番組企画書0.5 - コンセプト編)
目次
1.韓国と日本の差が開く一方なのはなぜか?
2.SHOW ME THE MONEYとは何か?
3.RAPSTARの1強では良くない理由
4.番組の骨組み
5.日本の音楽業界の課題・解決方法の仮説
1.韓国と日本の差が開く一方なのはなぜか?
韓国は世界で最初にCDが売れない国となり、国策として音楽業界へ投資し、デジタルマーケティングで海外のシェアを獲りにいきました。その結果、日本もK-POPに憧れる若者の割合が多く占めています。
BTSは2度目のグラミーノミネートをしましたが、革新的なのはメンバー自身が自社の株を持っているというインディペンデントな体制です。その影響は日本でも花咲きました。
SKY-HI氏が1億円の自己投資をし、日本テレビと組んで放送された「THE FIRST」から生まれたBE:FIRSTのYouTubeチャンネルは、2021年7月の登録ながら総再生回数は既に3億を超えています。SKY-HI氏は日本の音楽業界で一種の革命を成し遂げました。
韓国と日本の差は開く一方でしたが、日本でも動き出す人が(J-HIPHOPの歴史を創り始めたとも言えるavexから)やっと現れました。今も革命の歴史は続いています。
2.SHOW ME THE MONEYとは何か?
世界ではHIPHOPとR&Bが7割のシェアを占めていると言われています。そして、今の韓国HIPHOPの盛り上がりを創ったコンテンツがあります。それは、今年で11回目の開催となるSHOW ME THE MONEY(以下SMTM)です。
SMTMとは韓国のケーブルテレビ・Mnetで年1回だけ放送されるラップサバイバルオーディション番組です。放送時期の約3ヶ月は韓国がお祭り状態となり、番組の後半で初披露される楽曲達は
VS
韓国のトップチャートを占め、その影響力の大きさからK-POPのアーティストもSMTMとズラしてリリースするとまで言われています。
このSMTHは、HIPHOPが盛り上げる
タイ
中国
にもフランチャイズされ、NetflixもSMTMを真似てか正式なフランチャイズか分かりませんが、アメリカを舞台にしたラップサバイバル番組「Rhythm + Flow」
を制作したほどです。
※2024年にSeason 2公開
SHOW ME THE MONEYは女性版もやっていて、今や世界的に認知されている (G)I-DLEのソヨンもこの番組で注目を集めました。
高校生版
3.ラップスタア誕生の1強では良くない理由
日本もフリースタイルダンジョンのカウンターとして楽曲重視のオーディション番組「ラップスタア誕生」が盛り上がりつつあります。しかし、総合演出の方が昭和の「三宅裕司のいかすバンド天国」を参考にするというガラパゴスな日本らしい最悪なケースが起きている事を知る人は少ないです。
ラップスタア誕生は元々、A&Rのための新人発掘企画でした。そのため30代以降のラッパーにとってはほぼチャンスがないのも問題です。
SMTMは、HIPHOP業界の人間関係を上手く描いたバラエティー色も特徴の一つです。
勝ち上がったラッパー達は中盤でプロデューサーと組み、プロデューサー達のチーム対抗戦となっていきます。
勝ち上がったラッパーも美味しいのは当然ですが、プロデューサーの顔も売れます。番組内での制作がきっかけで音楽シーン自体が活性化する側面もあります。
そして後半はLIVEステージです。ここでゲストシンガーやラッパーのフィーチャリングがあります。HIPHOPは抗争の側面もあるため、ここでも様々なドラマを創っていたりします。
これら様々なヒット要素をラップスタア誕生は取り入れられていないというのは致命的だと感じています。
かつMnetのチャンネルでは、HIPHOPに特化したチャンネルがあり、SMTMの放送前後には高校生版SMTMもあり、そちらも人気を集めています。他のサバイバルオーディション番組もあり、一年を通してHIPHOP好きが楽しめるチャンネルとなっていると聞きます。
4.番組の骨組み
SMTMで一貫しているのは
1.エントリー者をホールに集めて、プロデューサーの前でアカペララップ
2.ラッパー自身でトラックを用意し60秒のパフォーマンス
3.通過者がプロデューサーを選び、チーム同士の様々な対抗戦
🔻ディスバトル
🔻ラッパー兼プロデューサーも交えたマイクリレー
4.後半はひたすらLIVEステージでサバイバル。決勝は視聴者のオンライン投票もある生放送となっています。
(SMTMはコロナ禍で、観覧は直近まで勝ち上がったラッパーのみでした)
実際のSMTMの予算感はすさまじいと思いますが、骨組み通りに創るのであればエントリー者を番組側でオファーして、あとはプロデューサーのスタジオとオンライン配信可能なスタジオがあれば番組自体は低予算で創れます。
もしくは予算があればSMTM規模のことが可能である事をイメージさせれば、スポンサーもそれなりに見つけやすいのでは?と考えています。
5.日本の音楽業界の課題・解決方法の仮説
今回の企画は、単純にラップスタア誕生の対抗勢力を創る事がゴールではありません。
高校生ラップ選手権、フリースタイルダンジョンもそうですが、出演時(放送期間中)にスポットライトを浴びるだけではシーンの活性化には繋がりません。裏方とのマッチング&コーディネートが必要です。SMTMでもシリーズ10からは優勝特典として「1年間のビジネスプラン」というのが追加されています。
私自身、音楽レーベルプロダクションでの勤務後、フリーランスとしてアーティストマネジメントをしています。HIPHOP業界の裏方が少ない問題にも危機感を持っています。
日本と韓国にしかない芸能プロダクション文化により、どこかと契約して所属しないと裏方のサポートは受けられないという現状があります。
この弊害は、日本のアーティストのビジネスリテラシーが低い問題とも関係しています。
今はプロモーションツールの民主化により、アーティスト自身が原盤権を持つという選択肢は世界中でスタンダードになっています。プロダクション側も、アーティストの独立など過渡期を迎えています。そこで、エージェントとして様々な自己実現メニューを開放したいと考えているプロダクションも多く存在しています。
私自身、プロダクションの連盟である音楽制作者連盟
や、音楽制作者連盟や、そのOBによって創られたコミュニティと深く関わっています。
一般社団法人Independent Music Coalition Japan(IMCJ)
こういったコネクションから、オーディションエントリー者をプラットフォームへ促し、数少ない日本のHIPHOPの裏方チームをネットワークしてマッチング・コーディネートや、裏方の育成をビジネスにしたいと考えています。
そして業界の先人が切り開いていただいた「デジタル」と「グローバル」の知見も持って、この番組へのエントリー者からグローバルヒットが出せれば最高だと思っています。